Asean Exhibitions
Electric & Power Vietnam

Exhibition outline
概要
発電技術・電気機器に特化したベトナムの国際展示会
電力需要の高まり背景に、次回開催は2026年9月
電力需要が急激している東南アジアの新興国ベトナムで、発電をめぐる最新技術や製品、企業間の交流促進などに特化した国際展示会「Electric & Power Vietnam」が2024年9月4日~6日の日程で開催された。日本を含む世界24カ国から7000人を超える技術者や研究者らが参集するなど会場は大いに沸いた。これを受け25年11月には、エネルギー政策や電力をめぐる長期ビジョン、安全保障戦略としてのエネルギーのあり方などをテーマとした姉妹大会の「VIETNAM ENERGY WEEK 2025」も開催されることが決まっている。50年までのカーボンニュートラル(炭素中立)を目指すベトナム政府とも連携を図りながら、次大会以降の盛況も目指す。

Electric & Power Vietnam

2024年9月4日~6日

ホーチミン、ベトナム

環境・エネルギー
Show Hilight
展示会のハイライト
■主催者と姉妹展示会
両展示会とも主催者は、英国に本部を置く国際的なイベント企業「インフォーマ」のベトナム拠点。16年から始まったElectric & Power Vietnamは偶数年ごとに開催され、発電技術や電気機器、配送電システム、再生エネルギー技術など電力産業の具体的な「今」にフォーカス。その紹介とビジネスマッチングに力を入れている。次回大会は26年9月の開催を予定している。
もう一方のVIETNAM ENERGY WEEKは奇数年開催を原則に、ベトナムが抱える電力問題やエネルギー政策、持続可能な電源開発、再生可能エネルギー、エネルギー効率などをテーマとする。政府、企業、研究者が集まってベトナム電力市場の「未来」を語る場として位置付ける。いずれも南部ホーチミン市の大規模展示会場「サイゴン・エキシビション&コンベンション・センター(SECC)」が会場。1年毎の交互開催による相乗効果が狙い。
また、Electric & Power Vietnamと同じ日程で、インフォーマ社が主催するDATA CENTER VIETNAM 2024とRENEWABLE ENERGY VIETNAM 2024という2つの展示会も同時開催された。前者はベトナム社会の急速なデジタル化と産業界におけるデジタル変革をめぐり、データ・センターが果たす役割が。後者は、再生可能エネルギーの持続的な活用を可能とする最新の機器と技術の紹介がそれぞれテーマ。参加企業に対しては、ワンストップの業界プラットフォームを提供することを目的としている。
Show Reports
2024年の実績
㎡の展示スペース
カ国からの出展
来場者
カ国・地域の国際パピリオン
以上の出展社
Visitor details
来場者の詳細
■ 来場者の業種
◇銀行・金融
◇土木・環境エンジニア・測量士
◇E&Mエンジニア・請負業者・コンサルタント
◇電気機器
◇EPC請負業者
◇政府および規制管理者
◇グリッド・トランスミッションマネージャー
◇ホスピタリティ
◇HVACR請負業者・設置業者
◇設置・建設・輸送
◇メーカー
◇工場・建物所有者・運営者
◇不動産開発・管理
◇出版・報道・メディア
◇再生可能エネルギー機器および部品
◇再生可能エネルギーサイト開発者・所有者・管理
◇研究開発
◇国営・公共・民間電力会社
◇国営送配電会社
◇業界団体・政府機関・学術機関
◇都市計画当局
◇給排水
■ 来場者の属性
◇代理店・販売代理店・取引
◇政府機関・電力協会・教育およびトレーニング・出版物
◇輸入・輸出
◇メーカー
◇OEM・下請け業者
◇サービス会社
◇卸売業者・小売業者
■関心が集まった製品及びサービス
- Automation & smart Solutions 36.72%
- Batteries & Chargers 17.46%
- Equipment & Maintenance 16.13%
- Cable & Cable Management Systems 15.09%
- Solar Energy 14.33%
- HVACR 13.66%
- Bio Energy 12.62%
- Components & Peripherals 12.43%
- Lighting & Equipment 11.86%
- Electric Vehicles 10.34%
- Instrumentation, Test & Measurement 10.25%
- Oil & Gas 9.96%
- Wind Energy 9.39%
- Co-Generation Equipment 9.01%
Exhibitor details
出展社の詳細
■出展社の業種
■出展者の業種
◇電力協会・教育・出版
◇自動化とスマートソリューション
◇バッテリーと充電器
◇バイオエネルギー
◇ケーブルとケーブル管理システム
◇石炭
◇コージェネレーション設備(従来型発電)
◇コンポーネントと周辺機器
◇淡水化
◇検出と保護
◇電気自動車
◇緊急対応
◇エネルギー管理システム
◇環境サービス
◇設備とメンテナンス
◇発電機生産設備
◇HVACR(Hは暖房、Vは換気、ACは空調、Rは冷凍を指す造語)
◇水力発電
◇計測機器、試験、測定
◇インバーターと周辺機器
◇照明器具
◇監視と制御
◇石油・ガス
◇安全保護機器
◇太陽エネルギー
◇地表水・地下水
◇スイッチギア、ツール、変圧器
◇電源ソリューション
◇無停電電源装置(UPS)
◇貯水
◇水輸送
◇水処理
◇風力エネルギー
Show background
展示会の背景
■ベトナムの電力事情
工業化が進むベトナムでは電力需要が急増し、30年ごろまで年10~12%の伸び率で増加するものと予想されている。政府統計によると、24年に供給された総電力量(輸入電力も含む)は前年比9.96%増の3088億キロワット時。25年はさらに増え、12%余り増加の3475億キロワット時と見込まれている。ここ数年続く猛暑からの需要量の増加や雨不足に伴う水力発電の不足分を予め織り込んでおく必要があるとしている。
政府は30年までの国の電力開発指針「第8次国家電力開発基本計画(PDP8)」の改訂作業を現在進めている。それによると、均衡ある経済発展のための電力供給の中に風力発電や太陽光発電に加えて、原子力発電と水素発電の開発などが盛り込まれる見通しだ。さらには、二酸化炭素排出量の少ない液化天然ガス(LNG)火力発電、廃棄物・バイオマス発電の導入推進も主要な改正点になるという。省エネや再エネの割合が一気に引き上げられることになる。
背後には、国を挙げて推し進められている交通網のEV化策がある。政府は30年までに都市部を走行する二輪車や四輪車といった全ての一般車両の50%と、バス・タクシーの100%をそれぞれ電動化させる計画でいる。50年には全ての車両が電動車に切り替えられる予定で、これに必要な電力量の確保が目下の緊急課題となっている。
■50年までのカーボンニュートラル実現
もう一つ、50年までの実現を目指すカーボンニュートラル(炭素中立)の存在も大きく作用している。政府は地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量を30年までに23年比9%、5億6380万トン削減させる計画でいる。温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、その排出量を「実質ゼロ」に抑えることが目標だ。このために約155億米ドルを投入する。炭素中立は「ネットゼロ」とも呼ばれる。
ここ数年、ベトナムの国土は深刻な干ばつや洪水、海面上昇などの異常気象にさらされており、気候変動対策は当地でも急務の課題となっている。そのためには温室効果ガス排出量の削減をより一層進めなければならないのだが、同時に経済成長に必要な使用電力量の増加といった相反する二つの課題を同時に解決しなければならない局面に立たせられている。
そこで登場するのが再生可能エネルギーの活用というロジックだ。伝統的な水力発電に始まり、風力発電、太陽光発電、廃棄物・バイオマス発電、原子力発電等々。現実的で効率のよい発電ポートフォリオの構築を進めていくとする。再エネへの急速な傾斜は、ベトナムという国家が経済成長を続けるうえで課された〝宿題〟であると受け止められている。
■火力はLNG発電へ
25年1月11日、ベトナムで初となるLNG火力発電所への火入れが始まり話題となった。南部ドンナイ省で建設が進むのは、LNGを燃料としたニョンチャック第3火力発電所。計画は21年から進められており、2つある発電施設の設備容量は計160万キロワット。運転開始後は年間90億キロワット時の電力供給が見込まれている。
石炭を使わないLNG火力発電は、二酸化炭素の排出量が少ないことから再エネ導入までのつなぎ役と位置付けられている。中部クアンビン省のクアンチャック第2火力発電所も当初は石炭発電所として計画されたが、24年にLNG発電へ転換。設備容量150万キロワットのガスタービン使用の発電所として、早ければ25年第3四半期(7~9月)にも建設が始まる。中部フエ市でもLNG発電所の建設計画が進んでいる。
政府は、30年までにLNG総発電容量を2240万キロワットとする目標を立てている。全電源に対する比率は14.9%。だが、財源の確保などから進捗は必ずしも芳しくはない。このため25年も石炭火力発電の割合は高いままの見通しだ。政府の試算では多くの石炭火力発電所で稼働率75%に達し、全電源に占める割合は50%前後に上ると見られている。
■ベトナム初の原発建設へ
ファム・ミン・チン首相は25年1月15日に召集された政府会合で、国内初となる原子力発電所を中南部ニントゥアン省に建設し、5年後に完成するよう指示を出した。稼動が予定される30年はベトナム共産党創立100周年に当たる記念の年。新時代の主力電源の一つが原発であることが政府によって明言された。インドシナ半島もいよいよ原発の世紀を迎える。
ニントゥアン省のトゥアンナム郡とニンハイ郡の2カ所に原発を建設する計画は09年に国会承認を受け、一度は計画が始動したものだ。この時に受注したのは第1炉がロシア、第2炉は日本。ところが11年の東京電力福島第1原発事故を受けて計画はいったん白紙に。10年数の雌伏を経て、ベトナム政府が支援を求めた先は関係の強いロシアだった。ロシアのミシュスチン首相は1月半ばにハノイを訪問。両国間で原発建設への協力で合意がなされている。
業界関係者によると、導入される発電炉は日本や中国などで採用されている1基当たり100万キロワット程度の大型のものではなく、コストの低い30万キロワット前後の「小型モジュール炉」となる可能性が高い。09年の前計画時は2カ所で総出力400万キロワットの高出力炉を予定していた。電力確保の観点から原発の採用には乗り出したものの、万が一時のリスクも取った格好だ。今後、この分野でベトナムにおける原子力産業が成長していく可能性は高い。最低でも2400人は必要とされる技術者の育成も始まっている。
■さまざまな再エネ発電を推進
ベトナム商工省は25年2月に施行される改正電力法に基づき、再生可能エネルギーと新エネルギーに対する優遇施策を盛り込んだ政令を発表する予定だ。それによると、太陽光発電と風力発電、さらにはグリーン水素やグリーンアンモニアを活用した新エネルギーについて、発電施設の建設期間中における土地使用料などを免除。運転開始後も一定期間減免するという内容。これにより、これらの再エネ割合を高めるのが狙い。
南シナ海に突き出たベトナムでは風力を活用した風力発電が盛んだ。中南部ビンディン省では独企業と組んだ洋上風力発電事業が進められている。沖合10キロメートルの岩礁に発電塔を設置し、最大で設備容量200万キロワットに対応するとしている。風力発電技術の輸出も盛んで、国営企業などがこれまでに台湾やシンガポール、ラオスなどでの発電事業に乗り出している。
廃棄物を発電に使用するという取り組みも進んでいる。北部バクザン省では24年末、現地企業が「熱生化学技術」を使って固形廃棄物をエネルギー転換する新工場を建設。試運転を始めている。1日当たり150トンが処理できるとされ、70トンのジメチルエーテルやエタノールに転換できるという。運営費も1トン当たり15万~25万ドン(約900~1500円)と格安。最大の特徴は処理過程で、ガスや灰、廃水が発生しないという点だ。すでに米国で特許も取得。今後の拡大が期待されている。
農業残渣などの植物由来の廃棄物を使用したバイオマス発電も盛んだ。25年2月には南部ハウザン省で日系企業も出資した発電所が商業稼働の見通し。出力は2万キロワット、一般家庭約9万3000世帯分に相当する。バイオマス発電をめぐっては、政府が直接電力買い取り契約の適用を検討している。実現すれば多様な再エネの利用が見込めることになり、利用も一段と進むと読む。