Home 9 ビジネスコラム 9 ベトナムの脱炭素動向を解説|再生可能エネルギー投資とビジネスチャンスの実態
ベトナム 脱炭素

ベトナムは2050年カーボンニュートラル達成を宣言し、グリーントランスフォーメーション(GX)戦略を国家の重要課題として推進しています。電力・産業・農業の各セクターで脱炭素化が進む中、再生可能エネルギー投資やカーボンクレジット市場には大きなビジネスチャンスが生まれています。本記事では、ベトナムの脱炭素政策の全体像から具体的な投資機会、企業が取るべき対策まで、最新動向を詳しく解説します。

ベトナムの脱炭素目標と政策の現状

ベトナムは急速な経済成長を遂げながらも、気候変動対策において国際社会へ明確なコミットメントを示しています。2021年のCOP26でカーボンニュートラル宣言を行い、以降、脱炭素に向けた政策体系の整備が加速しています。

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NDCと2050年目標の概要

ベトナムはパリ協定に基づき、国別削減目標(NDC)を提出しており、2030年までに温室効果ガス排出量を無条件で15.8%、国際支援を受けた場合は43.5%削減(2022年改定)することを目標としています。2050年にはカーボンニュートラル(ネットゼロ)達成を正式に宣言しており、これはASEAN諸国の中でも先進的な取り組みとして評価されています。

この長期目標の達成に向けて、エネルギー転換、産業構造の変革、農業分野の排出削減など、全セクターを対象とした包括的な戦略が策定されています。特にグリーントランスフォーメーション(GX)を国家戦略として位置付け、経済成長と脱炭素化の両立を目指している点が特徴です。

主要な政策と関連法制度の動き

ベトナムの脱炭素政策の中核となるのが、第8次国家電源開発計画(PDP8)です。この計画では再生可能エネルギー比率の大幅な引き上げと送電網への積極投資が明示されており、2030年までに再エネ電源比率を約30%まで拡大する方針が示されています。

現在、年間3,000トンCO2以上を排出する事業所にはGHGインベントリの報告義務が課されており、2026年には国内カーボン取引市場(CTX)の開始が予定されています。これらの規制強化により、企業の排出管理体制の整備が急務となっています。

担当省庁と実施体制の現状

ベトナムの脱炭素政策は、天然資源環境省(MONRE)が気候変動対策全般を統括し、商工省(MOIT)がエネルギー政策を担当する体制となっています。国家気候変動委員会が省庁間の調整を行い、首相府の指揮下で政策の一貫性を確保しています。

実施面では、ベトナム投資開発銀行(BIDV)がグリーンファイナンスの供給主体として重要な役割を担っており、国際協力銀行(JBIC)との覚書締結により、脱炭素インフラや再エネ拡大への資金供給体制が強化されています。

地方自治体の取り組みと差異

地方レベルでは、工業集積地を抱える省が積極的な脱炭素施策を展開しています。北部のバクザン省やバクニン省では、製造業の集積を活かした省エネ促進策が実施されており、再エネ導入に向けたインフラ整備も進んでいます。

南部のビンズオン省は外資系企業の工業団地が集中しており、グリーン工業団地の開発や企業向け再エネソリューションの提供で先行しています。一方、農業が主要産業である中部・南部デルタ地域では、AWD(間断灌漑)などの農業由来排出削減プロジェクトが優先的に展開されています。

ベトナムの温室効果ガス排出の現状と主要セクター

ベトナムの経済成長に伴い、温室効果ガス排出量も増加傾向にあります。効果的な脱炭素戦略を立てるためには、排出構造を正確に把握することが不可欠です。

排出量の推移と主要な排出源

ベトナムの年間温室効果ガス排出量は3億トンを超え、世界でも上位20カ国に入る排出規模となっています。過去10年間で排出量は約1.5倍に増加しており、経済成長率を上回るペースで排出が拡大してきました。

セクター別に見ると、エネルギー部門が最大の排出源であり、全体の約65%を占めています。次いで農業が約15%、工業プロセスが約10%、廃棄物が約5%という構成になっています。特に電力需要の急増に伴う火力発電の拡大が、排出増加の主因となっています。

電力部門の特徴と石炭依存の影響

ベトナムの電力供給は石炭火力発電への依存度が高く、発電量全体の約45%を占めています。急速な工業化と都市化により電力需要は年率約8〜10%の高いペースで増加しており、この需要増に対応するため石炭火力の新設が進められてきました。

しかし、脱炭素目標との整合性から、新規石炭火力の建設凍結や既存設備の段階的廃止が政策課題となっています。PDP8では石炭火力への依存低減と、LNG火力への燃料転換、再エネ拡大を組み合わせた電源構成の転換が計画されています。

産業・製造業における排出構造

製造業はベトナムGDPの約25%を占める主要産業であり、セメント、鉄鋼、化学など素材産業からの排出が大きな割合を占めています。外資系製造業の集積地では、サプライチェーン全体での排出削減要求が高まっており、RE100やSBTなど国際イニシアティブへの対応が課題となっています。

バクニン省やビンズオン省などの工業団地では、入居企業に対する省エネ診断や再エネ導入支援のサービスが拡大しています。グローバル企業のスコープ3削減要求に応えるため、サプライヤー企業の脱炭素対応も急務となっています。

輸送・建築・農業の排出状況

輸送部門は排出量全体の約10%を占め、二輪車やトラックの増加に伴い排出が拡大しています。電気自動車の普及政策や公共交通の整備が進められていますが、インフラ整備の遅れから普及はまだ初期段階に留まっています。

農業部門では、稲作からのメタン排出が全農業排出の約30%(約2,130万トン)を占めています。水田の間断灌漑(AWD)技術の導入により、1ヘクタールあたり約55%のメタン削減が実現可能とされており、北部6省でのパイロットプロジェクトが成果を上げています。

ベトナムの再生可能エネルギー導入と電力インフラの課題

ベトナムは再生可能エネルギーの導入を加速させており、特に太陽光発電で急速な拡大が見られます。一方で、系統制約や電力市場の未成熟さが導入の障壁となっています。

太陽光・風力の導入状況とポテンシャル

ベトナムの太陽光発電容量は2020年以降急増し、累計約19GWに達しています。日射条件に恵まれた中南部地域を中心に大規模太陽光発電所が建設され、屋根置き太陽光も製造業を中心に普及が進んでいます。

風力発電は約5GWの導入実績があり、南部沿岸部と洋上風力のポテンシャルが特に高いとされています。PDP8では2030年までに洋上風力6GWの導入が計画されており、国内外の投資家から注目を集めています。バイオマス発電も農業残渣を活用した事業が展開され、JCM設備補助事業として日本企業の参入も進んでいます。

系統接続問題と電力需給の制約

再エネの急速な導入に対し、送電網の整備が追いついていないことが大きな課題です。特に南部の太陽光発電集中地域では、系統制約による出力抑制が発生しており、事業者の投資回収に影響を与えています。

ベトナム電力公社(EVN)は送電線の増強を進めていますが、計画から完工までに時間を要するため、当面は需給バランスの調整が課題となります。北部と南部を結ぶ送電網の強化と、地域間の電力融通能力の向上が優先課題として位置付けられています。

蓄電・分散型電源の展望と導入障壁

変動性再エネの大量導入に対応するため、蓄電システムの導入が検討されています。大規模蓄電池やポンプアップ水力の計画が進められていますが、コスト面での課題から本格導入には時間を要する見込みです。

分散型電源としては、工場や商業施設の屋根置き太陽光とオンサイト蓄電池の組み合わせが有望視されています。自家消費型の再エネシステムは系統制約の影響を受けにくく、電力コスト削減と脱炭素を両立できるため、外資系企業を中心に導入が広がっています。

電力市場改革と価格メカニズムの課題

ベトナムの電力市場は段階的な自由化が進められており、卸売市場の整備が行われています。しかし、小売価格は政府管理下にあり、再エネの経済性を正当に評価する価格メカニズムが十分に機能していません。

FIT(固定価格買取制度)の終了後、入札制度への移行が進められていますが、制度設計の詳細が不透明なことが投資判断の障壁となっています。DPPA(直接電力購入契約)の法制化も進められており、企業が再エネ発電事業者から直接電力を購入する仕組みの整備が期待されています。

企業・投資家が取るべき脱炭素対策と実践事例

ベトナムで事業を展開する企業にとって、脱炭素対策は単なるコンプライアンス対応を超えた戦略的課題です。具体的な対策と成功事例を紹介します。

工場の省エネと電化の具体的対策

製造業における脱炭素の第一歩は、省エネルギー対策の徹底です。空調・照明・動力設備の高効率化により、15〜30%のエネルギー削減が可能とされています。エネルギー管理システム(EMS)の導入により、リアルタイムでの消費監視と最適制御を実現できます。

熱需要の電化も重要な対策です。ボイラーのヒートポンプへの転換や、工程熱の電気加熱への切り替えにより、燃料燃焼からの直接排出を削減できます。ベトナムでは電力の再エネ化が進むことで、電化による脱炭素効果がさらに高まる見通しです。

屋根置き太陽光やPPAの導入事例

工場の屋根を活用した太陽光発電は、ベトナムで最も普及している再エネ導入手法です。自家消費型システムでは、発電した電力を自社で使用することで電力コストを削減しながら、スコープ2排出量の削減を実現できます。

初期投資を抑えたい企業向けには、PPA(電力購入契約)モデルが普及しています。第三者が屋根に太陽光設備を設置・保有し、企業は発電電力を購入する仕組みです。2023年のI-REC発行量は約1,769万MWhと前年の2倍以上に増加しており、再エネ属性証書の調達も容易になっています。

サプライチェーンでのScope管理と削減手法

グローバル企業のサプライヤーとして事業を行う場合、スコープ3排出量の開示と削減要求への対応が求められます。まずは自社の排出量を正確に把握するため、GHGインベントリの整備が必要です。FPTの「VertZéro」などのGHG管理プラットフォームを活用することで、効率的なデータ収集と分析が可能になります。

サプライヤー向けには、省エネ技術の共有や再エネ導入支援などのエンゲージメント活動が有効です。低炭素素材への転換も重要な削減手法であり、環境配慮型素材「LIMEX」などの採用を通じた製品レベルでの排出削減も進んでいます。

グリーンファイナンスと資金調達の活用法

脱炭素投資の資金調達には、グリーンファイナンスの活用が有効です。JBICとBIDVの協調融資スキームでは、再エネや省エネプロジェクトに対する優遇金利での融資が提供されています。国際金融機関のグリーンボンドやサステナビリティ・リンク・ローンも選択肢となります。

JCM(二国間クレジット制度)の設備補助事業を活用すれば、脱炭素設備の導入コストの最大50%の補助を受けることができます。環境省のJCMビジネス参画促進フォーラムでは、案件形成の相談や日越企業のマッチング支援も行われています。

実行ロードマップとKPIによる進捗管理

脱炭素目標の達成には、具体的なロードマップとKPI設定による進捗管理が不可欠です。2025年のGHGインベントリ報告義務化、2026年の国内炭素市場開始を見据え、段階的な削減計画を策定することが重要です。

KPIとしては、排出原単位(売上高あたりCO2排出量)、再エネ電力比率、省エネ投資額などが一般的に使用されます。定期的なレビューと計画の見直しを通じて、目標達成の確度を高めていくことが求められます。取締役会レベルでの監督体制を整備し、経営課題として脱炭素を位置付けることも重要です。

ベトナムのビジネスには展示会出展が効果的

ベトナムでは、展示会への出展が企業のマーケティング戦略において極めて重要です。現地で開催される展示会は、自社の商品・サービスを認知してもらう最適な機会であり、特にB2B企業にとって欠かせない施策の一つとされています。開催数も年々増加しており、幅広い業種で行われる展示会は、効果的な販促チャネルとして注目されています。

展示会はテストマーケティングの場としても活用でき、現地顧客の反応を直接確かめることができます。さらに、単なる商品PRにとどまらず業界関係者とのネットワークづくりにも活用できるため、新規参入企業が現地での認知度を高め人脈を広げる上でも有効です。

このような対面での商談や交流を通じて有望な新規顧客の獲得やパートナー企業の発掘にもつながるため、展示会出展はベトナムにおけるB2Bビジネスで欠かせない施策となっています。

まとめ

本記事では、ベトナムの脱炭素政策の全体像から再生可能エネルギー投資の機会、企業が取るべき具体的な対策まで解説しました。

  • ベトナムは2050年カーボンニュートラルを宣言し、PDP8に基づく再エネ拡大と炭素市場の整備を推進中
  • 2025年からGHGインベントリ報告義務化、2026年から国内炭素取引市場が開始予定
  • 太陽光・風力発電への投資機会が拡大し、I-REC発行量は前年比2倍以上に成長
  • 工場の省エネ・電化、屋根置き太陽光・PPAの導入が具体的な対策として有効
  • JCM設備補助やグリーンファイナンスを活用した資金調達が可能

ベトナムの脱炭素市場は今後も拡大が見込まれ、早期参入による先行者メリットを獲得できる可能性があります。現地の最新動向を把握し、適切なパートナーと連携することが成功の鍵となります。

株式会社ビッグビートは、海外展示会出展のサポートをしています。特に、タイやベトナムに現地法人を有しており、出展企画の立案から展示ブースの設営、コンパニオンをはじめとする運営スタッフの手配や管理に至るまで、日本の高い品質基準を維持したまま、現地からの迅速なサポートを提供することが可能です。

著者:ビッグビート ASEAN推進編集部

ベトナム・タイを中心としたASEAN圏に進出、あるいはこれから進出を計画している事業会社に対し、現地でのBtoBマーケティング領域を総合的に支援する広告会社です。ASEAN圏現地での実務経験や企業支援の実績を基に、現地に根差した信頼性の高い情報発信を行っています。