Home 9 ブログ 9 ベトナム駐在、何が必要?手続きや費用、注意点から準備の進め方まで解説
Vietnam

ベトナム駐在は近年多くの日本企業が検討する選択肢となっており、実際に現地で働く日本人駐在員の数も年々増加しています。しかし、いざベトナム駐在が決まった際に「何から準備を始めればよいのか分からない」「手続きが複雑で不安」という声をよく耳にします。本記事では、ベトナム駐在に必要な手続きから費用、注意点まで、実際の準備の進め方を体系的に解説します。これからベトナム駐在を控えている方、将来的にベトナムでの勤務を検討している方にとって、具体的で実践的な情報を提供します。

ベトナム駐在に必要な基本手続き

ベトナム駐在を開始するためには、複数の重要な手続きを段階的に進める必要があります。

ベトナム駐在の労働許可証取得と就労手続き

ベトナムで合法的に就労するためには、労働許可証の取得が必須です。この手続きは複雑で時間がかかるため、駐在員にとって最も重要な準備の一つといえます。

労働許可証申請の流れと必要書類

労働許可証の申請は、まず雇用主となる現地企業が労働社会省(MOLISA)に申請書を提出することから始まります。申請には駐在員の学歴証明書、職歴証明書、犯罪経歴証明書(無犯罪証明書)、健康診断書などが必要です。

これらの書類はすべて英訳および認証が必要で、特に無犯罪証明書は発行に時間がかかるため、最優先で準備を始める必要があります。無犯罪証明書の取得には警察署での手続きが必要で、通常2〜3週間程度の期間を要します。

労働許可証の審査期間は通常15営業日ですが、書類に不備がある場合は追加の時間がかかります。そのため、すべての書類を完璧に準備してから申請することが重要です。

一時居住証の申請手続き

労働許可証と並行して、一時居住証(TRC:Temporary Residence Card)の申請も必要です。一時居住証は3年間有効で、ベトナムでの長期滞在を合法化する重要な書類です。

申請には労働許可証、労働契約書、健康診断書、住居証明書などが必要となります。住居証明書は賃貸契約書や大家さんからの証明書などで代用できますが、現地の法律に詳しい不動産会社や人事担当者と連携して準備することをおすすめします。

社会保険加入手続き

ベトナムでは、労働許可証を取得した外国人労働者も社会保険への加入が義務付けられています。社会保険には医療保険、失業保険、労災保険が含まれ、給与の一定割合を保険料として支払う必要があります。

保険料は雇用主と従業員で分担し、従業員負担分は給与の約10.5%となります。医療保険に加入することで、ベトナムの公立病院での医療費が大幅に軽減されるため、積極的に活用することをおすすめします。

駐在員事務所設立手続き

企業がベトナムに駐在員を派遣する場合、駐在員事務所の設立が一般的な選択肢となります。駐在員事務所は非営利拠点として機能し、市場調査、連絡業務、技術指導などの限定された活動のみが認められています。

設立手続きには、本社の登記簿謄本、財務諸表、設立趣意書、代表者の履歴書などが必要です。設立から営業開始まで約2〜3ヶ月程度の期間を要するため、駐在開始の半年前には準備を始めることが推奨されます。

必要書類一覧と準備方法

ベトナム駐在に必要な主要書類には以下のようなものがあります。パスポートは有効期限が6ヶ月以上残っている必要があり、健康診断書は指定の医療機関で受診する必要があります。

書類名 取得場所 有効期限
パスポート パスポートセンター 6ヶ月以上残存必要
無犯罪証明書 警察署 発行から6ヶ月
健康診断書 指定医療機関 発行から6ヶ月
学歴証明書 卒業校 なし

これらの書類は、外務省での認証(アポスティーユまたは公印確認)とベトナム領事館での領事認証が必要です。認証手続きには時間がかかるため、駐在開始の3〜4ヶ月前から準備を始めることをお勧めします。

ベトナム駐在にかかる費用詳細

ベトナム駐在に必要な費用は、準備段階から現地での生活費まで幅広く発生します。事前に正確な費用を把握し、適切な予算計画を立てることが重要です。

主要都市別の生活費

ベトナムの主要都市における駐在員の生活費は、近年の経済成長とインフレの影響で上昇傾向にあります。

項目 ハノイ(月額) ホーチミン(月額) 備考
家賃(2LDK) 約97,000円 約115,000円 外国人向け物件
食費 約70,000〜73,000円 約75,000〜80,000円 外食中心の場合
光熱費 約19,000円 約21,000円 エアコン使用時
通信費 約5,000円 約5,000円 インターネット・携帯
交通費 約7,500円 約8,500円 Grabタクシー利用

ハノイとホーチミンともに、快適に生活できる環境を求める場合、月額20万円程度の生活費を見込んでおくことが現実的です。

従来の「ベトナム=物価安」のイメージとは異なり、大都市圏では相当な生活費が必要です。

初期費用と手続き関連費用

ベトナム駐在の初期費用には、ビザ申請費用、書類認証費用、健康診断費用、引越し費用などが含まれます。就労ビザ申請費用は約5,000〜30,000円、アポスティーユ認証費用は書類1通につき約1,000円です。

健康診断費用は指定医療機関での受診で約20,000〜30,000円、引越し費用は荷物量や輸送方法により大きく異なりますが、一般的に50万円〜150万円程度を見込む必要があります。海外旅行保険は年間約10万円〜20万円が相場となっています。

現地の銀行口座開設費用

ベトナムでの銀行口座開設は、現地での生活に不可欠です。主要銀行であるVietcombank、BIDV、VietinBankなどで口座開設が可能ですが、最低預金額や手数料体系は銀行により異なります。

一般的に外国人向け口座の最低預金額は100万VND(約6,000円)程度で、月間維持手数料は約300円〜500円です。日本からの海外送金には手数料と為替レートの差額が発生するため、送金方法の選択が重要となります。

現地住居探しと生活環境整備

ベトナム駐在における住居選びは、日常生活の質を大きく左右する重要な要素です。

住居タイプと地域特性

ベトナムの駐在員向け住居には、コンドミニアム、サービスアパート、一軒家の3つの主要タイプがあります。コンドミニアムは最も一般的で、セキュリティや共用施設が充実しています。サービスアパートは家具家電完備で短期駐在に適しており、一軒家は家族連れの長期駐在に人気です。

ハノイでは、タイ湖周辺やバーディン区が外国人に人気のエリアとなっています。ホーチミンでは、1区、2区、7区が駐在員の居住地として選ばれることが多く、それぞれ異なる特徴を持っています。職場へのアクセス、日本人学校への距離、周辺の商業施設などを総合的に検討して選択することが重要です。

家族帯同時の配慮すべき事項

帯同家族がいる場合は、追加の準備や配慮が必要になります。配偶者や子供のビザ申請、現地での健康保険加入、子供の教育環境の確保などが主要な検討事項です。

日本人学校やインターナショナルスクールの入学手続きは、定員の関係で早期の申込みが必要です。学費は年間100万円〜300万円程度で、入学金や施設費が別途必要となる場合があります。医療面では、日本語対応可能な病院の確認と、緊急時の対応体制の構築が重要です。

健康管理と医療体制への対応

ベトナム駐在において健康管理は極めて重要な要素です。現地の医療事情を理解し、適切な準備を行うことで、安心して駐在生活を送ることができます。

ワクチン接種推奨事項

ベトナム駐在前に接種が推奨されるワクチンには、破傷風、A型肝炎、B型肝炎、日本脳炎、狂犬病があります。これらのワクチンは、現地で感染リスクの高い疾病を予防するために重要です。

特にA型肝炎とB型肝炎は、食事や水を通じて感染する可能性があり、長期滞在者には接種が強く推奨されます。狂犬病ワクチンは、万が一動物に咬まれた際のリスクを軽減するために有効です。接種には複数回の来院と一定期間が必要なため、駐在開始の2〜3ヶ月前には医療機関に相談することが重要です。

現地医療事情と病院選択

ベトナムの医療レベルは急速に向上していますが、地域や医療機関により大きな差があります。ハノイとホーチミンには国際基準を満たす私立病院が複数存在し、日本語通訳サービスを提供する医療機関もあります。

主要な国際病院には、Family Medical Practice、Raffles Medical、Franco-Vietnamese Hospitalなどがあり、これらの病院では外国人向けの高品質な医療サービスを受けることができます。一方で、これらの私立病院の医療費は高額になる傾向があり、1日の入院で約10万円程度の費用が発生することもあります。

海外保険加入の重要性

ベトナム駐在において海外旅行保険への加入は必須です。現地の医療費は予想以上に高額になることが多く、特に私立病院での治療や緊急時の日本への医療搬送には数百万円の費用が発生する可能性があります。

企業派遣の場合、多くの会社が保険料を負担し、日系保険会社の駐在員向けプランを利用することが一般的です。保険内容には現地での治療費だけでなく、緊急搬送費用、歯科治療、精神的疾患なども含まれているかを確認することが重要です。

安全対策と治安情報

ベトナムの治安状況を正しく理解し、適切な安全対策を講じることは、駐在生活の安全確保において不可欠です。現地の実情に基づいた対策を準備しましょう。

現地治安状況の実態

ベトナムの治安は比較的良好とされていますが、外国人を狙った犯罪には注意が必要です。2016年の統計では、ベトナムの犯罪発生件数は54,511件で、日本の996,120件と比較すると大幅に少ない数字となっています。

しかし、外国人が被害に遭いやすい犯罪として、スリ、置引き、ひったくりが挙げられます。特にバイクを使ったひったくりは頻発しており、スマートフォンやバッグを狙われるケースが多く報告されています。夜間の一人歩きや人通りの少ない場所での行動は避け、貴重品の管理には細心の注意を払うことが重要です。

日本大使館連絡先と緊急時対応

在ベトナム日本国大使館および総領事館の連絡先は、駐在開始前に必ず確認し、携帯電話と紙の両方で保管しておくことが重要です。ハノイの日本大使館の緊急時連絡先は+84-24-3846-3000、ホーチミンの総領事館は+84-28-3933-3510です。

緊急時には、まず現地の警察(113)や救急車(115)に連絡し、その後日本大使館に報告することが基本的な手順となります。大使館では、事件事故の際の支援、パスポートの紛失再発行、災害時の安否確認などのサービスを提供しています。

防犯対策と注意すべきポイント

日常生活における防犯対策として、貴重品は分散して携帯し、高額な現金は持ち歩かないことが基本です。外出時は派手な服装や高価なアクセサリーの着用を避け、目立たないよう心がけることが重要です。

交通面では、信頼できるタクシー会社やGrabアプリの利用が推奨され、路上でのタクシー利用は避けるべきです。住居の選択時にはセキュリティ設備の充実した物件を選び、ドアの施錠や貴重品の管理を徹底することが重要です。

日本での手続きと注意点

ベトナム駐在に際して、日本での各種手続きを適切に行うことは、後々のトラブルを避けるために重要です。計画的な手続きで円滑な駐在開始を実現しましょう。

海外転出届と行政手続き

海外転出届は、1年以上の海外滞在予定者が提出する届出で、駐在開始の2週間前から提出可能です。この届出により、住民税の支払い義務が停止され、国民健康保険と国民年金の被保険者資格を失います。

マイナンバーカードも返納が必要となり、帰国時に再発行の手続きが必要です。転出届の提出タイミングは駐在期間と税務上の取り扱いに影響するため、事前に税理士等の専門家に相談することが推奨されます。

税務申告方法と注意点

ベトナム駐在中の税務処理は複雑で、日本とベトナムの両国での課税関係を理解する必要があります。海外転出届を提出した場合、日本の所得税の納税義務者ではなくなりますが、ベトナムでの所得税納税義務が発生します。

ベトナムの個人所得税率は累進課税で、最高税率は35%となっています。また、日越租税協定により二重課税の回避措置が設けられていますが、適用には適切な手続きが必要です。駐在期間中の確定申告や、帰国時の税務処理についても事前に確認しておくことが重要です。

社会保険と年金制度の取り扱い

企業派遣の駐在員の場合、日本の社会保険制度の継続について会社の方針を確認する必要があります。厚生年金は出向扱いであれば継続加入が可能で、健康保険も海外療養費の給付を受けられる場合があります。

国民年金については、海外転出届提出後は任意加入となり、将来の年金受給額に影響します。社会保障協定により、ベトナムでの保険料納付期間が日本の年金受給資格期間に算入される場合があるため、詳細な確認が必要です。

準備タイムラインと実践的アドバイス

ベトナム駐在の準備は計画的に行うことが大切です。ここでは、効率的に準備を進めるためのスケジュール例を紹介します。

6ヶ月前からの準備スケジュール

駐在決定から出発まで6ヶ月の準備期間があることが理想的です。6ヶ月前には、基本方針の決定、家族との相談、会社との条件交渉を行います。この時期に、住居や学校の希望条件を明確にし、現地視察の計画を立てることが重要です。

4〜5ヶ月前には、就労ビザ申請の準備を開始し、必要書類の収集とアポスティーユ認証の手続きを進めます。健康診断の受診、ワクチン接種の計画も開始しましょう。また、この時期に現地視察を行い、実際の住居候補を確認することで、より具体的な準備が可能となります。

3ヶ月前の重要手続き

駐在3ヶ月前は最も集中的な準備期間となります。就労ビザの申請、引越し業者の選定と見積もり取得、海外旅行保険の加入手続きを行います。住居の最終決定と契約手続きも この時期に完了させる必要があります。

子供の学校への入学申請、配偶者のビザ申請も同時進行で進めましょう。日本での各種解約手続きの準備も開始し、公共料金、携帯電話、インターネットなどの停止日程を調整します。銀行口座の海外送金設定や、クレジットカードの海外利用設定も確認しておくと安心です。

出発直前の最終確認事項

出発1ヶ月前には、すべての書類の最終確認を行います。パスポートとビザの有効期限、航空券の予約確認、現地到着後の交通手段の確保を確認します。荷物の最終梱包と、手荷物での持参物品の選定も完了させます。

出発1週間前には、現地での緊急連絡先リストの作成、日本での留守宅管理の最終確認、重要書類のコピー作成と分散保管を行いましょう。現地通貨の準備と、到着後数日分の生活必需品の確保も忘れずに準備することが重要です。

まとめ

ベトナム駐在の準備には、多岐にわたる手続きが必要なため、多くの時間を要します。

  • 就労ビザと労働許可証の取得は最優先事項であり、早期の着手が必要
  • 生活費は従来のイメージより高額で、特に大都市圏では十分な予算確保が重要
  • 住居選択は職場アクセス、家族の教育環境、安全性から総合的な検討が必要
  • 健康管理には事前のワクチン接種と海外保険加入が不可欠
  • 安全対策は現地の治安情報に基づいた具体的な防犯対策が重要
  • 日本での各種手続きは税務や社会保険への影響を考慮した計画的な実施が必要
  • 6ヶ月前からの計画的な準備で、よりスムーズにな駐在を開始できる

ベトナム駐在を成功させるためには、これらの準備を計画的に進めることが重要です。特に、現地でのビジネス展開や展示会出展をお考えの企業様には、現地の最新情報と実践的なサポートが不可欠です。株式会社ビッグビートは、海外展示会出展のサポートをしています。特に、タイやベトナムに現地法人を有しており、出展企画の立案から展示ブースの設営、コンパニオンをはじめとする運営スタッフの手配や管理に至るまで、日本の高い品質基準を維持したまま、現地からの迅速なサポートを提供することが可能です。