海外の販路を広げるとき、製品カタログは営業担当者の代わりに製品の価値を伝える資料です。ところがカタログ翻訳は、日本語の文章を外国語に置き換えれば終わる作業ではありません。専門用語や数値の確認、文字量の変化に合わせたレイアウト調整(DTP)、仕上がりの品質確認まで、複数の工程が連なる作業と言えるでしょう。
本記事では、カタログ翻訳の進め方を、依頼前に決めておくこと、原稿準備から納品までの流れ、起こりやすい失敗、品質確認の方法、依頼先の選び方と料金の考え方の順に整理します。料金は、2026年11月時点で翻訳会社が公開している料金表や解説記事で確認できた範囲に限り、幅と前提条件をあわせて紹介します。
後半では、タイ語・ベトナム語など現地語でカタログを作るときの注意点も、現地の公的な資料や国際的な調査をもとにまとめました。ASEAN向けに多言語カタログを用意する担当者の方も、ぜひ参考にしてください。
この記事でわかること
- カタログ翻訳は、目的・範囲・言語を決め、原稿と用語集を整えてから依頼すると手戻りが減る
- 進め方は、相談から納品までの6工程で整理でき、翻訳とDTPの作業範囲は見積書の内訳で確認する
- 料金は翻訳費とDTP費に分けて考え、公開料金の例と前提条件を踏まえて見積もりを比べる
- タイ語・ベトナム語など現地語のカタログは、文字・年号・規制・現地確認の4点に注意する
カタログ翻訳を始める前の準備と判断
翻訳会社に連絡する前に、社内で固めておきたい事項は3つあります。目的と読み手、翻訳する範囲と言語、そして日本語原稿の状態です。
目的と読み手の整理
カタログ翻訳で最初に行うのは、翻訳そのものではなく、誰に何のために渡す資料なのかを決める作業です。展示会で配る、海外の代理店に渡す、現地の顧客への提案に添えるなど、使う場面によって求められる情報量や文章のトーンは変わります。
代理店向けなら仕様や価格体系の正確さが重視され、展示会向けなら短時間で価値が伝わる簡潔な文章が向いています。読み手と使う場面を一言で言い表せる状態にしておくと、翻訳の範囲、言語、文体、納期を判断しやすくなります。この情報は、依頼先にもそのまま共有しましょう。
翻訳範囲と言語数の判断
次に、どこまでを翻訳するかを決めます。代表的な3つの選択肢を、向いている場面と注意点の観点で比べます。
| 範囲の選択肢 | 向いている場面 | 注意点 |
|---|---|---|
| 全ページを翻訳 | 製品ラインが少なく、日本語版と同じ構成で使う場合 | 費用と納期が最も大きくなりやすい |
| 主力製品のページだけを翻訳 | 海外で売る製品が絞られている場合 | 日本語版との構成の違いを管理する |
| 海外向けの要約版を新規作成 | 初めての市場で反応を見たい場合 | 翻訳の前に構成の再設計が必要 |
言語数も同様に、読み手の言語環境と用途から考えます。言語を増やすと、翻訳費だけでなく言語ごとのDTPと確認作業も増えるため、優先する市場を絞って作り、反応を見ながら言語を広げる進め方が現実的でしょう。
日本語原稿の整理と用語集づくり
カタログ翻訳に出す原稿は、事前に整理するほど手戻りが減ります。まず確認したいのは、原稿が最新で確定しているかどうか。翻訳の途中で日本語を修正すると、訳文とレイアウトの両方に影響が及ぶためです。
社内でしか通じない略称や、主語を省いた文、「各種」「など」といったあいまいな表現も見直しましょう。日本語のジョークや慣用句は、そのまま訳しても伝わりにくいと翻訳会社の解説でも指摘されています。製品名・型番・技術用語の訳語を固定する用語集を、依頼前に用意しておくことが、表記統一の近道です。依頼時に渡すとよい資料は、次の5点でしょう。
- 元データ:InDesign、Illustrator、PowerPointなど編集できる形式のデータ
- 確認用PDF:完成状態のレイアウトが分かるPDF
- 用語集:製品名・型番・専門用語の訳語を固定した一覧
- 参考資料:既存の外国語版資料や、表現を合わせたい資料
- 使用フォントの情報:フォント名と利用環境(ライセンスの都合で、ファイルは渡せない場合がある)
カタログ翻訳の進め方|原稿準備から納品までの流れ
翻訳会社が公開している進め方の解説を参考に、依頼から納品までを6つの工程に整理します。依頼側の役割もあわせて示します。
6つの工程と依頼側の役割
工程の呼び方は会社ごとに異なりますが、原稿と用途の確認、範囲・料金・納期の合意、翻訳内容の整理、制作データへの反映、完成状態の確認、納品という大きな流れは共通しています。
| 工程 | 主な作業 | 依頼側の役割 |
|---|---|---|
| 1 相談・原稿の共有 | 用途、言語、納期を伝え、原稿と元データを渡す | 最新の原稿を用意する |
| 2 見積もり・納期の合意 | 翻訳、DTP、チェックの範囲と料金を確認する | 見積もりの内訳を確認する |
| 3 用語・固有名詞の確認 | 用語集を整理し、製品名や社名の表記を決める | 訳語を判断する担当者を立てる |
| 4 翻訳とチェック | 翻訳後に別の担当者やネイティブ話者が確認する | 質問に早めに回答する |
| 5 DTP | 訳文を制作データに入れ、文字量に合わせて調整する | デザインの意図を伝える |
| 6 最終確認・納品 | 文字切れや数値、リンクを確認し、指定の形式で納品する | 校正期間を確保し、承認者を決める |
依頼側の動きが遅れやすいのは、工程3と工程6です。訳語の判断と最終承認を誰が行うかを、工程1の時点で決めておくことで、スケジュールの停滞を防げます。
翻訳のみ・文字入れ・DTPの違い
見積もりで混乱しやすいのが、「翻訳のみ」「翻訳文字入れ」「DTP」という言葉です。翻訳のみは訳文をWordなどで納品する範囲、文字入れは訳文を元デザインの該当箇所へ反映する作業、DTPは文字入れに加えて書体、改行、余白、図表、ページ構成まで調整して印刷物の体裁を整える作業を指すのが一般的です。
ただし作業範囲は重なっており、会社によって境界も異なる点に注意しましょう。名称だけで判断せず、見積書にどの作業が含まれているかで確認することが大切です。付き合いのあるデザイン会社に訳文を流し込んでもらう方法もありますが、その場合は、改行位置や見出しの表現をレイアウト後に再確認する工程が欠かせません。
納期の考え方と逆算スケジュール
カタログ翻訳の納期は、翻訳の日数にDTP、校正、修正、印刷入稿までを足して考えましょう。公開例として、FUKUDAIの料金ページでは、翻訳者1名が対応する場合の納品日数の目安が、1,001〜3,000文字で通常4日〜、3,001〜10,000文字で通常5日〜と示されています。言語ペアや難易度、原稿形式で変わるとの注記つきです。
この日数にDTPや校正は含まれないため、別に見込みます。使い始める日から逆算し、校正と修正の期間を確保したうえで、翻訳の作業期間に余裕を持たせるのが基本です。逆算は、次の順で行うと分かりやすいでしょう。
- 使い始める日(展示会の開幕日など)を決める
- 印刷が必要なら、入稿日と印刷期間を差し引く
- 最終承認と修正対応の期間を差し引く
- DTPと校正の期間を差し引く
- 翻訳とチェックの期間を差し引き、原稿確定の期限を決める
カタログ翻訳で起こりやすい失敗と防ぎ方
翻訳会社の解説で挙げられている失敗の例を、原因と防ぎ方に分けて整理します。
- 製品名・型番の表記ゆれ:用語集がなく、ページごとに訳語が異なる。用語集の共有と既存資料との照合で防ぐ
- 数値・単位・日付の誤り:転記ミスや、現地の習慣に合わない表記。原文との照合で防ぐ
- 画像内の文字の訳し漏れ:図や写真の文字が範囲から外れる。画像内の文字を一覧にして範囲に含める
- レイアウトの崩れや文字化け:文字量の変化やフォントの非対応。DTPの実施とフォントの確認で防ぐ
- 不自然な表現:慣用句やジョークの直訳。現地の表現への置き換えで防ぐ
用語・製品名・数値の取り違え
製品カタログで最も避けたいのが、製品名や型番、仕様の数値の誤りです。製品名や専門用語が既存資料と一致しているか、数値や単位、使用条件が原文と一致しているかは、納品前に必ず見る項目として翻訳会社の解説でも挙げられています。
見落としやすいのは、本文以外の箇所です。本文・図表・画像内の文字・注釈を一覧にして、翻訳範囲に漏れがないかを最初に確認すると、後からの追加依頼を避けられます。単位、通貨記号、日付が現地の習慣に合うかも、同時に確認しましょう。
文字量の変化によるレイアウトの崩れ
翻訳言語によって文字量や表現の長さが異なるため、翻訳後にレイアウトが崩れることがあります。日本語に合わせたデザインへ訳文をそのまま流し込むと、文字が枠に収まらず、行間や段落の調整が必要になるでしょう。使用フォントが対象言語の文字セットに非対応の場合は、文字化けにもつながります。
レイアウトの崩れは翻訳の品質ではなくDTPの工程で解消するものと捉え、DTPの作業範囲を見積もりに含めておくことが重要です。訳文の長さを調整して収める方法もあるため、翻訳者とDTP担当者が連携できる体制かどうかも確認しておきます。
直訳調の不自然な表現
日本語を忠実に訳しても、現地の読み手に自然とは限りません。キャッチコピーや製品の魅力を伝える文章は、直訳すると硬い表現になりやすく、ネイティブが違和感なく読める形に整える必要があります。
対策には、翻訳後にネイティブ話者が確認する方法や、現地の読み手に響く表現へ作り替えるトランスクリエーションがあります。仕様や数値は正確さを最優先にし、キャッチコピーなどの訴求部分は自然さを優先するというように、部分ごとに方針を分けて依頼すると、費用と品質のバランスを取りやすくなります。
品質確認の進め方|チェック体制から現地確認まで
カタログ翻訳の品質確認は、翻訳の直後、DTPの後、現地での確認という3つの段階に分けると整理しやすくなります。
翻訳後のチェック体制
翻訳会社の公開情報には、翻訳者の訳を別の担当者が確認する体制の例があり、ファーストネット翻訳サービスの料金表は、翻訳後にネイティブチェックを行うダブルチェック体制を、ハイクオリティの区分として示しています。島津インターナショナルの案内では、ネイティブ翻訳者による翻訳と品質管理を経て、必要に応じて別のネイティブ話者がリライトする流れが紹介されています。
注意したいのは、「チェック」の意味が会社ごとに異なる点でしょう。日本翻訳連盟(JTF)の2015年の講演報告も、チェックにはさまざまな形があり、何が必須かについて業界共通のルールはないと指摘しています。見積もりの段階で、誰が、何を、どの時点で確認するのかを具体的に聞いておくことが欠かせません。
目安の一つが、翻訳サービスの国際規格ISO 17100(日本ではJIS Y 17100:2021)への適合です。日本規格協会の説明では、翻訳実務者の力量・資格やプロジェクト管理などを定めた規格で、機械翻訳とポストエディットの組み合わせは対象外とされています。
DTP後の最終確認チェックリスト
DTPの後は、翻訳の内容とレイアウトの二つの観点で確認します。納品前に見ておきたい項目は、次のとおりです。
- 翻訳範囲:抜けや重複がなく、画像内の文字や注釈まで訳されているか
- 製品情報:製品名、型番、数値、単位が正しい製品と対応しているか
- 用語の統一:会社名、製品名、専門用語が既存資料や用語集と一致しているか
- レイアウト:文字切れ、不自然な改行、文字や図の重なりがないか
- 導線情報:目次、ページ番号、リンク、問い合わせ先が正しいか
- データの仕様:指定のソフトで編集でき、印刷条件を満たしているか
確認は、内容とレイアウトで担当者を分けると見落としが減ります。修正が見つかったときに、翻訳会社へ戻すのか社内で直すのかを、あらかじめ決めておくと、最終段階の混乱を避けられるでしょう。納品後の無償修正は、たとえばファーストネット翻訳サービスでは合意した翻訳条件の範囲で3か月間とされ、原文の追加や仕様変更は対象外。範囲と期間は会社ごとに異なります。
現地担当者や代理店による確認
翻訳会社のチェックの後に、現地の営業担当者や代理店に読んでもらうと、業界で実際に使われる言い回しとのずれが見つかることがあります。製品の使われ方や競合製品の呼び方といった現場の知識は、翻訳会社が持っているとは限りません。
依頼するときは、全文の書き直しではなく、用語、数値、製品の説明の3点に絞ると回答が集まりやすくなります。現地からの指摘は用語集に反映し、次回の改訂版に生かす仕組みにしておけば、同じ指摘を繰り返し受ける事態を防げます。
依頼先の選び方と料金の考え方
依頼先の種類、比べるときの確認項目、料金の決まり方の順に整理します。特定の会社を勧めるものではなく、公開情報で確認できた範囲の整理です。
依頼先の種類と特徴
依頼先は、翻訳会社、制作会社・広告会社、フリーランスの翻訳者、現地の制作会社の4つに大きく分けられます。以下は一般的な傾向であり、個々の体制は会社ごとに異なります。
- 翻訳会社:翻訳とチェックの体制が整っていることが多い。DTPの対応可否を確認する
- 制作会社・広告会社:企画から印刷まで一貫して頼みやすい。翻訳を自社で行うか確認する
- フリーランスの翻訳者:専門分野が合えば相談しやすい。DTPとチェックの手配を確認する
- 現地の制作会社:現地語の表現感覚に通じている。日本側との意思疎通を確認する
自社に足りない機能が、翻訳、デザイン、現地確認のどれなのかを見極めて依頼先を選ぶのが出発点です。翻訳とDTPを同じ会社に頼むと、連携不足による手戻りを減らせるとされています。
依頼先を比べる確認項目
カタログ翻訳の見積もりを複数社から取る場合は、単価だけで比べないことが大切です。単価の基準や、料金に含まれる範囲が会社ごとに異なるため、次の観点で並べて確認します。
| 確認項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 対応言語と分野 | 依頼する言語と製品分野の実績。料金表に単価を載せるのは主要16言語のみで、他は個別見積もりという会社もある |
| 単価の基準 | 日本語の原文文字数か、訳文のワード数か。外国語から日本語はワード単価とする解説がある |
| 最低料金 | 少量の依頼で最低受注料金が適用されるか |
| DTPの範囲 | 対応ソフト、入稿形式、見積もりに含まれる作業 |
| チェックと修正 | ネイティブチェックの有無、無償修正の範囲と期間 |
機密情報を扱うため、情報管理の体制や認証の有無も確認項目に入ります。単価の安さではなく、含まれる作業の範囲と追加費用が発生する条件を、見積書の内訳で並べて比べると、想定外の費用を避けやすくなります。
料金の決まり方と公開料金の例
カタログ翻訳の料金は、翻訳費とDTP費に分けて考えると分かりやすくなります。翻訳費は日本語の原文文字数に単価を掛ける方式が多く、言語、専門性、品質レベル、納期で単価が変わります。DTP費は、ページ数、元データの有無、図表の量、調整の範囲によって左右されるでしょう。
翻訳会社が公開している料金表や解説記事から、確認できた範囲を比べます。確認日は2026年11月4日で、いずれも目安や開始価格です。
| 公開元(確認した情報の時期) | 翻訳の単価 | DTPの扱い・前提 |
|---|---|---|
| ファーストネット翻訳サービス(最終更新2026年10月6日) | 日本語1文字あたり、スタンダード10円〜、ハイクオリティ17円〜(税別)。後者はネイティブチェックを行う体制 | DTPは翻訳費と分けて個別に案内。単価掲載は主要16言語のみ |
| FUKUDAI(料金ページ) | 原文100文字あたり、日本語から英語・東南アジア言語は1,000円〜、欧州言語は1,400円〜 | 簡易見積もりにDTP費は含まれない。最低受注料金は20,000円〜 |
| WIPジャパン(2025年9月12日掲載) | 日本語から外国語は1文字あたり18〜30円が目安 | DTPは1ページ5,000〜20,000円が目安。元データがないと再構築で別途費用 |
| インターブックス(2025年9月8日公開) | 日本語から、英語18〜30円、中国語・韓国語20〜35円、欧州言語22〜38円、東南アジア・中東系25〜45円(1文字あたり) | DTPは1ページ5,000〜15,000円程度。外国語から日本語はワード単価25〜50円程度 |
開始価格として示される単価と、相場として示される範囲には開きがあります。「〜円から」という開始価格は条件の良い場合の単価であり、東南アジア言語では英語より高い範囲が相場として示されている点に注意しましょう。インターブックスの解説は、東南アジア・中東系の言語は翻訳者の確保にコストがかかると記しています。
費用の試算例と抑えるための工夫
公開されている幅を使い、費用感をつかんでおきましょう。日本語8,000文字・20ページのカタログを仮定し、インターブックスの目安の幅を単純に当てはめた試算です。文字数とページ数は説明のための仮定であり、実際の見積もりとは異なります。
| 項目 | 英語の場合 | 東南アジア言語の場合 |
|---|---|---|
| 翻訳費 | 8,000文字×18〜30円=144,000〜240,000円 | 8,000文字×25〜45円=200,000〜360,000円 |
| DTP費 | 20ページ×5,000〜15,000円=100,000〜300,000円 | 20ページ×5,000〜15,000円=100,000〜300,000円 |
| 合計の目安 | 244,000〜540,000円 | 300,000〜660,000円 |
校正、修正、印刷費は含みません。費用の幅を狭めるには、原稿の確定、編集可能な元データの用意、用語集の整備の3点が効果的です。具体的な工夫を挙げましょう。
- 編集できる元データを用意する:PDFのみだと、レイアウトの再構築に別途費用と時間がかかる場合がある
- 原稿を確定してから依頼する:翻訳後の原文変更は、訳文とレイアウトの両方に影響する
- 翻訳メモリを活用する:過去の訳文を蓄積し、改訂版で類似表現の費用と納期を抑えられるとされる
ASEAN向け現地語カタログの注意点|タイ語・ベトナム語
タイ語・ベトナム語でカタログを作る場合の注意点を、国際的な調査と各国の公的な資料や法令をもとに整理します。まず全体像を表で確認します。
| 観点 | タイ | ベトナム |
|---|---|---|
| 英語力の目安(EF EPI 2025) | 402点、123の国・地域中116位 | 500点、123の国・地域中64位 |
| 文字の特徴 | タイ文字。空白は単語ではなく句の区切り | ラテン文字に声調などの記号を付けて表記 |
| 確認したい規制 | 消費者保護法に基づく商品ラベルのタイ語表示 | 広告法の言語規定、政令43/2017/ND-CPの商品ラベル規制 |
英語版と現地語版の使い分け
英語版で足りるかどうかは、読み手によって変わります。教育企業EFの英語能力指数(EF EPI)2025年版は、123の国・地域の成人約220万人のテスト結果に基づく指標で、タイは402点で116位、ベトナムは500点で64位、全体の平均は488点でした。受験者の結果に基づくため、国全体の実態ではなく目安として見るのが適切でしょう。
EFの国別資料には職種別のスコアもあり、技術者・保守の職種はタイが388点、ベトナムが467点と、いずれも国全体のスコアを下回っています。現場の担当者や技術者に読んでもらう製品カタログでは、現地語版を用意する価値が高いと考えられます。購買や経営層向けの資料は英語版で足りる場合もあるため、読み手ごとに言語を使い分けましょう。
タイ語カタログの注意点
W3Cが公開するタイ語のレイアウト要件(2026年3月20日付の作業草案)には、空白は単語ではなく句を区切るために使われると記載され、音節の境界をアルゴリズムで検出するのは難しいとも説明されています。行末の折り返し位置が不自然になっていないか、タイ語の読み手の確認が必要です。
同資料は、母音が最大4つの字形と声調記号で構成され、子音の上下など最大3方向を取り囲む場合があるとも述べています。こうした文字の構造を踏まえ、DTPの後に実際の見本で行間や文字の欠けを確認することが大切です。使用フォントがタイ文字に対応しているかも確認しておきましょう。
年号の表記にも注意が必要でしょう。タイでは西暦に543を足した仏暦が使われ、Microsoft Learnの解説では2001年1月1日が仏暦2544年1月1日に当たります。タイ政府観光庁の祝日ページも「2026(B.E. 2569)」と西暦・仏暦を並べて示しており、発行年や展示会の開催年を載せるなら、西暦のみか仏暦併記かを現地担当者と決めておくと安心です。
ベトナム語カタログの注意点
ベトナム語は、クオックグー(quốc ngữ)と呼ばれるラテン文字を基にした文字で、声調を表す記号を伴い、現在は公式の表記体系です。日本語用や英語用のフォントを流用すると記号が欠けたり別の書体で表示されたりするため、対応フォントを指定し、DTPの後に見本で確認しましょう。
法令面では、広告法(法律第16/2012/QH13号、2013年1月1日施行)の第18条が、広告の内容はベトナム語で表現するのを原則とし、ブランド名やスローガン、商標などを例外としています。外国語を併記する場合は、外国語の文字の大きさをベトナム語の4分の3以下にして、その下に置くと定められています(WIPO Lex掲載の非公式英訳による)。同法の第25条は、カタログやチラシなどの印刷物による広告にも触れています。
日本語・英語・ベトナム語を併記したカタログをベトナムで配布するなら、この言語規定の対象になるかを事前に確認することが重要です。販促用カタログがどこまで対象かは、用途や配布方法で変わりうるため、現地の法律専門家へ相談しましょう。同法は2018年に改正されており、最新の条文での確認も必要です。
製品ラベルや取扱説明書との整合
カタログ翻訳は、製品そのものの現地語表示と切り離して考えられないでしょう。ジェトロの情報では、タイは消費者保護法(仏暦2522年、1979年)に基づき、商品のラベルをタイ語で記述するのが基本で、外国語の併記も認められています。ベトナムは政令43/2017/ND-CPにより、輸入品のラベルの必須表示事項がベトナム語で書かれていなければ、ベトナム語のサブラベルが必要とされています。
食品、医薬品、化粧品などは、追加の要件にも注意が必要でしょう。カタログの製品名・仕様・用途の訳語を、ラベルや取扱説明書の現地語表記と揃えておくことで、現場の混乱を防げます。用語集をカタログ、ラベル、取扱説明書、Webサイトで共通にすれば、一度決めた訳語を使い回せる点でも効率的です。
カタログ翻訳をプロに任せる選択肢
社内に多言語の人材や制作体制が足りない場合は、翻訳から制作までを任せられる会社へ相談する方法もあります。
ビッグビートの多言語カタログ制作とローカライズ支援
株式会社ビッグビートは、1995年3月設立のBtoBマーケティング支援会社で、タイ(Bigbeat Bangkok、2018年設立)とベトナム(Bigbeat Vietnam、2025年設立)に現地法人があります。公式サイトのサービス一覧では、海外向けカタログ・パンフレット・チラシの企画・制作を、商品紹介、企業案内、サービス説明などの用途で多言語対応のうえ手がけるとし、英語・タイ語・ベトナム語など現地言語での翻訳と表現調整にも対応するとしています。
制作面では、企画、構成、デザイン、コピーライティング、取材・執筆を扱い、多言語展開では現地のネイティブスタッフが確認を行うとしています。完成後は、企業の担当者による確認と修正を経て納品する流れです。詳しい内容は、クリエイティブ制作のご案内もご覧ください。
現地印刷・配布までを含めた支援範囲
ビッグビートのASEANマーケティング支援では、海外展示会の出展、セミナー・カンファレンスの運営、英語・現地語のWebサイトとローカライズ、海外向けコンテンツ制作、SNS運用、交通広告の6つが支援領域です。カタログに関わる範囲は、次のとおりです。
| 支援領域 | 内容 |
|---|---|
| 海外向けカタログ・パンフレット・チラシ | 商品紹介、企業案内、サービス説明などを多言語対応で企画・制作 |
| 多言語対応・ローカライズ | 英語・タイ語・ベトナム語など、現地言語での翻訳と表現調整 |
| ネイティブスタッフによる確認 | 多言語展開した制作物を現地のネイティブスタッフが確認 |
| 現地印刷・配布支援 | 印刷会社と連携した現地印刷と、展示会や店舗での配布支援 |
カタログの企画・制作から、多言語化、現地での印刷と配布までを一つの流れで相談できるのが特徴です。支援領域の全体は、ASEANマーケティング支援のご案内で確認できます。進め方や費用は案件によって異なるため、目的と用途を添えて、まずはご相談ください。
よくある質問
Q. カタログ翻訳の料金は、どれくらいを見込めばよいですか
A. 翻訳費は日本語1文字あたりの単価で示されることが多く、公開情報では、英語の開始単価が10円台から、相場の範囲が18〜30円程度です。DTPは1ページ5,000〜20,000円が目安とされています。言語、専門性、納期、元データの有無で変わるため、見積もりの内訳で確認しましょう。
Q. 元データがなく、PDFしかなくても依頼できますか
A. 可能とする会社が多くあります。ただし、デザインデータがない場合はレイアウトを一から再構築するため、別途費用と時間がかかることがあります。依頼時に状況を伝えておきましょう。
Q. 納期はどのくらい見ておけばよいですか
A. 翻訳だけでも、公開例では3,001〜10,000文字で通常5日〜が目安です。ここにDTP、校正、修正、印刷の期間が加わるため、使い始める日から逆算し、原稿確定の期限を決めておきます。
Q. 英語版だけでASEAN市場に出ても問題ありませんか
A. 読み手によって変わります。EF EPI 2025では、技術者・保守の職種はタイ・ベトナムとも国全体のスコアを下回りました。現場向けの資料は現地語版の価値が高いと考えられるため、主力製品だけを現地語化して反応を見る方法も考えられるでしょう。
Q. タイ語やベトナム語のカタログ制作も、まとめて相談できますか
A. 株式会社ビッグビートは、海外向けカタログ・パンフレット・チラシの企画・制作を、英語・タイ語・ベトナム語など現地言語での翻訳と表現調整を含めて手がけています。タイとベトナムに現地法人があり、現地印刷や配布の支援も含めてご相談いただけます。
まとめ
カタログ翻訳は、翻訳そのものよりも、依頼前の準備と進め方が仕上がりと費用を左右します。読み手と用途を決め、翻訳範囲と言語を絞り、日本語原稿と用語集を整えてから依頼すれば、手戻りを減らせます。翻訳、文字入れ、DTPの作業範囲は、見積書の内訳で確認しましょう。
カタログ翻訳の料金は、翻訳費とDTP費に分けて考えます。公開料金では開始価格と相場の幅に開きがあり、東南アジア言語は英語より高い範囲が示されていました。単価だけでなく、単価の基準、最低料金、DTPやチェックの範囲、修正の条件を並べて比べてください。
ASEAN向けの現地語カタログでは、文字とフォント、年号、規制、現地での確認が要になります。自社だけで進めるのが難しい場合は、翻訳から制作、現地印刷までを任せられる会社への相談も選択肢です。
株式会社ビッグビートは、ASEAN展開を支援する海外マーケティングの専門会社です。タイ(2018年設立)とベトナム(2025年設立)に現地法人を持ち、現地展示会の出展支援からセミナー開催、カタログ・動画などのコンテンツ制作、現地語Webサイト構築、SNS運用までを一貫してサポートします。現地スタッフと日本語スタッフの双方が対応し、日本国内と変わらない品質で海外マーケティングを実行できることが強みです。
この記事のまとめ
- ✓カタログ翻訳は、読み手・範囲・言語を決め、原稿と用語集を整えてから依頼しましょう
- ✓見積もりは、単価だけでなくDTP・チェック・修正の範囲を内訳で比べましょう
- ✓タイ語・ベトナム語は、文字・年号・規制を確認し、現地の担当者の目を通しましょう
■ 参考文献
- ファーストネット翻訳サービス「カタログ翻訳・パンフレット翻訳の進め方とDTP文字入れ」
- WIPジャパン「【DTP翻訳】カタログ翻訳で失敗しないための完全ガイド|料金、注意点、翻訳のプロが解説」
- インターブックス「カタログ・パンフレットの翻訳とは?対応分野・料金相場・依頼のコツ」
- FUKUDAI「カタログ・パンフレット翻訳サービス・料金」
- 島津インターナショナル「カタログ・パンフレットの翻訳」
- 日本規格協会 審査サービス「ISO17100(JIS Y 17100:2021)」
- 日本翻訳連盟(JTF)ウェブジャーナル「翻訳サービスの国際規格(ISO 17100)発行による翻訳業界への影響」
- EF Education First「EF English Proficiency Index 2025」:
著者:ビッグビート ASEAN推進編集部
ベトナム・タイを中心としたASEAN圏に進出、あるいはこれから進出を計画している事業会社に対し、現地でのBtoBマーケティング領域を総合的に支援する広告会社です。ASEAN圏現地での実務経験や企業支援の実績を基に、現地に根差した信頼性の高い情報発信を行っています。


