本記事は、2026年6月30日に株式会社ビッグビート(ASEAN推進営業部)が主催したオンラインウェビナー「海外BtoB開拓の新常識『展示会×デジタル』で商談を生む仕組み」のレポートです。ベトナムをはじめとするASEAN市場での新規開拓に課題を抱えるビジネスパーソンに向け、展示会とデジタル施策を連動させる実践的な手法が語られました。
登壇したのは、ホーチミンでFeedforce Vietnamを設立しデジタルマーケティングを手がける森大輔氏と、タイ・ベトナムを中心に海外BtoBマーケティングを展開する株式会社ビッグビートの片浦氏です。両者が現場で培った知見と成功事例を交えながら、商談を生み出す仕組みづくりのポイントを解説しました。
本ウェビナーの要点
- 展示会とデジタル施策が「点」で分断されることが海外BtoBの失敗要因になっている
- 事前・当日・事後を設計し、工業団地単位のターゲティングやZaloで接点をつくる
- Facebook・LinkedIn・Zaloを目的別に使い分けることが成果に直結する
- 住友重機械工業の事例ではフォロワーが約200人から1万人以上へ成長した
ウェビナー開催概要・登壇者紹介
本ウェビナーは、海外BtoB市場での開拓に取り組むビジネスパーソンを対象に開催されました。まずは開催概要と登壇者の背景を整理します。
テーマは「海外BtoB開拓の新常識『展示会×デジタル』で商談を生む仕組み」で、2026年6月30日にZoomを用いたオンライン形式で行われました。参加費は無料で、主催は株式会社ビッグビートのASEAN推進営業部です。
登壇者のプロフィールは以下の通りです。両氏とも現地での実務経験が豊富であり、机上の理論ではなく現場の視点から語られた点が特徴でした。
| 登壇者 | 所属・役職 | 主な経歴・専門領域 |
|---|---|---|
| 森 大輔 氏 | Feedforce Vietnam, CEO | 学生時代のベトナム留学・インターンを経て2021年末にホーチミンで設立。Meta・Google・TikTok Shop・Shopifyを活用したデジタルマーケティングやEC支援に精通 |
| 片浦 氏 | 株式会社ビッグビート 営業 | タイ・ベトナムの2拠点を中心に、イベント周りやデジタル支援など海外BtoBマーケティングを展開 |
森氏は「Metaマーケティング開発者」「Google Cloudルッカービジネスアナリスト」の資格を保有し、デジタル技術とマーケティングの両面に精通している点が強みです。
ウェビナー要点①:海外BtoBマーケティングによくある失敗とその原因
登壇者はまず、多くの日本企業が直面している海外BtoBマーケティングの壁を整理しました。背景には、日系企業の進出目的が「製造拠点」から「販売拠点」へ移行している変化があります。
施策が分断されることによる成果の停滞
森氏と片浦氏が最初に挙げた課題は、施策が「点」になっていることでした。展示会やデジタル広告がそれぞれ独立して動いており、ゴールから逆算された設計になっていないケースが多いといいます。
片浦氏は「展示会で名刺を集めたあと、どうやってリードを温め、商談につなげるか」という視点の欠如を指摘しました。個々の施策がつながっていないことが成果の停滞を招いているのです。
担当者の交代によるノウハウの属人化
2つ目の要因は人材の流動性です。現地スタッフや日本人駐在員が「平均すると、人材の流動(入社〜退職)が2-3年のスパンで発生する。」ため、ノウハウが引き継がれにくいと語られました。
結果として施策が属人化・分断化しやすくなります。担当者の交代のたびに知見が失われる構造が、継続的な成果を阻む大きな壁となっているのです。
長い検討期間を待てない見込み顧客の放置
3つ目はリードの放置です。BtoB特有の長いリードタイムに対する現場の理解が不足しており、「リードタイムは平均で4ヶ月ぐらい」という数字が共有されました。
ナーチャリング(見込み顧客の育成)の手法が体系化されておらず、HubSpotやMailchimpといったツールの活用も想定されていないケースが目立ちます。育成の仕組みがないまま貴重なリードが放置されている点が問題とされました。
現地ニーズを無視した「日本基準」のアピール
4つ目はローカライズ不足です。「JIS規格」や「ミクロン単位の精度」といった日本向けのオーバースペックな訴求を、そのまま現地に横展開してしまう失敗が挙げられました。
現地が実際に求めるのは「自社修理のしやすさ」「中国製機械との互換性」「初期費用の安さ」などです。訴求軸を現地ニーズに最適化できていないことが商談の機会損失につながります。
ウェビナー要点②:海外BtoBマーケティングで商談を増やすための仕組みづくり
続いて、課題を乗り越えるための具体的な仕組みづくりが解説されました。鍵となるのは、展示会とデジタルを事前・当日・事後で連携させる設計です。
| フェーズ | 目的 | 主な施策 |
|---|---|---|
| 事前 | 集客・認知獲得 | 工業団地や企業名・役職を指定したデジタル広告配信 |
| 当日 | 商談・接点づくり | ヒアリングや商談への注力、ZaloのQRコード読み込み |
| 事後 | フォロー・育成 | 温度感別のフォローとKPIによる逆算運用 |
特定の工業団地を狙い撃ちする事前のデジタル集客
事前フェーズでは、デジタル広告で認知とクリックを獲得します。森氏は、ハイフォンやカントーなどの特定の工業団地、あるいは企業名や役職を指定したターゲティング配信が有効だと述べました。
ビンズオンなど工業団地が集積するベトナムでは、地理的な絞り込みが効果を発揮します。ターゲットを面ではなく点で狙い撃ちする集客が展示会来場の質を高めるのです。
Zaloなどを活用した展示会当日の接点づくり
当日フェーズでは、展示会をヒアリングや商談の場として活用します。名刺交換に加え、ベトナム発のプラットフォームであるZaloのQRコードを読み込んでもらうことで接点を確保します。
これにより、来場後もオンラインでつながり続ける基盤が整います。その場限りで終わらせず継続的な関係につなげる接点づくりが重視されました。
顧客の温度感に合わせた展示会後のリード育成
事後フェーズでは、取得したリードを温度感別にフォローします。過去の数値と比較できるKPIを設定し、ゴールから逆算して運用することが推奨されました。
平均4ヶ月というリードタイムを前提に、焦らず段階的に育成する姿勢が求められます。温度感に応じた継続フォローが商談化の確率を高めるという考え方です。
代理店任せを防ぐための明確な役割分担
現地代理店との付き合い方についても言及がありました。日本のように強固なオペレーションが期待できず、報告数値が不正確なこともあるため「丸投げ」は禁物です。
森氏は「阿吽の呼吸が少ないので、しっかりとscope of workやstatement of workというドキュメントとして、ここからここまでは責任範囲だと定義してコミュニケーションすることが大事」と語りました。責任範囲を文書で明確に定義することが失敗を防ぐ鍵です。
ウェビナー要点③:海外BtoBマーケティングの成果を伸ばすメディアツールの選び方
森氏は、ベトナムで活用すべき代表的な3つのプラットフォームの特性と使い分けを解説しました。それぞれの役割を理解することが成果の最大化につながります。
安価な認知拡大と問い合わせ獲得に効くFacebook
Facebook(Meta)は、業界特化メディアが少ないベトナムにおいて認知拡大や権威性構築に最も重要かつ安価なチャネルと位置づけられました。「ベトナムだと日本の10分の1の費用で認知を作ったりクリックを獲得できる」と述べられています。
「10万円出せば40万人ぐらいには大体インプレッション表示ができる」という具体例も共有されました。インスタントフォームの活用で問い合わせのハードルを下げられる点も強みです。
LinkedInを活用した決裁者への的確なアプローチ
LinkedInはベトナムに約500万人のユーザーがいるとされ、大企業のCEOや役職者、特定の言語話者へのピンポイントな営業ツールとして紹介されました。Sales Navigatorなどを用いた的確なアプローチが可能です。
ただしクリック単価は高い点に注意が必要です。決裁者層に狙いを定めて使うことで費用対効果が高まるツールといえます。
認知からアフターサポートまで網羅するZaloの活用
Zaloはベトナム発の強固なプラットフォームで、認知から購入、アフターサポートまでを一貫して支える「CRM的活用」が可能だと語られました。社内コミュニケーションツールとしても有効です。
顧客との継続的な関係構築に適しており、展示会で獲得した接点を長期的な関係に発展させられます。顧客接点のすべての段階を1つのツールでカバーできる点が魅力です。
ウェビナー要点④:海外BtoBマーケティングの成功事例と具体的な成果
最後に、住友重機械工業の事例が紹介されました。プラスチック射出成形機の販売でローカル企業を開拓した取り組みで、ビッグビートが戦略立案、Feedforce Vietnamが広告運用・コンテンツ制作を担当しています。
ターゲット企業や工業団地に合わせた配信の設計
この事例では、ターゲットとなる企業名や関連の深い工業団地でセグメントを絞った配信を設計しました。無差別な広告出稿ではなく、狙うべき層に的確に届ける手法です。
市場背景として、ベトナムのGDPが年5%以上安定して成長していることや、ホーチミンのホワイトカラーの平均月収は1000ドルほどである一方、月収2万円の層も存在するなど購買力の差が大きいと語られました。日本以上に緻密なターゲティングが必須となる市場特性が反映されています。
ショート動画とインスタントフォームによる信頼獲得
施策の中身としては、現地ニーズに合わせたショート動画の制作と、Facebook内で完結するインスタントフォームの活用が挙げられました。動画で製品の魅力を伝えつつ、離脱を防ぎながら問い合わせを獲得しています。
コンテンツを現地目線で作り込むことが信頼獲得につながりました。現地ニーズに最適化したコンテンツが権威性を高めることが実証された形です。
展示会では出会えない層からの新たな問い合わせ獲得
成果として、Facebookのフォロワーが当初の約200人から1万人以上まで伸び、権威性のあるアカウントへと成長しました。展示会ではリーチできない層からの問い合わせを安価に獲得することにも成功しています。
森氏は「日系企業へのアプローチは王道だが、狭くて深いアプローチ」と述べ、ローカル企業への展開の可能性を示しました。展示会とデジタルの連携が新たな顧客層を開拓することを裏付ける事例です。
まとめ
本ウェビナーでは、海外BtoBマーケティングにおける失敗の原因と、それを乗り越える「展示会×デジタル」の仕組みが具体的に語られました。施策の分断や属人化、リードの放置、ローカライズ不足という課題に対し、事前・当日・事後を貫く設計が有効であると示されました。
また、Facebook・LinkedIn・Zaloの使い分けや、代理店との責任範囲の明確化といった実践的なノウハウも共有されました。住友重機械工業の事例は、これらを組み合わせることで新たな顧客層を開拓できることを証明しています。
森氏は「先行事例が少ない中でも新しい施策を試せる市場」とベトナム市場の可能性に触れました。自社のターゲット層と年間スケジュールに合わせたマーケティングファネルを設計し、実行とPDCAを回す体制づくりが次の一歩となります。
この記事のまとめ
- ✓施策の分断・属人化・リード放置・ローカライズ不足が海外BtoBの主な失敗要因である
- ✓展示会とデジタルを事前・当日・事後で連携させ、目的別にプラットフォームを使い分ける
- ✓自社のターゲットと年間計画に沿ったマーケティングファネルを設計し実行する
- ✓ASEAN市場での開拓に課題がある場合はビッグビートや現地パートナーへ相談する
株式会社ビッグビートは、海外展示会出展のサポートをしています。特に、タイに現地法人を有しており、出展企画の立案から展示ブースの設営、コンパニオンをはじめとする運営スタッフの手配や管理に至るまで、日本の高い品質基準を維持したまま、現地からの迅速なサポートを提供することが可能です。
著者:ビッグビート ASEAN推進編集部
ベトナム・タイを中心としたASEAN圏に進出、あるいはこれから進出を計画している事業会社に対し、現地でのBtoBマーケティング領域を総合的に支援する広告会社です。ASEAN圏現地での実務経験や企業支援の実績を基に、現地に根差した信頼性の高い情報発信を行っています。



