
2025年現在、ベトナム経済は目覚ましい成長を続けており、多くの産業分野で新たなビジネスチャンスが生まれています。第1四半期には実質GDP成長率が前年同期比6.93%を記録し、東南アジア地域でもトップクラスの経済発展を遂げています。本記事では、ベトナム産業の成長可能性について、特に注目すべき分野や特徴を詳細に解説し、海外ビジネス展開を検討している企業にとって有益な情報をお届けします。
ベトナム経済の現状と成長見通し
ベトナム経済は2025年においても安定した経済発展を遂げています。
2025年の経済指標と成長率
ベトナム経済の2025年第1四半期の実質GDP成長率は前年同期比6.93%と高い水準を維持しています。これは、アジア諸国の中でもトップクラスの成長率です。政府は2025年の目標として、GDP規模5,000億米ドル超、一人当たりGDPも5,000米ドル超を掲げており、着実に中所得国から上位中所得国へと移行していることがわかります。
分野別では、工業・建設部門が9.5%、サービス部門が8.1%、農林水産業が3.9%の成長が予測されています。特に製造業とサービス産業が経済成長を牽引しており、外国直接投資(FDI)の増加も成長を後押ししています。
政府の政策と推進施策
ベトナム政府は、産業の多角化と構造改革を積極的に推進しており、各分野の成長を支えるための環境整備に力を注いでいます。省庁再編や公共支出の適正化、規制緩和を通じて、企業活動を促進するための基盤が着実に整備されています。
さらに、政府は国内外の投資家に対して魅力的な投資環境を提供するため、法整備や市場ルールの明確化に努めています。これにより、産業全体がスムーズに成長していく土台が確立され、政策の実効性に注目することが成長の鍵を握っています。
ベトナム産業の成長を支える4つの要因
ベトナム産業の持続的な成長の背景には、複数の要因が存在します。これらの要因が相互に作用し合うことで、ベトナム経済の躍進を支えています。
若く豊富な労働力人口
ベトナムの人口は約1億人で、その平均年齢は32.5歳と若く活力に満ちています。労働年齢人口(15〜64歳)が全人口の約68%を占め、この豊富な労働力が産業発展の大きな推進力となっています。教育水準も向上しており、高等教育を受けた若年層の割合が年々増加しています。
特に技術系の教育に力を入れており、理工系の大学卒業生が増加傾向にあります。これにより、製造業だけでなくIT・デジタル分野でも十分な人材供給が可能になっています。若く教育レベルの高い労働力が比較的低いコストで調達できることが、多くの外国企業にとって魅力的な投資環境を創出しているのです。
積極的な外国直接投資(FDI)の受け入れ
ベトナム政府は外国投資を積極的に誘致するため、様々な優遇政策を実施しています。特定の産業分野や経済特区では法人税の減免措置が適用され、新規投資プロジェクトに対する手続きの簡素化も進められています。
2025年第1四半期の外国直接投資額は前年同期比13.4%増の62億ドルに達し、その約60%が製造業およびハイテク産業に向けられています。サムスン電子、インテル、LG電子など世界的テクノロジー企業が大規模な生産拠点を設立し、事業を拡大しています。
投資環境の改善と政治的安定性が投資家からの信頼を高め、継続的な資本流入を実現している点が重要です。また投資保護に関する法整備も進み、知的財産権の保護や紛争解決メカニズムの構築も進展しています。
インフラ整備とデジタル経済の推進
ベトナム政府は国家的なインフラ整備計画を推進しており、これが産業発展を後押ししています。北部と南部を結ぶ高速道路網の拡充、都市部の地下鉄建設、電力供給能力の増強など、基盤インフラの整備が急ピッチで進められています。
2025年には、ホーチミン市近郊のロンタイン国際空港の建設が本格化し、こうした交通・物流インフラの整備によって産業活動がさらに活性化すると期待されています。電力インフラについても、再生可能エネルギーを中心とした発電能力の増強が進められています。
同時に、デジタル経済推進のための施策も積極的に展開されています。「デジタルベトナム2025」計画に基づき、5G通信網の整備、電子政府サービスの拡充、デジタル人材の育成などが推進されています。デジタルインフラの整備がeコマースやフィンテックなど新興産業の急成長を可能にしていることは特筆すべき点です。
輸出志向型の経済政策
ベトナムは輸出主導型の経済発展戦略を採用しており、積極的な自由貿易協定(FTA)の締結を通じて輸出市場の拡大を図っています。現在、ベトナムはCPTPP(包括的及び先進的な環太平洋パートナーシップ協定)、RCEP(地域的な包括的経済連携協定)、EU-ベトナムFTA、日越EPA(経済連携協定)など15以上の貿易協定に参加しています。
これらの協定によって、ベトナム製品は世界の主要市場への関税面など有利な条件で輸出されています。2025年の輸出額は前年比約9%増加すると予測されており、特に電子機器、繊維・衣料品、家具、農水産物などの分野で堅調な輸出成長が見込まれています。
多様な貿易協定のネットワークを構築することで、特定市場への依存リスクを軽減し、輸出先の多角化を実現していることが、ベトナムの貿易政策の特徴です。また政府は輸出品の高付加価値化も推進しており、単なる製造・組立拠点から、設計・開発機能を含めた総合的な生産拠点への転換を目指しています。
ベトナムの注目すべき成長産業分野
ベトナム経済の発展を牽引する主要産業には、ハイテク・電子機器、再生可能エネルギー、製造業、農水産加工業など多岐にわたります。これらの分野は国内外からの投資も活発で、今後さらなる成長が期待されています。
ハイテク・電子機器産業
ベトナムのハイテク・電子機器産業は驚異的な成長を遂げており、国の輸出額の約30%を占める主要産業となっています。サムスン電子はベトナムを最大の生産拠点として位置づけ、スマートフォンや家電製品の製造に年間数十億ドルを投資しています。同様に、インテルやLG電子なども大規模な生産施設を設立・拡張しています。
政府は「ハイテク産業振興法」を改正し、優遇税制や土地使用権などの特典を通じて、さらなる投資を促進しています。特に半導体産業の誘致に力を入れており、設計から製造、テストに至るまでの半導体バリューチェーン構築を目指しています。
単なる組立工程だけでなく、研究開発機能の誘致にも成功しており、産業の高度化が着実に進んでいる点が注目されます。サムスンはハノイに研究開発センターを設立し、ソフトウェア開発や人工知能研究も行っています。また地場企業のVingroup(ビングループ)も電気自動車やスマートフォンなどを通じてハイテク分野に積極的に参入しています。
再生可能エネルギー産業
ベトナムは再生可能エネルギー分野で急速な発展を遂げています。政府は2030年までに電力供給の約30%を再生可能エネルギーで賄うという目標を掲げており、太陽光発電や風力発電プロジェクトへの投資が急増しています。
特に南部地域の太陽光発電と中部沿岸地域の洋上風力発電が急速に拡大しています。2025年現在、ベトナムの太陽光発電設備容量は約20GWに達し、東南アジア最大の太陽光発電国となっています。風力発電も約4GWの設備容量を有し、さらなる拡大計画が進行中です。
エネルギーの安定供給と脱炭素社会の実現を両立させる政策的バックアップが、この分野の投資を加速させています。日本、韓国、デンマーク、シンガポールなどの国々からの投資も活発化しており、技術移転も進んでいます。
製造業
製造業はベトナム経済の中核を担う産業であり、特に輸出向け製造業は著しい成長を続けています。繊維・衣料品産業は世界第3位の輸出国としての地位を確立し、高級ブランド向けの生産拠点としても評価が高まっています。
自動車・二輪車部品製造も拡大しており、トヨタ、ホンダ、日産などの日系メーカーを中心に、現地調達率の向上が進んでいます。2025年にはベトナム国内の自動車生産台数が50万台を超える見込みであり、部品産業のさらなる成長が期待されています。
家電製品や家具製造業も輸出を牽引しており、特に欧米市場向けの木製家具製造では世界有数の輸出国となっています。「チャイナプラスワン」戦略による生産拠点の分散化の恩恵を受け、製造業の投資が継続的に流入していることが、この分野の成長を支えています。
同時に、労働集約型産業から技術集約型産業へのシフトも進行中です。単純な組立作業だけでなく、設計や開発機能も取り込んだ「産業高度化」の流れが見られるようになっています。政府も職業訓練制度の充実や産学連携の促進を通じて、この動きを後押ししています。
農水産加工業
ベトナムは農業大国としての基盤を活かし、農水産加工業の高付加価値化に取り組んでいます。コーヒーはベトナムの主要輸出品であり、世界第2位の生産国として知られています。従来のロブスタ種を中心とした大量生産から、アラビカ種などの高級品種の生産拡大も進んでいます。
水産物加工業も急速に発展しており、特にエビの養殖・加工では世界市場で大きなシェアを持っています。持続可能な養殖方法の導入や国際認証の取得を通じて、高付加価値市場への参入も進んでいます。
加工技術の向上と品質管理の徹底により、日本や欧米などの高付加価値市場での競争力を高めている点が注目されます。また、コメ輸出では世界有数の輸出国であり、高品質品種の開発や有機栽培の導入なども進められています。
農水産加工業のバリューチェーン全体の近代化も進行中で、IoTを活用した精密農業の導入、コールドチェーンの整備、包装技術の向上など、様々な取り組みが行われています。このような取り組みにより、農水産加工業は単なる一次産品の輸出から、高付加価値製品の輸出へと転換しつつあります。
ベトナム産業の特徴と競争優位性
ベトナム産業には他のアジア諸国と比較して独自の特徴があります。競争優位性につながっている特徴について解説します。
コスト競争力と生産効率
ベトナムは依然として比較的低い労働コストを維持しています。隣国の中国と比較して製造業における人件費は約50~60%程度とされており、生産拠点としての費用対効果が高いことが大きな強みとなっています。ただし、近年は最低賃金の引き上げが継続しており、単純な低コスト生産からの転換が徐々に進んでいます。
労働生産性も着実に向上しています。職業訓練の強化や生産技術の改善により、単位時間あたりの生産効率が改善しています。特に外資系企業が集積する工業団地では、グローバルスタンダードに近い生産効率が達成されつつあります。
電力や水などのコストも他のアジア諸国と比較して安く、総合的な製造コストの観点からも魅力的な環境を提供しています。ただし、インフレ率の上昇に伴い、コスト優位性の維持が今後の課題となる可能性もあります。
グローバルサプライチェーンにおける位置づけ
ベトナムは世界的なサプライチェーン再編の中で、重要な生産拠点としての地位を確立しつつあります。特に「チャイナプラスワン」戦略の受け皿として、多くの製造業がベトナムに新たな生産拠点を設立しています。
電子機器製造では、スマートフォンやパソコン、家電などの組立工程だけでなく、部品製造やR&D機能の一部も移転が進んでいます。サムスン、インテル、LGなどのグローバル企業がベトナムに大規模な投資を行っており、関連するサプライヤーの集積も進んでいます。
自動車産業でも、完成車メーカーだけでなく部品サプライヤーの進出が増加しています。トヨタ、ホンダ、フォードなどの自動車メーカーがベトナムでの生産を拡大しており、部品の現地調達率も徐々に向上しています。
ベトナムビジネスにおける実践的戦略
ベトナム市場での成功には、現地の特性を理解した戦略的アプローチが不可欠です。ここでは、実際に成功を収めている企業のビジネス戦略を紹介します。
現地パートナーシップ構築の重要性
ベトナムでのビジネス展開において、信頼できる現地パートナーの存在は成功の鍵となります。法規制や商習慣の違い、市場へのアクセスなど、様々な面で現地パートナーのサポートが大きな助けとなります。
パートナー選定においては、単なる資本力や規模だけでなく、企業理念の共有や長期的な関係構築への意欲が決め手となることが多いです。成功している企業は、相互理解と信頼関係の構築に時間をかけ、段階的にパートナーシップを深化させています。
また、政府機関や業界団体とのネットワーク構築も重要です。規制変更などの情報をいち早く入手し、ビジネス環境の変化に適応するためには、これらの機関との良好な関係構築が欠かせません。特に許認可の取得や行政手続きがスムーズに進むかどうかが、事業の進捗に大きく影響します。
人材育成と組織づくりの成功戦略
ベトナムビジネスの成否を左右する重要な要素として、現地人材の育成と組織づくりが挙げられます。単に低コスト労働力を活用するという発想ではなく、人材への投資と長期的な育成計画が成功企業の特徴です。
従業員のキャリアパスを明確に示し、継続的な教育機会を提供することで、優秀な人材の定着率を高めることができる点が重要です。ベトナムの若い労働者は成長意欲が高く、自己啓発やスキルアップの機会を重視する傾向があります。こうした特性を理解した人材育成策が功を奏しています。
また、現地文化や価値観を尊重した組織運営も成功の鍵です。明確な指示を好むベトナム人の特性を考慮しつつ、彼らの創意工夫を引き出す組織づくりに成功している企業は、従業員の高いモチベーションと生産性を両立させています。こうした文化的理解に基づいたマネジメントスタイルの確立が、長期的な事業成功には不可欠です。
高付加価値市場への参入戦略
ベトナム市場における競争が激化する中、多くの成功企業は低価格競争から脱却し、高付加価値市場への参入に注力しています。品質、機能、ブランド力などの差別化要素を強化することで、持続的な競争優位を確立しています。
ベトナム国内の中間層・富裕層市場を対象とした高品質商品・サービスの提供も有効な戦略として注目されていることが分かります。所得向上に伴い、品質やブランドを重視する消費者が増加しており、この層をターゲットにしたビジネスモデルが成功を収めています。
デジタル技術活用による競争力強化
ベトナムはデジタル化が急速に進む市場であり、この流れを活用した事業展開が成功の鍵となっています。特に若年層のデジタル技術への高い親和性は、新たなビジネスモデルの創出や既存ビジネスの変革を可能にしています。
ベトナムの若い消費者はデジタル技術の早期採用者が多く、新しいデジタルサービスの実験市場として大きな可能性を秘めている点が注目されています。モバイル決済、ライブコマース、サブスクリプションモデルなど、新たなデジタルビジネスモデルがいち早く普及しています。
製造業においても、IoTやAIを活用したスマートファクトリー化が進んでいます。予知保全システムの導入や生産プロセスの自動最適化など、デジタル技術を駆使した生産性向上の取り組みが成果を上げています。こうしたデジタルトランスフォーメーションは、人材不足や品質管理といった課題の解決にも貢献しています。
ベトナムに進出する日本企業の最新動向
日本企業はベトナムへの投資を積極的に行っており、多様な業種や進出形態で事業展開しています。ここでは、日本企業のベトナム進出の最新動向と戦略について詳しく見ていきましょう。
日本企業の進出状況と特徴
ベトナムは日本企業にとってASEAN地域の中でも特に重要な投資先となっています。2025年現在、ベトナムで事業を展開する日系企業は約3,000社を超え、自動車・二輪車部品、電子機器、繊維、小売、サービス業など多岐にわたる業種で事業を展開しています。
業種別に見ると、製造業の比率が依然として高いものの、近年はIT・通信分野やサービス業への進出も増加しています。特に顕著なのは、中小企業の進出増加であり、大企業のサプライチェーンを支えるサポーティングインダストリーが形成されつつあります。
地域別では、従来は南部が中心でしたが、近年は北部ハノイ周辺やハイフォン市近郊への進出も活発化しています。特に電子部品や精密機器などの製造業では、サプライチェーンの集積が進む北部地域への投資が増えています。
新たな進出戦略と事業展開
日本企業のベトナム進出戦略には新たな傾向が見られ、従来の「安価な労働力を活用した輸出生産拠点」という位置づけに加え、「成長する消費市場」としてのベトナムに注目する企業が増えています。
小売業では、イオン、ローソン、セブン-イレブンなどが店舗網を拡大しており、都市部の中間層をターゲットにした質の高い商品・サービスの提供に力を入れています。ベトナムの若い消費者の間では日本製品への信頼感が高く、この「ジャパンクオリティ」を強みとした展開が進んでいます。
製造業においても、生産拠点としてだけでなく、研究開発機能を併設する企業が増えています。例えば、デンソーは2022年にハノイ近郊に技術開発センターを設立し、現地エンジニアの採用を強化しています。これは、ベトナムの高度人材活用という新たな戦略を示しています。
また、スタートアップ投資やオープンイノベーションの取り組みも活発化しており、大手企業がベトナムのITテック企業と提携するケースも増えています。ソフトバンクやSMBCグループなどは、ベトナムのフィンテックやeコマース企業に積極的に投資しています。
まとめ
本記事では、ベトナム産業の成長可能性について、経済の現状から主要成長要因、注目すべき産業分野、そして実践的な成功戦略まで幅広く解説してきました。
- 若く豊富な労働力人口、積極的な外国直接投資の受け入れ、インフラ整備とデジタル経済の推進、輸出志向型の経済政策がベトナム産業の成長を牽引
- ハイテク・電子機器、再生可能エネルギー、製造業、農水産加工業が特に有望な成長産業分野
- 現地パートナーシップの構築、戦略的な人材育成、高付加価値市場への参入、デジタル技術の活用が成功企業の共通戦略
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