Home 9 ブログ 9 電子・ハイテク産業が集結!ベトナム北部バクニン省が注目される理由

はじめに

ベトナムは近年、電子・ハイテク産業の生産拠点として注目されています。

同国の輸出額トップ3には、コンピュータ電子製品、電話機、機械設備(それぞれ部品を含む)がランクインしており、過去10年で約10倍に拡大しました。 これらの輸出の約7割は外資系企業によるものであり、多くの電子・ハイテク産業の企業がベトナムに進出し、製造拠点を構えています。

こうした企業はどのような地域に進出しているのでしょうか。これから新規製造拠点を探す同業界の企業にとって、有力な進出先はどこなのでしょうか。

本記事では、首都ハノイ郊外に注目し、サムスンやCanonといった大手電子企業の工場が集積する「バクニン省」をピックアップ進出メリットや現地の工業団地の状況、今後の見通しを詳しくまとめています。

また、2025年11月には、現地で製造業専門の大規模展示会が開催予定です。実際に現地を訪れ、情報収集する絶好の機会となります。

まずは本記事を通じて、バクニン省のポテンシャルをぜひご確認ください。

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バクニン省の特徴から紐解く進出メリット

実はベトナム国内で最も面積が小さいバクニン省。

しかし、小さいながらも大規模な工業団地が広がり、経済的に大きく発展しています。

経済成長の状況は、数値からも明らかです。2021年のデータによると、バクニン省のGRDP(域内総生産:Gross Regional Domestic Product)成長率は6.6%で、ホーチミン市、ハノイ市、ビンズオン省*1、ドンナイ省に次いで全国第5位。1人当たりGRDPは145百万VNDと全国平均(約95百万VND)を大きく上回り増加しています。これは、人口が増加傾向にある中でも達成されており、現地の経済が活性化している証拠と言えるでしょう。更に、近年FDI(外国直接投資)の金額はトップクラスを維持しており、最新の情報では、2024年はFDI総額で約51.2億米ドル(対前年2.8倍、全国総額の13.4%)。2025年1月時点で、対前年同期の6倍、全国の総投資額の32.2%を占める金額が同省に集結しています。

これほどの経済成長が実現できているのはなぜでしょうか。

それは、バクニン省の立地条件から始まり、国内外の投資によるインフラ・工業団地の整備、行政によるビジネス環境の改善が背景にあります。

そして決定的な要因はサムスンの進出です。2009年に同社がバクニン省にスマートフォン工場の稼働を開始し、関連サプライヤーも次々と進出。バクニン省に電子・ハイテク産業クラスターが出来始めたのです。

以下より、バクニン省の特徴を具体的に整理します。

*1 ビンズオン省についての過去の記事はこちら

① 優れた立地と交通インフラ

バクニン省は、首都ハノイの北部玄関口に位置し、ハノイまでは車で1時間弱。ハノイ・ハイフォン・クアンニンといった他の経済的に発展しているエリアとも近接しています。

この立地を活かし、道路・鉄道・水路の主要交通網が集中。国内外への移動や物流の面でコストメリットが高い地域です。

さらに、中国に近い点も重要です。中国での人件費高騰に伴い、別拠点を検討する企業にとって、中国国内のサプライヤーからの部材調達が容易なバクニン省は魅力的な選択肢となっています。

バクニン省の主要交通網

  • 国道1A号線:ハノイ – バクニン – ランソン(中国国境)を結ぶ主要道路
  • 国道18号線:ノイバイ国際空港 – バクニン – ハロン湾をつなぎ、国際物流に最適
  • 国道38号線:バクニン – ハイズオン – ハイフォン港と結び、海上輸送もスムーズ
  • 鉄道網:バクニンを通じてランソンや中国と接続
  • 水運ネットワーク:カウ川、ズオン川、タイビン川を利用し、地域の港湾と連携

② 積極的な外資系企業誘致

2000年代初頭までバクニン省は農業中心の地域でした。しかし、上記の立地メリットを活かし、日本政府をはじめとする支援や国内外の投資によって、道路網や港湾、工業団地の整備が進行。2000年代後半には産業インフラが大幅に改善されました。

そして、行政の企業誘致政策により、多くの外資系企業が進出しています。以下、いくつか具体的な政策をまとめます。最新の状況については、現地の公式サイト等をご確認ください。

投資優遇政策

  • 法人税の減免:特定の条件を満たす企業に対し、一定期間の法人税免除や減税措置を適用
  • 土地使用料の免除・減額:工業団地内に進出する企業に対し、土地使用料の免除や減額を実施
  • 輸入関税の免除:生産設備や原材料の輸入時に関税の免除措置を提供

③ サムスンの進出とその影響

バクニン省の経済成長を牽引しているのが、サムスンの製造拠点です。サムスンはベトナムにとって最大の投資家。政府からも優先的に支援を受けており、現地の経済成長が加速していると考えられます。

サムスンによる主な影響

  • サプライチェーンの形成:2014年には25社だった一次サプライヤーが、2023年には306社に増加。現地サプライヤーの活用により、ベトナム国内企業の競争力向上にも貢献。
  • 雇用創出:関連企業も含めると数十万人規模の雇用創出に寄与。また、CSR活動の一環として、「Samsung Hope School」を設立し、現地の小学生・中学生にハイテク産業時代に適した学習機会を提供。現地の教育レベルアップにも貢献している。
  • インフラ整備の加速:工場進出に伴い、道路・電力・水道などのインフラが急速に整備され、バクニン省はベトナム国内でも高い都市化率(60%)を誇る地域に。

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バクニン省の工業団地

前述のバクニン省の特徴より、外資系企業はバクニン省を進出先として有力候補と考えるようになりました。

以下より、主な工業団地や特徴をまとめます。

主要な工業団地とその特徴

  1. イエンフォン工業団地(Yen Phong Industrial Park)
    • 主な入居企業:Samsung Display、Samsung Electronics、Foxconn など
    • 特徴
      • バクニン省で最大規模の工業団地
      • 電子・電機産業を中心に、多くの外資系企業が集積
      • ハノイ・ノイバイ国際空港へのアクセスが良好
  2. クエボー工業団地(Que Vo Industrial Park)
    • 主な入居企業:Canon、日系・韓国系の製造業が多数進出
    • 特徴
      • 部品製造、精密機械、物流など多様な業種が集積
      • ベトナム国内外の工場と効率的な連携が可能
  3. VSIPバクニン(VSIP Bac Ninh)
    • 主な入居企業:Panasonic、PepsiCo など
    • 特徴
      • シンガポールとベトナムの共同開発による国際水準の工業団地
      • 高品質なインフラと環境に配慮した設計で、外資系企業に人気
      • 工業団地内に生活関連施設も整備され、従業員の働きやすい環境を提供

    このほかにも、トゥアンタイン工業団地、ティエンドゥ工業団地など、バクニン省内には多くの選択肢があり、企業のニーズに応じた進出が可能です。

    *参考 123

    バクニン省の今後

    上記から、バクニン省への進出は魅力的に思える一方で、「もう遅い」と感じる企業もあるかもしれません。しかし、以下の最新情報を踏まえると、バクニン省は依然として成長ポテンシャルの高い地域と言えるでしょう。

    また、今後はハイテク産業への投資をさらに強化し、環境に配慮した工業団地の開発にも重点を置くことが見込まれます。

    • Gia Binh国際空港の建設予定

    2025年2月、ハノイ市は市中心近郊に建設予定の空港と市内をつなぐ50kmの道路建設計画を承認しました。この空港はバクニン省に建設が予定されています。

    また、今回承認された道路は、ハノイ・タイグエン高速道路やハノイの多くの地区を通る環状3号線と重複する区間が含まれており、道路沿いの都市開発も計画されています。

    *参考 1

    • サムスンの継続的な投資

    AI、半導体、デジタルトランスフォーメーションなどの新分野への投資を含め、今後もベトナムでの開発・製造は拡大される見込みです。2025年2月のニュース記事でも、Pham Minh Chinh首相とサムスンCEOの対話が取り上げられており、今後の追加投資やベトナム政府の支援への期待について協議が行われました。

    今年の旧正月明けには、サムスン・ディスプレイの12億米ドル規模の新規プロジェクトに関して、バクニン省で投資証明書が発行されました。ベトナム最大の投資家であるサムスンの動きは、バクニン省のさらなる発展に寄与する可能性が高いと言えます。

    *参考 12

    展示会の紹介

    バクニン省の成長の勢いを直接体感し、情報収集を進めたい企業には、「Vietnam Industrial Manufacturing Fair(VIMF)」への参加をおすすめします。
    2025年11月5日〜7日に開催されるVIMFは、国内最大級の産業展示会であり、「工業団地周辺での開催」をコンセプトに掲げ、これまで有名工業都市で19回開催されてきました。
    昨年の展示会では、国内外から多数の来場者が集まり、経営層、エンジニア、購買担当者が新たなビジネスチャンスを求めて活発に交流しました。出展企業には、日系の有名企業(Yamaha Robotics、富士フイルム、エプソン)や、ベトナム、台湾、中国、シンガポールの企業も含まれていました。昨年の展示会の様子については、過去の記事をご覧ください。
    なお、弊社は日系企業向けの展示会出展サポートを専門とする代理店として、主催者(OMG EVENTS MANAGEMENT COMPANY LIMITED)と契約しています。展示会への出展や参加に関心のある企業様を全面的にサポートいたしますので、お気軽にお問い合わせください。

    展示会の詳細:https://asean.bigbeat.co.jp/blog/asean-exhibition-vimf/

    まとめ

    バクニン省は、電子・ハイテク産業の一大拠点として、外資系企業にとって非常に魅力的な進出先です。優れた立地、インフラの整備、政府の優遇政策、そしてサムスンを中心としたサプライチェーンの発展により、さらなる成長が期待されています。
    進出を検討する企業は、早めの情報収集や現地視察を行うことをおすすめします。

    VIMF