Home 9 ビジネスコラム 9 ベトナムの会計基準を徹底解説|日本企業が陥りやすいミスとリスク回避策を紹介
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ベトナムに進出する日本企業にとって、現地の会計基準を正しく理解することは事業運営の基本です。ベトナム会計基準(VAS)は国際会計基準をベースとしながらも、統一勘定科目表や税務優先の考え方など独自のルールが存在します。本記事では、VASの基本構造から日本基準との主な相違点、実務で陥りやすいミスとその対策まで、体系的に解説します。これからベトナムでのビジネス展開を検討している方や、すでに現地法人を運営している経理担当者の方に役立つ情報をお届けします。

ベトナムにおける会計基準の概要

ベトナムで事業を行う企業は、現地の会計基準に従って財務諸表を作成する必要があります。ここでは、ベトナム会計基準の法的枠組みと基本的な仕組みについて解説します。

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法的根拠と主な改正の流れ

ベトナムの会計制度は、2015年に制定された会計法(Law on Accounting:第88/2015/QH13号)を最上位として体系化されています。この法律の下に政令や通達が位置づけられ、実務上の詳細なルールを規定しています。

VAS(Vietnam Accounting Standards)は2001年から2005年にかけて財務省が公布した26本の会計基準の総称で、国際会計基準(IAS/IFRS)を土台としつつベトナムの法制度に合わせて調整されています。現行の実務指針としては、通達200/2014/TT-BTCが勘定科目や帳簿形式、財務諸表様式を詳細に定めています。

近年はIFRS導入に向けた動きが加速しており、2024年11月にIFRS適用が正式承認される見込みとされています。さらに2025年10月には新通達「99/2025/TT-BTC」が発行予定で、2026年1月以降の会計年度から適用される見通しです。

適用対象と会計主体の分類

VASはベトナム国内で設立されたすべての企業に適用されます。外国直接投資(FDI)企業である日系子会社も例外ではなく、設立登記時に会計制度の選択を届け出る必要があります。

企業規模や業種によって適用される通達が異なる場合があり、大企業は通達200、中小企業は通達133を選択できるケースもあります。ただし、一度選択した会計制度は原則として変更が認められないため、設立時の判断が重要になります。

銀行や保険会社などの金融機関は、VASとは別の産業別会計基準が適用されます。製造業やサービス業の一般企業とは異なる規制体系となっているため、業種に応じた確認が必要です。

会計年度と帳簿保存の基本

ベトナムの標準的な会計年度は暦年(1月1日から12月31日まで)です。ただし、合理的な理由がある場合は、税務当局への届出により異なる会計年度を選択することも可能です。日本本社の決算期に合わせて3月決算とする日系企業も存在します。

帳簿の記帳言語はベトナム語が原則であり、外国語との併記は認められていますが単独での外国語表記は認められていません。記帳通貨も原則としてベトナムドン(VND)を使用し、外貨建て取引は補助記録として管理します。

会計帳簿や証憑類の保存期間は最低10年と定められています。電子帳簿や電子インボイスについても法令で形式要件が規定されており、これらの要件を満たさない帳簿は税務調査で否認されるリスクがあります。

主要な会計原則と報告義務

VASにおける基本的な会計原則は、発生主義(アクルーアルベース)と継続企業の前提を基礎としています。収益は実現主義に基づいて認識し、費用は発生した期間に計上して収益との対応を図ります。

財務諸表は、貸借対照表(財政状態計算書)、損益計算書、キャッシュフロー計算書、注記の4つで構成されます。これらの様式や科目の配列順序は通達で細かく規定されており、企業が独自のフォーマットを選択する余地は限られています。

年次決算後は所定の期限内に財務諸表を税務当局に提出する義務があります。外資系企業(FDI企業)は原則として監査法人による監査を受け、監査済み財務諸表を提出することが求められます。

会計基準で押さえるベトナム独自のルール

ベトナムの会計基準には、国際基準や日本基準とは異なる独自のルールが数多く存在します。ここでは、日系企業が特に注意すべきベトナム特有の会計処理について説明します。

法定勘定科目表の運用と影響

ベトナム会計制度の最大の特徴の一つが、国家統一勘定科目表(Chart of Accounts)の存在です。売上は511、直接材料費は621、当期純利益は911というように、全国共通の勘定コードの使用が義務付けられています。

日本のように企業が自由に勘定科目を設定することは認められておらず、この制約がERPシステムの設計や日本本社への報告体制に大きな影響を与えます。日本側の科目体系をそのまま使おうとすると、現地の法定要件を満たせなくなる恐れがあります。

対策としては、ベトナムの法定勘定科目と日本側の管理科目のマッピング表を事前に作成することが効果的です。このマッピングを明確にしておけば、ローカル帳簿の維持とグループ報告の両立が可能になります。

損益表示の特徴と金融収益の扱い

ベトナムの損益計算書は、営業活動と金融活動を明確に区分して表示する形式を採用しています。為替差損益や受取利息などの金融収益・費用は、営業利益とは別に「金融活動による収益・費用」として区分されます。

日本基準では営業外収益・費用として一括りにされる項目が、ベトナムでは細分化された表示科目に振り分けられます。このため、日本本社へ報告する際には損益計算書の組み替えが必要となり、単純な数値の転記では正確な業績比較ができません。

金融商品の評価についても、VASは取得原価中心のアプローチを採用しており、IFRSのような広範な公正価値評価は行われません。この点は日本基準やIFRSとの差異調整において重要なポイントとなります。

土地使用権の会計処理と償却の取り扱い

ベトナムでは土地の私有が認められておらず、企業が取得するのは土地使用権です。この土地使用権は無形固定資産として計上し、使用期間にわたって償却を行います。日本の土地(非償却資産)とは全く異なる会計処理となります。

土地使用権の取得費用や関連する整地費用、インフラ整備費用などをどの範囲まで資産計上するかは、税務上の損金算入にも影響するため慎重な判断が求められます。工業団地への進出時には、この処理について事前に会計専門家に相談することをお勧めします。

バクザン省やバクニン省、ビンズオン省などの工業団地では、土地使用権の条件や期間が地域ごとに異なる場合があります。進出先の選定時には、会計・税務面での影響も考慮に入れる必要があります。

減損や退職給付の取扱い上の差異

VASにおける引当金の計上範囲は、IFRSや日本基準と比較して限定的です。VAS18では貸倒引当金や製品保証引当金などの計上基準が定められていますが、税務上認められない引当金は損金不算入となるため、現地では消極的に扱われる傾向があります。

退職給付についても、ベトナムでは社会保険制度が日本と異なるため、退職給付引当金の計上方法に違いがあります。日本連結で必要な引当水準に現地の計上額が届かないケースが多く、決算期末に大きな調整が発生することがあります。

資産の減損についても、VASでは認識要件や測定方法がIFRSほど精緻に規定されていません。この差異は、日本本社がIFRS連結を採用している場合に特に影響が大きくなります。

監査税務で重要なベトナムの会計基準対応

ベトナムにおける会計実務は、監査制度や税務申告と密接に関連しています。この章では、監査対応と税務コンプライアンスの観点から重要なポイントを解説します。

監査制度の仕組みと監査人の責任

ベトナムでは、外資系企業(FDI企業)は原則として独立監査人による監査を受けることが義務付けられています。監査法人はVASおよび関連通達に基づいて監査を実施し、監査意見を表明します。

監査済み財務諸表は税務申告の基礎資料となるため、監査での指摘事項が税務リスクに直結することがあります。監査法人との事前のコミュニケーションを通じて、会計処理の妥当性について合意形成を図っておくことが重要です。

監査法人の選定にあたっては、日系企業の監査経験や日本語対応の可否なども考慮すべきポイントです。Big4をはじめとする国際的な監査法人は、日本本社との連携がスムーズに行える利点があります。

税務申告と会計処理の調整ポイント

ベトナムでは会計と税務の結びつきが非常に強く、VASに基づく会計処理と税務申告の整合性が重視されます。法人税(CIT)の課税所得は会計上の利益を出発点として計算しますが、会計と税務で処理が異なる項目については調整が必要です。

主な調整項目としては、引当金(税務上損金不算入)、減価償却(耐用年数・方法の差異)、交際費(損金算入限度額)などがあります。これらの差異を適切に管理しないと、追徴課税やペナルティのリスクが生じるため注意が必要です。

付加価値税(VAT)についても、売上認識のタイミングや電子インボイスの発行要件がVASの収益認識と連動しています。VAT申告と会計処理の不整合はVAT否認リスクにつながるため、両者の整合性確保が欠かせません。

移転価格と関連取引での留意点

日系企業のベトナム子会社は、親会社や他のグループ会社との取引について移転価格税制の適用を受けます。関連者間取引については、独立企業間価格で行われた取引であることを文書化し、税務当局に合理的に説明できる体制を整える必要があります。

移転価格文書化(ローカルファイル・マスターファイル)の作成義務は一定の要件を満たす企業に課されており、期限内に準備できないと罰則の対象となります。移転価格ポリシーの策定と文書化は、進出早期から計画的に進めるべき課題です。

ロイヤリティや経営指導料、グループ内サービス費用などの取引は、税務調査で特に注目される項目です。取引の合理性と価格の妥当性を裏付ける証拠資料を日頃から整備しておくことが求められます。

帳簿保存と証憑管理の実務上の注意

ベトナムの会計法では、帳簿や証憑の保存期間が厳格に定められています。会計帳簿、財務諸表、監査報告書などは最低10年間の保存が義務付けられており、原本の紛失や毀損は重大なコンプライアンス違反となります。

電子インボイス制度の義務化に伴い、インボイスの発行・受領・保存はすべて電子的に行うことが求められています。電子インボイスは所定のフォーマットと電子署名の要件を満たす必要があり、要件不備のインボイスは仕入税額控除が認められません。

紙の証憑類についても、スキャンによる電子保存が認められるようになりましたが、一定の条件を満たす必要があります。証憑管理の運用ルールを明確にし、担当者への教育を徹底することが実務上重要です。

日系企業が実務で対応すべき会計基準の要点

日本企業がベトナム子会社を運営する際には、現地基準と日本基準の両方に対応する必要があります。この章では、日系企業が実務で直面する課題と具体的な対処法を解説します。

日本基準との主な相違点と対処法

VASと日本基準(J-GAAP)の間には、収益認識、引当金計上、固定資産の認識基準など多くの相違点があります。以下の表に主な差異をまとめます。

項目 VAS 日本基準
勘定科目 国家統一勘定科目表が必須 各社が任意設定
収益認識 旧IAS準拠のルールベース 収益認識基準に準拠
固定資産認識 取得原価3,000万ドン以上 各社のポリシーによる
引当金 範囲・条件が限定的 見積もりに基づき計上
財務諸表様式 形式・順序が厳格に規定 一定の柔軟性あり

これらの差異に対処するには、主要な取引パターンごとにVASでの処理方法と日本基準への調整方法を文書化しておくことが効果的です。事前に標準的な調整シナリオを設計しておけば、決算時の混乱を防げます。

現地チーフアカウンタントの役割と選定基準

ベトナムの会計法では、企業はチーフアカウンタント(主任会計士)を任命することが義務付けられています。チーフアカウンタントは財務諸表の作成責任を負い、会計処理の適正性について最終的な責任を持ちます。

チーフアカウンタントには一定の資格要件があり、会計に関する学位と実務経験が求められます。日系企業にとっては、VASと日本基準の両方を理解し、日本語でのコミュニケーションが可能な人材を確保することが理想的です。

適任者の採用が難しい場合は、外部の会計事務所にチーフアカウンタント業務を委託することも選択肢となります。ただし、実質的な管理責任は企業側にあるため、丸投げにせず適切な監督体制を構築する必要があります。

財務諸表作成と日本向け連結の注意点

ベトナム子会社は、ローカル法令に基づくVAS財務諸表と、日本本社向けの連結報告パッケージの両方を作成する必要があります。この二重管理の負担を軽減するには、業務フローの効率化が欠かせません。

連結パッケージ作成時には、VASと日本基準(またはIFRS)の差異調整を行います。収益認識のタイミング差異、引当金の追加計上、為替換算差額の処理などが主な調整項目となり、これらの調整仕訳を正確に記録・管理する体制が必要です。

連結決算のスケジュールに間に合わせるため、子会社の月次決算を早期化することも重要です。ベトナム側の決算作業が遅れると、本社の連結作業全体に影響が及ぶことになります。

会計システムと勘定科目の整備手順

ベトナム子会社にERPシステムを導入する際は、VASの統一勘定科目表に対応した設計が必要です。日本本社で使用しているシステムをそのまま展開すると、現地の法定要件を満たせない可能性があります。

システム設計では、以下の点を考慮することが重要です。

  • VAS統一勘定科目への対応
  • 日本本社向け管理科目との紐づけ
  • 電子インボイスシステムとの連携
  • ベトナム語での帳票出力機能
  • VND建てと外貨建ての並行管理

導入前にベトナムの会計・税務専門家とシステムベンダーを交えた要件定義を行い、法令対応と業務効率化を両立させる設計を目指すべきです。稼働後の変更は大きな手戻りとなるため、事前の検討が成功の鍵を握ります。

ベトナムのビジネスには展示会出展が効果的

ベトナムでは、展示会への出展が企業のマーケティング戦略において極めて重要です。現地で開催される展示会は、自社の商品・サービスを認知してもらう最適な機会であり、特にB2B企業にとって欠かせない施策の一つとされています。開催数も年々増加しており、幅広い業種で行われる展示会は、効果的な販促チャネルとして注目されています。

展示会はテストマーケティングの場としても活用でき、現地顧客の反応を直接確かめることができます。さらに、単なる商品PRにとどまらず業界関係者とのネットワークづくりにも活用できるため、新規参入企業が現地での認知度を高め人脈を広げる上でも有効です。

このような対面での商談や交流を通じて有望な新規顧客の獲得やパートナー企業の発掘にもつながるため、展示会出展はベトナムにおけるB2Bビジネスで欠かせない施策となっています。

まとめ

本記事では、ベトナム会計基準(VAS)の概要から、日本企業が実務で注意すべきポイントまで幅広く解説しました。ベトナムの会計制度は独自のルールが多く、日本基準やIFRSとの差異を正しく理解することが事業運営の基盤となります。

  • VASは26本の会計基準と統一勘定科目表からなる独自の枠組みで、2026年以降IFRS寄りの新通達への移行が予定されている
  • 国家統一勘定科目表の使用が義務付けられており、日本の科目体系をそのまま使うことはできない
  • 会計と税務の結びつきが強く、引当金など税務上認められない処理は現地で消極的に扱われる傾向がある
  • ローカル帳簿と日本向け連結パッケージの二重管理が必要で、事前の差異調整シナリオ設計が重要である
  • チーフアカウンタントの任命や電子インボイス対応など、現地固有のコンプライアンス要件への対応が必須である

ベトナムでのビジネス展開を成功させるには、会計・税務の専門知識に加えて、現地市場への効果的なアプローチが重要です。株式会社ビッグビートは、海外展示会出展のサポートをしています。特に、タイやベトナムに現地法人を有しており、出展企画の立案から展示ブースの設営、コンパニオンをはじめとする運営スタッフの手配や管理に至るまで、日本の高い品質基準を維持したまま、現地からの迅速なサポートを提供することが可能です。

著者:ビッグビート ASEAN推進編集部

ベトナム・タイを中心としたASEAN圏に進出、あるいはこれから進出を計画している事業会社に対し、現地でのBtoBマーケティング領域を総合的に支援する広告会社です。ASEAN圏現地での実務経験や企業支援の実績を基に、現地に根差した信頼性の高い情報発信を行っています。