Home 9 ビジネスコラム 9 ベトナム自動車市場の現状と展望|VinFast・日系企業・規制の最新動向
ベトナム 農業

ベトナムの自動車市場は、長らく二輪車が中心だった構造から、四輪車と電気自動車(EV)が急速に存在感を増す新しい段階に入っています。経済成長と中間層の拡大を背景に、新車販売は着実に伸び続けており、地場メーカーVinFastを軸としたEVシフトが市場の主役を書き換えつつあります。

この記事では、ベトナムの自動車市場の全体像から、日系メーカー・VinFast・中国勢の競争環境、政府によるEV政策や規制の最新動向、そして今後の展望までを、公開データに基づいて整理して解説します。ベトナムへの進出やビジネスを検討している方が、市場の現在地を正しく理解できる内容です。

この記事でわかること

  • ベトナム自動車市場の販売台数の推移と最新の市場規模
  • 日系・VinFast・中国系メーカーの競争環境とシェアの変化
  • 政府が進めるEVシフトと優遇策・規制の最新動向
  • ベトナム自動車産業が抱える課題と今後の展望
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拡大を続けるベトナムの自動車市場の現状

ベトナムの自動車市場は、二輪車優位という独特の構造を持ちながらも、四輪車の販売が急拡大する段階にあります。まずは市場規模と生産・輸入の全体像を確認していきましょう。

新車販売台数の推移と市場規模

ベトナムの新車販売台数は、統計のカバー範囲によって数値が変わる点に注意が必要です。ベトナム自動車工業会(VAMA)が公表した2024年の新車総販売台数は約34万142台で、前年から12.6%増加しました。

一方、日本貿易振興機構(JETRO)が2025年に公表したレポートでは、VAMA非加盟の現代タインコンやVinFastの販売を合算し、2024年の国内新車販売を49万台超と推計しています。VAMAベースで約34万台、実勢に近い推計では約49万台という二つの見方が存在する点を理解しておくことが、市場分析の第一歩です。

いずれの統計も前年比で2桁前後の成長を示しており、数年スパンで見ればベトナムの自動車販売が着実に増加してきたことは、多くのデータソースで一致しています。

国内生産と輸入車のバランス

ベトナムの自動車市場では、国内組立車と完成車輸入がほぼ拮抗している点が特徴です。VAMA統計によれば、2024年の国内組立(CKD)車の販売は約17万2,730台、完成車輸入(CBU)は約16万7,412台で、輸入車がほぼ半分を占める構造となっています。

この構造は、ベトナムが締結する自由貿易協定や関税引き下げの影響を大きく受けます。国内生産を維持しながら輸入車の増加にどう対応するかが、産業政策上の重要な論点となっています。

国内生産は約37万台規模に達しているとの推計もあり、生産と輸入のバランスは、今後の政策や為替、関税制度の変化によって流動的に動く可能性があります。

自動車が普及し始めた背景と経済成長

ベトナムでは高い経済成長率と人口構成の若さを背景に、都市部を中心に自家用車への需要が着実に立ち上がってきました。輸出志向の製造業やサービス業の拡大により、都市中間層の間で「いつかは車を」という志向が広がっています。

ただし現在も個人の移動手段の主役は依然としてオートバイであり、年間300万台を超える二輪車が販売されています。四輪車は2014年から2024年にかけて大きく拡大し、2010年に15万台未満だった市場が10年余りで40万台規模に達しました。

この二輪優位の構造と四輪市場の急拡大というコントラストが、ベトナム特有のモータリゼーションの段階をよく表しています。バクザン省など製造拠点が集積する地域では、こうした経済成長が需要を押し上げています。詳しくはバクザン省の製造拠点に関する記事もご覧ください。

ベトナム自動車市場で競争するメーカーの動向

ベトナムの自動車市場では、日系・韓国系に加えて地場メーカーや中国勢が入り乱れる多極構造が形成されています。ここでは主要プレーヤーの動向を整理します。

トヨタなど日系メーカーの販売状況

2024年のブランド別販売では、トヨタが約6万6,576台(シェア18.3%)で韓国系の現代に次ぐ規模を確保しました。三菱が約4万1,198台、ホンダが約2万8,267台と続き、日系ブランドが量的には市場の中核を占めています。

しかし2025年に入ると勢力図が変化します。日系メーカーの販売が伸び悩む一方で、VinFastを中心とする地場ブランドや韓国系・中国系ブランドがEVシフトを追い風に急速にシェアを拡大しており、長年市場を牽引してきた日本ブランドにとって大きな転換期を迎えています。日本ブランドが初めて首位を明け渡すという象徴的な転機が訪れているのです。

この背景には、日系メーカーのEVラインアップの遅れや価格競争力の課題が指摘されています。多くの日系メーカーがハイブリッド車や内燃機関車に依然としてウエイトを置いており、EVの本格投入がまだ限定的である点が影響しています。

現地企業ビンファストの躍進と課題

ベトナムのEVシフトを語る上で欠かせないのが、地場メーカーVinFastです。2017年に大手コングロマリットVingroupの傘下企業として設立され、2022年には内燃機関車の生産から撤退し、EV専業へと大きく舵を切りました。

民間調査によれば、VinFastは2024年に約8万7,000台のEVを販売し、国内EV市場の約70%、自動車市場全体でも17.6%のシェアを獲得したとされます。わずか数年でベトナムEV市場の圧倒的なリーダーへと躍り出たスピードは驚異的です。

一方で課題も残ります。急速な拡大に伴う収益性の確保や、海外市場での品質・ブランド構築、電池リースを含む価格戦略の持続可能性など、成長の裏側には検証すべき論点も多く存在します。

台頭する中国系メーカーの存在感

近年のもう一つの大きな変化が、中国メーカーの本格参入です。2024年にはBYDや奇瑞汽車(Chery)などが新たにベトナム市場に参入し、中国ブランドの数は13ブランドに増加しました。これは日本ブランドの数を上回る水準です。

中国勢は低価格・高装備のEVやSUVを投入し、大幅な値引きや長期保証といったインセンティブを打ち出しています。商用車分野では中国製トラックがすでに高いシェアを握るなど、乗用車以外の領域にも浸透が進んでいます。

主要メーカーのポジションを整理すると、以下のようになります。

区分 主なメーカー 市場での特徴
地場系 VinFast、THACOグループ EVシフトを主導しシェア拡大
日系 トヨタ、ホンダ、三菱、スズキ 販売網とブランド力が強み
韓国系 現代タインコン、起亜 販売台数で上位を維持
中国系 BYD、奇瑞汽車 低価格EVと商用車で急伸

ベトナムで進む自動車のEVシフトと政府政策

ベトナムのEVシフトは、政府政策と企業戦略の同時進行によって加速しています。脱炭素の方針から優遇策、段階的な移行の動きまでを見ていきましょう。

脱炭素を目指すEV普及の方針

ベトナム政府は、自動車産業を戦略産業として位置づけ、2050年のネットゼロ(温室効果ガス排出実質ゼロ)に向けたグリーンエネルギー移行プログラムなどを整備してきました。これらの政策が、EVシフトの制度的な土台となっています。

国際的な統計サイトによれば、ベトナムのEV販売台数は2024年に約4万9,777台、2025年には約17万7,295台へと急増したと報告されています。数万台規模から十数万台規模へと一気に拡大したこの動きは、東南アジアの中でも高い成長率です。

ハノイ市が2026年7月からガソリン二輪車の運行制限を導入する検討を進めるなど、四輪だけでなく二輪を含めたモビリティ全体の脱炭素が今後の重要テーマとなっています。

EVへの優遇策と充電インフラの整備状況

EV普及を後押しするため、政府はEVに対する特別消費税や登録料の優遇措置を導入してきました。こうした税制面の支援が、消費者の購入インセンティブを高めています。

充電インフラの整備でも、VinFastが大きな役割を果たしています。同社は全国に15万カ所以上の充電ポートを展開しているとされ、これはベトナム全体の充電インフラの大部分を占める規模です。グループ傘下では電気タクシーサービス「Green SM」も展開しています。

主なEV優遇策と支援の方向性を整理すると、以下の通りです。

  • EVに対する特別消費税の優遇による車両価格の抑制
  • 自動車登録料の減免による初期購入負担の軽減
  • VinFastを中心とした全国規模の充電インフラ整備
  • 電気タクシーなどモビリティサービスによる普及促進

市場調査では、ベトナムのEV市場規模は2025年に約30億米ドル、2030年には約70億米ドル前後へと拡大するとの予測が複数示されており、二桁台の成長が見込まれています。

HEV現地生産など段階的な移行の動き

EV一辺倒ではなく、ハイブリッド車(HEV)を含めた段階的な移行も進んでいます。日系メーカーを中心に、内燃機関車からEVへの橋渡しとしてHEVを位置づける動きが見られます。

完成車輸入関税の引き下げも移行に影響します。2025年3月に施行された政令により、特定の排気量帯の乗用車やSUVの関税が大幅に引き下げられ、CPTPPやEVFTAなどの協定に基づき、特定国からの完成車輸入関税は2029〜2030年にかけてゼロになる予定です。

こうした関税制度の変化は、輸入車の価格競争を激化させると同時に、国内生産の空洞化やCO₂排出増といった課題も生み出します。EV政策との整合性をどう取るかが、今後の政策運営の焦点となります。

ベトナム自動車産業の課題と今後の展望

拡大を続けるベトナムの自動車市場ですが、産業として成熟するにはいくつかの課題が残されています。裾野産業や人材、市場拡大の展望を見ていきましょう。

裾野産業の育成という課題

ベトナムの自動車産業が抱える大きな課題の一つが、部品・付属品を供給する裾野産業の育成です。2014年に策定された自動車産業発展戦略でも、部品産業の育成や世界の生産ネットワークへの参入が掲げられています。

現状では、多くの部品を輸入に頼っており、国内での付加価値創出が限定的だと指摘されています。裾野産業の厚みが、自動車産業の国際競争力を左右する鍵となります。

バク二ン省やビンズオン省といった工業団地が集積する地域では、部品メーカーの集積が進みつつあります。地域ごとの特性についてはバク二ン省の記事やビンズオン省の工業団地に関する記事も参考になります。

特定技能など自動車運送分野の人材受け入れ

自動車産業の拡大に伴い、整備や運送を担う人材の確保も重要な課題となっています。日本では自動車運送業が特定技能制度の対象分野に加わり、ベトナムからの人材受け入れが期待されています。

ベトナムは若い労働力が豊富で、日本をはじめとする各国への技能人材の送り出し国としても存在感を高めています。自動車分野での技能習得は、両国の産業連携を深める機会となります。

人材育成と技術移転は、ベトナム国内の自動車産業の高度化にも直結します。整備技術やEV関連の新しい知識を持つ人材の育成が、今後の市場拡大を支える基盤となるでしょう。

今後の市場拡大に向けた期待

ベトナムの自動車市場は、経済成長と中間層の拡大を背景に、中長期的にさらなる拡大が見込まれています。市場調査会社の予測でも、2030年に向けて自動車販売が大きく伸びるとの見方が示されています。

EVの普及率ではASEAN諸国の中でも先進国グループに入っているとの評価があり、地域内での位置づけも高まっています。地場メーカーVinFastの成長と、日系・中国系の競争が、市場全体のダイナミズムを生み出しています。

今後の展望を整理すると、以下のポイントが挙げられます。

領域 今後の展望
市場規模 中間層の拡大により新車販売がさらに増加
EV普及 政策支援とインフラ整備で普及が加速
競争環境 地場・日系・中国系の多極競争が継続
産業高度化 裾野産業と人材育成が成長の鍵

ベトナムのビジネスには展示会出展が効果的

ベトナムでは、展示会への出展が企業のマーケティング戦略において極めて重要です。現地で開催される展示会は、自社の商品・サービスを認知してもらう最適な機会であり、特にB2B企業にとって欠かせない施策の一つとされています。開催数も年々増加しており、幅広い業種で行われる展示会は、効果的な販促チャネルとして注目されています。

展示会はテストマーケティングの場としても活用でき、現地顧客の反応を直接確かめることができます。さらに、単なる商品PRにとどまらず業界関係者とのネットワークづくりにも活用できるため、新規参入企業が現地での認知度を高め人脈を広げる上でも有効です。

このような対面での商談や交流を通じて有望な新規顧客の獲得やパートナー企業の発掘にもつながるため、展示会出展はベトナムにおけるB2Bビジネスで欠かせない施策となっています。自動車・製造分野では、MTA VietnamやVIMF、物流分野ではVILOGなどの展示会が注目されています。

よくある質問

Q. ベトナムの自動車市場の規模はどのくらいですか?

A. 統計によって幅がありますが、VAMAベースの2024年新車総販売は約34万台、主要非加盟メーカーを加えた推計では約49万台とされています。いずれも前年比で2桁前後の成長を示しています。

Q. VinFastとはどのような企業ですか?

A. 大手コングロマリットVingroup傘下の地場自動車メーカーです。2022年にEV専業へ転換し、2024年には約8万7,000台のEVを販売、国内EV市場の約70%のシェアを獲得した圧倒的なリーダーとされています。

Q. ベトナムで日系メーカーの存在感は低下しているのですか?

A. 2025年には地場ブランドのシェアが日本ブランドを初めて上回ったとされ、相対的な地位低下が指摘されています。EVラインアップの遅れなどが要因ですが、トヨタなど日系は依然として販売網とブランド力で重要な地位を保っています。

Q. ベトナムでEVが普及している理由は何ですか?

A. 政府による特別消費税や登録料の優遇、VinFastによる全国規模の充電インフラ整備、環境意識の高まりなどが主な理由です。ASEAN諸国の中でもEV普及の先進国グループに入っているとされています。

まとめ

ベトナムの自動車市場は、二輪車中心の構造から四輪車とEVが急速に存在感を増す段階へと移行しています。2024年の新車販売は推計で49万台超に達し、経済成長と中間層の拡大を背景に着実な成長を続けています。

競争環境は、地場メーカーVinFastの躍進、日系メーカーの相対的な地位変化、中国勢の本格参入によって多極化しています。政府のEV優遇策と関税制度の変化が、この競争をさらに加速させています。

一方で、裾野産業の育成や人材確保といった課題も残されており、これらへの対応が今後の市場拡大と産業高度化の鍵を握ります。ベトナム市場への進出を検討する際は、こうした最新動向を踏まえた戦略が求められます。

この記事のまとめ

  • ✓ベトナム自動車市場は推計49万台規模へ拡大し成長基調が続く
  • ✓VinFastの躍進で地場ブランドが日系を初めて上回った
  • ✓最新のEV政策や関税制度を踏まえた進出戦略を立てる
  • ✓現地での認知拡大には展示会出展を積極的に活用する

株式会社ビッグビートは、海外展示会出展のサポートをしています。特に、タイやベトナムに現地法人を有しており、出展企画の立案から展示ブースの設営、コンパニオンをはじめとする運営スタッフの手配や管理に至るまで、日本の高い品質基準を維持したまま、現地からの迅速なサポートを提供することが可能です。

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著者:ビッグビート ASEAN推進編集部

ベトナム・タイを中心としたASEAN圏に進出、あるいはこれから進出を計画している事業会社に対し、現地でのBtoBマーケティング領域を総合的に支援する広告会社です。ASEAN圏現地での実務経験や企業支援の実績を基に、現地に根差した信頼性の高い情報発信を行っています。