Home 9 ビジネスコラム 9 ベトナムのデータセンター市場の現状と今後の見通し|投資動向・主要事業者・制度
ベトナム 繊維産業

東南アジアでも特に伸びしろの大きい市場として注目を集めているのが、ベトナムのデータセンター市場です。現地の経済紙VnEconomyの報道(2026年4月)によれば、国内のデータセンターの稼働容量は約104メガワット。2030年には約600メガワットへ、5〜6倍に拡大すると見込まれています。

2025年から2026年にかけては、国内通信大手のViettelによる140メガワット級の施設の着工をはじめ、シンガポールやUAEの事業者による大型案件がホーチミン市を中心に相次ぎました。外資規制の緩和が参入を後押しする一方、データ保護や国内保存に関する制度への対応も重要になっています。

この記事では、ベトナムのデータセンター市場の現状を数字で整理し、主要な事業者、大型案件の動き、立地の特徴、制度と事業環境の課題、日本企業にとっての商機までを、ベトナム現地メディアや国際機関、調査会社の公表データをもとに見ていきましょう。

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この記事でわかること

  • ベトナムのデータセンターは稼働容量約104メガワットで、2030年には約600メガワットへの拡大が見込まれている
  • 市場はViettel・VNPT・FPT・CMCなど国内通信大手が中心で、シンガポール系やUAE系の事業者が大型案件で参入している
  • 新規投資はホーチミン市のハイテクパークやクチ地区に集中し、AI向けの大型施設が相次いで計画されている
  • 外資規制の緩和が追い風となる一方、電力の確保や電気料金、海底ケーブル障害といった課題も抱えている

ベトナムのデータセンター市場の現在地

まずは、ベトナムのデータセンター市場の規模を表す数字を、それぞれの定義に注意しながら確認していきましょう。

稼働容量と2030年に向けた拡大の見通し

ベトナムの経済紙VnEconomyが2026年4月に報じた業界会合「Data Center & Cloud Infrastructure Summit 2026」(国内通信大手Viettelのデータセンター子会社Viettel IDCが主催)の内容によると、ベトナムのデータセンターの稼働容量は約104メガワットで、2030年には約600メガワットと、現在の5〜6倍に拡大すると見込まれています。

同じ会合では、東南アジアのデータセンター市場が年約14%と、世界平均の8.8%を上回るペースで成長するとの見通しも示されました。現時点の容量は周辺国と比べて小さいものの、これから供給が本格的に増えていく段階にあるといえるでしょう。

容量の拡大を支えるのは、国内外の事業者による大型施設の建設です。Viettel単独でも、2030年までに24拠点・合計560メガワットの体制を目指す方針を示しています。ただし、個社の計画値と市場全体の予測は、そのまま比較できません。計画の実現時期や容量の定義を確認する必要があります。

調査機関ごとに異なる市場規模の数字

データセンター市場の「規模」は、何を数えるかによって数字が大きく変わります。代表的な数字を、定義と出典とあわせて整理すると次のとおりです。

指標 数値 定義・出典
稼働容量 約104メガワット(2030年に約600メガワットの予測) 国内で稼働するデータセンターの容量。Viettel IDC主催の業界会合での推計(VnEconomy、2026年4月)
稼働施設数と電力容量 41施設・合計221メガワット 稼働中の施設の電力容量。米国商務省国際貿易局の市場情報(2025年8月)
投資額ベースの市場規模 2025年10.4億米ドル(2031年31.8億米ドル) IT機器、電力・冷却設備、建設などへの投資額。年平均20.48%成長の予測(Arizton調査、Research and Markets掲載、2026年1月)
建設中・計画中の容量 500メガワット超(2025年9月時点) 今後供給される予定のパイプライン。同上

容量の数値は、集計時点や対象施設、IT機器向けの電力容量か施設全体の電力容量かによって変わります。上表の104メガワットと221メガワットは集計条件をそろえられないため、直接比較できません。投資額と売上高、稼働済みと計画中の容量も区別して確認しましょう。

需要を押し上げるデジタル経済の成長

データセンターの需要の土台にあるのは、ベトナムのデジタル経済の拡大でしょう。Google・Temasek・Bain & Companyによる調査「e-Conomy SEA 2025」では、ベトナムのデジタル経済の規模は2025年に390億米ドル、前年比17%増と推計されました。

その3分の2を占めるのがEC(電子商取引)で、オンラインエンターテインメントや配車・フードデリバリー、オンライン旅行もそろって2桁成長を続けています。約1億人の人口を抱え、若い世代を中心にスマートフォンでのサービス利用が広がっていることが背景にあるでしょう。

こうした消費者向けサービスに加えて、企業のクラウド移行や行政のデジタル化、生成AIの利用拡大も需要を押し上げています。デジタル経済の成長に対して国内のデータ処理基盤はまだ小さく、そのギャップが投資を呼び込む原動力となっています。ベトナムのIT産業の全体像はベトナムのIT産業に関する記事もあわせて参考にしてください。

市場を動かす主要プレイヤー

ここでは、ベトナムのデータセンター市場を動かす事業者を、国内の通信大手、海外の事業者・クラウド事業者、日系企業の三つに分けて整理します。

国内通信大手が中心の市場構造

ベトナムのデータセンター市場は、長く国内の通信・IT大手が主役を担ってきました。Research and Marketsに掲載された報告書(2026年4月)では、主要な既存事業者としてViettel IDC、FPT Telecom、VNPT、CMC Telecomの4社が挙げられています。

  • Viettel:国防省傘下の通信最大手。国内で15拠点・合計87メガワットのデータセンターを運営し、約23万台のサーバーを抱える
  • VNPT:国営の通信大手。全国の通信網と一体でデータセンターを展開する
  • FPT Telecom:民間IT大手FPTグループの通信会社。ホーチミン市のタントゥアン地区などで施設を運営する
  • CMC Telecom:民間IT大手CMCグループの通信会社。サイゴンハイテクパークでハイパースケール級の施設を計画する

なかでもViettelは、2025年4月にホーチミン市クチ地区で140メガワット級の施設を着工するなど、国内最大手として市場の拡大を主導する立場にあります。また行政分野では、公安省が2025年8月にハノイのホアラック・ハイテクパークで「国家データセンター1号」を開所。約1,300ラックを備えた施設で、東南アジアでも最大級とされる国家レベルのデータセンターとして注目を集めました。

海外事業者とクラウド事業者の参入

2024年以降は、海外の事業者の参入が目立つようになりました。主な動きを事業者の区分ごとに整理しておきましょう。

区分 主な事業者 ベトナムでの動き
シンガポール系 STT GDC(VNGとの合弁) ホーチミン市タントゥアン地区で既存施設(9.6メガワット)に加え、最大60メガワットの2棟目を計画
シンガポール系 Sembcorp Development(BB Holdingsとの合弁Starmason) サイゴンハイテクパークで初期60メガワット、最大90メガワットの施設を計画
シンガポール系 Evolution Data Centres ほか サイゴンハイテクパークで52メガワットの施設を計画
UAE系 G42(FPT・VinaCapital・Viet Thaiと協力) ホーチミン市で最大約20億米ドル規模のハイパースケール施設を計画
米国系クラウド AWS(アマゾン ウェブ サービス) 2026年6月にハノイでLocal Zone(小規模なクラウド拠点)の提供を開始

特にシンガポール系の事業者の存在感が大きく、ホーチミン市のハイテクパークに大型案件が集まっています。クラウド分野では、AWSのハノイLocal Zoneがデータを国内に保存できる仕組みを備えた点が注目されました。一方、ベトナム国内に本格的なクラウドリージョン(大規模なデータセンター群)を置く米国系の大手はまだありません。ハイパースケーラーの本格進出は、今後の市場拡大を左右する大きな要素になるでしょう。

日系企業の関わり

日系では、NTTグローバルデータセンターズが現地IT企業QD.TEKとの合弁で、ホーチミン市のサイゴンハイテクパークに「ホーチミン1データセンター」を整備しました。5階建ての建物にIT負荷6メガワット・約1,200ラック相当のサーバールームを備え、データセンターの信頼性基準「Tier III」を満たす設計。

KDDIは、FPTグループのFPT IS、三井物産のベトナム法人との合弁「テレハウス・ベトナム」を通じて、2010年からハノイでデータセンターを運営しています。日本の品質基準で運営される施設として、現地に進出する日系企業のシステム基盤を長く支えてきた存在といえるでしょう。

AI分野では、住友商事とSBIホールディングスが2025年4月、FPTのAI子会社であるFPTスマートクラウド・ジャパンにそれぞれ20%を出資しました。日系企業は施設の運営だけでなく、ベトナム企業との資本提携を通じてAI・クラウド分野の連携も深めています。

大型案件に見る投資の行方

2025年から2026年にかけて発表・承認された大型案件から、投資がどこへ向かっているのかを読み取っていきます。

2025〜2026年に動き出した主な案件

ベトナムで2025〜2026年に動き出した主なデータセンター案件は、次のとおりです(投資額・規模は事業者や当局が公表した計画値)。

事業者 所在地 時期 投資額(公表値) 規模(公表値)
Viettel ホーチミン市クチ地区(タンフーチュン工業団地) 2025年4月に着工 非公表 最大140メガワット・約1万ラック
AIC・KBC(SGI-HCMキャンパス) ホーチミン市クチ地区(タンフーチュン工業団地) 2026年3月に契約 約21億米ドル 200メガワット(第1期50メガワット)
G42・FPT・VinaCapital・Viet Thai ホーチミン市(ハイテクパーク) 2026年2月に枠組み合意 最大約20億米ドル ハイパースケール級
Evolution Data Centres ほか サイゴンハイテクパーク 2026年4月に投資証明書 約5.1億米ドル 52メガワット
Starmason(Sembcorp・BB Holdings) サイゴンハイテクパーク 2026年3月に投資証明書 約4.8億米ドル 初期60メガワット(最大90メガワット)
CMC サイゴンハイテクパーク 2025年6月に投資承認 2.5億米ドル超(第1期) 初期30メガワット(将来120メガワット)
G-Group ハノイ(ホアラック・ハイテクパーク) 2026年7月に投資証明書 約3億米ドル 第1期20メガワット(最大30メガワット)

Viettelの施設は、国内で初めて100メガワットを超えるハイパースケール級のデータセンターで、東南アジアでも上位10位に入る規模とされています。AICとKBCのSGI-HCMキャンパスは、将来的に最大10万基のGPUを収容できるAI特化型の計画として発表されました。数年前まで10メガワット前後の施設が中心だった市場に、50〜200メガワット級の案件が一気に並んだことが、この2年間の大きな変化ではないでしょうか。

表には、枠組み合意・投資承認・着工など、進捗の異なる案件が含まれます。公表容量は全体完成時の計画値を含むため、第1期の稼働予定と全体の完成予定を分けて確認する必要があります。計画や完成時期は変更される可能性があります。

案件から読み取れる三つの傾向

一つ目の傾向は、AI向けの施設の増加。SGI-HCMキャンパスは第1期50メガワットで約2万8,000基のGPUに相当する「AIファクトリー」とされ、CMCやG-Groupの案件も、AIの学習・推論や高性能計算を想定した施設として計画されています。Viettelの施設でも、一部のラックで1台あたり最大60キロワットの電力密度に対応する設計が採られています。

二つ目は、海外事業者が参加する大型案件の増加です。シンガポール系の事業者やUAEのG42が、国内の大手企業や投資会社と組む形で大型案件を主導しています。国内企業が用地や許認可、顧客基盤を、海外企業が資金や運営ノウハウを持ち寄る合弁型の案件が多い点も見逃せません。

三つ目は、ホーチミン市への集中です。表に挙げた案件の多くが、サイゴンハイテクパークやクチ地区で建設・計画が進んでいます。新規投資の中心は、ベトナム経済の中心地であるホーチミン市にあるといえるでしょう。

立地から見る市場の構造

データセンターの立地には、顧客の分布や用地、電力、通信の事情が反映されます。ここでは、南部のホーチミン市と、北部のハノイ・地方都市に分けて特徴を見ていきましょう。

新規投資が集まるホーチミン市

Ariztonの調査報告書(Research and Markets掲載、2026年1月)は、ホーチミン市を「国内で最も選ばれるデータセンターの立地」と位置づけており、既存13施設に加え12施設が計画されています。

  • サイゴンハイテクパーク:市の東部に位置する先端技術の集積地。NTTの施設が立地し、CMC、Starmason、Evolutionなどが新規施設を計画
  • クチ地区(タンフーチュン工業団地):市の北西部に位置し、中心部から約25キロ。ViettelやSGI-HCMキャンパスの大型施設の建設・開発が進む
  • タントゥアン地区:市の南部に位置する輸出加工区。FPT TelecomやSTT GDC・VNGの施設が立地する

ホーチミン市は企業の本社や外資系企業が集まる経済の中心地で、顧客に近い立地が求められる企業向けのサービスに適しています。まとまった用地を確保できるハイテクパークや工業団地があることも、大型施設が集まる理由です。市当局も投資証明書の交付や専門チームの設置で大型案件を後押ししている点は見逃せません。2025年7月にホーチミン市へ編入された旧ビンズオン省地域にも、既存のデータセンターが立地しています。

ハノイと地方都市の役割

首都ハノイは、政府機関や金融機関が集まる北部の拠点。郊外のホアラック・ハイテクパークには公安省の国家データセンター1号があり、2026年7月にはG-Groupがオマーンの通信会社系企業と組むAI対応施設「G-Campus」の投資証明書を取得しました。テレハウス・ベトナムの施設やAWSのLocal Zoneがハノイにあることも、北部の拠点としての重要性を物語っているでしょう。

中部のダナンや北部のタイグエン省でも、新たな計画が発表されています。Create Capital VietnamとHaimaker.aiの合弁会社Vietnam Data Genは、総額約10億米ドルのAI向けデータセンター網の構想を発表し、第1期をダナン・ハイテクパークに建設する計画です。北部のタイグエン省では、2025年6月に韓国系企業による約2億米ドル・20メガワットの案件の契約も報じられています。

ホーチミン市とハノイは南北に1,000キロ以上離れているため、南北の2大都市に拠点を分けることは、災害や障害に備えたバックアップの面でも意味があります。都市ごとの特徴は、ベトナムの主要都市を比較した記事もあわせてご覧ください。

制度の整備と事業環境の課題

市場の拡大を後押しする制度の変化と、事業者が直面している課題の両面を確認します。

外資100%の解禁とデータ関連法の整備

ベトナムでは、ここ数年でデータセンターに関わる法制度が大きく変わりました。主な制度を整理すると、次のとおりです。

  • 改正電気通信法(データセンター関連規定は2025年1月施行):データセンターサービスへの外資100%出資を認める
  • 新サイバーセキュリティ法(2026年7月施行):通信・インターネットサービスなどを提供する国内外の対象企業に、利用者データの国内保存や保護措置を求める
  • 個人データ保護法(2026年1月施行):個人データの国外移転に関する影響評価などを規定。国外移転違反の組織への罰金上限は、前年売上高の5%または30億ドンのいずれか高い額
  • デジタル技術産業法(2026年1月施行):AIデータセンターなどへの投資を、税制や土地利用の優遇の対象に位置づける

外資100%の解禁によって、海外の事業者が単独でデータセンター事業を始められるようになりました。データの国内保存義務は、対象企業の国内サーバー需要につながります。一方、データ保護や国外移転の手続きへの対応も必要です。ベトナムの外資規制の全体像はベトナムの外資規制を解説した記事で詳しく紹介しています。

電力の確保と電気料金をめぐる課題

データセンターの安定運用には、大量の電力を途切れなく確保することが欠かせません。タイの英字紙The Nationが2026年9月に伝えたところでは、ベトナム商工省の評価として、データセンターやAI、半導体製造、交通の電化による需要増と発電・送電網の整備の遅れから、2030年に約610億キロワット時の電力が不足するおそれがあるとのことです。

こうした状況を受け、政府は再生可能エネルギーの活用を促す制度整備を進めています。発電事業者と大口需要家が電力を直接売買できるDPPA(電力直接購入契約)の制度は、2025年3月の政令57号で整備され、2026年6月の政令243号では、データセンターの運営に使う電力の購入が、送電網を介して取引する仮想型DPPAの対象として明記されました。

一方で、電気料金をめぐる問題も表面化してきました。2026年9月には、ホーチミン市の電力会社がデータセンターに「製造業」ではなく割高な「事業用」の料金を適用し、未払い分を理由に送電停止を予告。これを受けて、ViettelとCMCが商工省と科学技術省に対応を求めています。科学技術省によれば、この区分の変更による電気代の増加は50%以上。電気代は運営コストの約半分を占めるため、料金区分の扱いは事業の採算に直結する課題です。電力事情の背景はベトナムの電力不足に関する記事もご覧ください。

海底ケーブルに頼る通信の冗長性

ベトナムは国際通信の多くを8本の国際海底ケーブルに頼っています。2026年8月25日には、日本と東南アジアを結ぶSJC2やAAE-1の一部が相次いで故障し、報道によれば8本のうち4本に障害が発生して国際通信容量の約30%が影響を受けました。

こうした障害は過去にも繰り返されてきたため、国際的なデータセンター事業者にとって通信の冗長性は懸念材料の一つでしょう。政府は2030年までに少なくとも10本の新たな海底ケーブルを整備する方針を示しており、ベトナムとシンガポールを結ぶ新ケーブル「VTS」も2027年の運用開始を予定しています。

2025年には、シンガポールまでを陸上で結ぶ光ファイバー網(VSTN)もベトナム側が一括して管理できる体制が整いました。海底ケーブルの増設と陸上ルートの確保が進むほど、データセンター立地としての信頼性は高まるでしょう。

日本企業にとっての商機と市場の見方

最後に、データセンターの建設・運営が生み出す周辺需要と、近隣国と比べたベトナムの位置づけ、情報収集の方法を整理します。

データセンターが生み出す周辺需要

データセンターへの投資は、建物の建設だけでなく、電力・冷却・通信・運用保守など幅広い分野の需要を生み出します。前述した大型案件の特徴を踏まえて、日本企業が関わりやすい分野を整理すると次のとおりです。

分野 需要の背景 想定される取引機会
受変電・電力設備 100メガワット級の施設が増え、安定した受電と冗長化が必要になる 変圧器、配電盤、UPS(無停電電源装置)、非常用発電機
冷却 AI向けGPUの導入で、ラックあたりの電力密度が高まる 液冷システム、空調設備、熱交換器
再生可能エネルギー DPPAの対象にデータセンター向けの電力購入が明記された 太陽光・風力の電源開発、電力購入契約の組成支援
建設・設計 ハイテクパークや工業団地で大型案件の着工が続く 設計コンサルティング、建設・施工管理、建材
運用・保守 稼働施設の増加で、Tier III以上の品質を保つ運用が求められる 監視システム、保守サービス、運用人材の育成
通信・ネットワーク 海底ケーブル障害を受けて、通信の冗長化が課題になっている 光ファイバー、ネットワーク機器、接続サービス

Ariztonの調査報告書(Research and Markets掲載)によると、ベトナムのデータセンターの建設費は1メガワットあたり600万〜800万米ドルで、シンガポールやインドネシア、マレーシアより低い水準です。施設の数が増えるほど、建設時の設備需要だけでなく、稼働後の保守や更新の需要も継続的に生まれる点が、部品・装置・サービスを手がける日本企業にとっての魅力といえます。

ASEANにおけるベトナム市場の特徴

ASEANのデータセンター市場では、用地や電力に制約のあるシンガポールに代わる投資先として、マレーシアのジョホール州やタイの東部経済回廊が大型案件の受け皿になってきたといえるでしょう。タイについては、市場調査会社BMIの分析として、2026年第2四半期時点の稼働容量216メガワット、建設中・計画中944メガワットという数字が報じられています。

国ごとに集計の定義や時点が異なるため、ここで挙げた容量だけで市場の大小は判断できません。ベトナムでは、約1億人の人口と成長するデジタル経済が国内需要を支えています。比較的低い建設費も投資先としての魅力ですが、今後の拡大には電力と通信の課題への対応が欠かせません。

ベトナムは、国内需要の拡大と大型施設への投資が並行して進む市場と位置づけられます。タイとベトナムの事業環境の違いについては、ベトナムとタイの違いを比較した記事もご覧ください。

現地での情報収集と取引先づくり

変化の速い市場で商機をつかむには、現地の一次情報に継続的に触れることが重要です。VnExpress International、VnEconomy、Vietnam Newsなどの現地メディアは、投資証明書の交付や着工のニュースをいち早く伝える情報源として役立つでしょう。

業界関係者と直接つながる場としては、展示会やカンファレンスが有効です。2026年4月にはViettel IDCが主催する「Data Center & Cloud Infrastructure Summit 2026」が開かれ、事業者や投資家が市場の見通しを議論しました。電力設備や冷却装置、建設資材を扱う企業であれば、VIMFやMTA Vietnamといった製造業・設備分野の展示会も、現地の調達担当者や施工会社と出会う機会になるでしょう。

データセンターの案件は、国内大手と海外事業者の合弁で進むものが多く、発注先の選定では実績や信頼関係が重視されます。展示会やセミナーは、自社の技術を紹介し、現地企業の調達条件や採用基準を把握する場として活用できます。ベトナムの展示会の全体像は、ベトナムの展示会をまとめた記事を参考にしてください。

よくある質問

Q. ベトナムのデータセンター市場の規模はどのくらいですか

A. 指標によって異なります。稼働容量は約104メガワット(2026年4月の業界会合での推計)で、2030年には約600メガワットに拡大すると見込まれています。投資額ベースの市場規模は、2025年の10.4億米ドルから2031年には31.8億米ドルに拡大すると予測されています。

Q. ベトナムでデータセンターを運営している主な企業はどこですか

A. 国内のViettel IDC、VNPT、FPT Telecom、CMC Telecomが中心です。海外ではシンガポールのSTT GDCが施設を運営し、Sembcorpなども新規施設を計画しています。日系ではNTTグローバルデータセンターズやKDDI系のテレハウス・ベトナムが施設を運営しています。

Q. 外国企業もベトナムでデータセンター事業を始められますか

A. はい。2025年1月に施行された改正電気通信法の関連規定により、データセンターサービスへの外資100%出資が認められています。ただし、データの国内保存や国外移転に関するルールがあるため、事業計画の段階で現地の法律専門家に確認することをおすすめします。

Q. データセンターはベトナムのどこに多いですか

A. 既存・新規ともにホーチミン市とハノイに集中しています。特に新規の大型案件は、ホーチミン市のサイゴンハイテクパークやクチ地区に集まっています。中部のダナンでもAI向けの計画が発表されています。

Q. ベトナムのデータセンター市場の課題は何ですか

A. 主な課題は電力と通信です。2030年に向けた電力不足のおそれや、データセンターへの電気料金区分の扱い、国際海底ケーブルの障害による通信の不安定さが指摘されています。政府は再生可能エネルギーの直接購入制度や新たな海底ケーブルの整備で対応を進めています。

ベトナムでの展示会出展を商談につなげるには

ベトナムで展示会への出展を検討する際は、データセンター事業者や設計・施工会社など、自社が接点を持ちたい相手が来場するかを確認しましょう。

来場者の業種や過去の出展企業を調べ、自社の製品・サービスに合う展示会を選ぶことが重要です。

出展前の商談設定から会期後の技術説明・見積もり対応まで計画しておくと、獲得した接点を具体的な提案につなげやすくなります。

まとめ

ベトナムのデータセンター市場は、稼働容量約104メガワットから2030年に約600メガワットへの拡大が見込まれる成長市場といえるでしょう。市場はViettelをはじめとする国内通信大手が中心で、シンガポール系やUAE系の事業者もホーチミン市を中心に大型案件を相次いで打ち出しました。

外資規制の緩和が参入を後押しする一方、データ関連法への対応や、電力の確保、電気料金の扱い、海底ケーブルの障害といった課題もあります。こうした課題への対応が、今後の成長の度合いを左右するでしょう。

日本企業にとっては、施設の運営だけでなく、電力設備や冷却、建設、運用保守などの周辺分野にも取引の機会が広がっています。現地の報道や展示会を通じて情報を集め、案件が動く前から現地企業との関係を築いていきましょう。

株式会社ビッグビートは、海外展示会出展のサポートをしています。特に、タイやベトナムに現地法人を有しており、出展企画の立案から展示ブースの設営、コンパニオンをはじめとする運営スタッフの手配や管理に至るまで、日本の高い品質基準を維持したまま、現地からの迅速なサポートを提供することが可能です。

この記事のまとめ

  • ✓ベトナムのデータセンターは稼働容量約104メガワットから、2030年に約600メガワットへの拡大が見込まれています
  • ✓国内通信大手に加えて海外事業者の参入が進み、大型案件はホーチミン市に集中しています
  • ✓電力・通信の課題も踏まえつつ、周辺分野の商機を現地の展示会などで探っていきましょう

著者:ビッグビート ASEAN推進編集部

ベトナム・タイを中心としたASEAN圏に進出、あるいはこれから進出を計画している事業会社に対し、現地でのBtoBマーケティング領域を総合的に支援する広告会社です。ASEAN圏現地での実務経験や企業支援の実績を基に、現地に根差した信頼性の高い情報発信を行っています。