本記事は、株式会社ビッグビートとICHI media Co., Ltd.が共催したウェビナーの開催レポートです。タイ市場で自社ブランドの認知度不足という課題に直面したKOBELCO South East Asia Ltd.(KSEA)のIT担当者が、専門部署のない環境からどのようにマーケティング活動を立ち上げ、現地展示会「METALEX」への出展に至ったのか、その挑戦の軌跡が語られました。
登壇したのは、KSEAシニアITマネージャーの糸数聡氏。聞き手はICHI mediaの金子秀明氏が務めました。約30年の歴史を持ち約10年前から東南アジア支援を行うビッグビートと、2018年立ち上げで2025年6月にタイ現地拠点を構えるICHI mediaが、ゼロからマーケティングを始める企業担当者に向けて、リアルな実践知を引き出すセッションとなりました。
本ウェビナーの要点
- タイ市場での自社ブランド認知度不足と問い合わせ取りこぼしへの危機感が、IT担当者によるマーケティング始動のきっかけとなった
- 中国の統括会社が実現した「共同出展」の成功事例が、社内提案の有力な後押しとなった
- 非日系企業との接点拡大を狙い、特化型展示会「METALEX」への出展と3カ国語Webサイトを選択した
- 反対意見を押し切るためには、自発的な熱意の言語化と前進を止めない行動力が不可欠である
ウェビナー開催概要・登壇者紹介
本ウェビナーは、海外でゼロからマーケティング活動を立ち上げる担当者に向けて、KSEAの実例を共有する目的で開催されました。冒頭では主催企業と登壇者の紹介が行われ、各社の背景が共有されました。
| 登壇者・企業 | 役割・概要 | 主な数字 |
|---|---|---|
| 株式会社ビッグビート | 主催・東南アジア支援 | 1995年設立、約30周年、東南アジア支援約10年 |
| ICHI media Co., Ltd. | 共催・タイ現地拠点 | 2018年立ち上げ、2025年6月にタイ拠点開設 |
| KOBELCO South East Asia Ltd.(KSEA) | 登壇者所属企業 | 設立9年、従業員16名(駐在員9名) |
KSEAはKOBELCOグループの海外統括会社として、アメリカ、中国に次ぐ3番目の拠点です。聞き手はICHI mediaの金子秀明氏、ビッグビートのドーナムベット氏が務め、IT担当者がマーケティングに挑んだ経緯を引き出す対話形式で進められました。
なぜIT担当者が「ゼロからのマーケティング」に挑んだのか?
糸数氏がマーケティング業務に踏み出した出発点は、タイ現地で日々感じた自社知名度への課題感と、見えない機会損失への危機感でした。
タイ市場で痛感した「自社ブランドの認知度不足」
糸数氏は赴任後、タイの現地の人に社名を伝えても認識されず、気まずい空気が流れる場面を繰り返し経験しました。前職のメーカーは現地での知名度が高かったため、その落差は鮮明だったと振り返ります。
一方で、Webサイトがない状態で月に2、3件の電話問い合わせがあり、口頭でメールアドレスを伝えて対応している実態を知ったことも転機となりました。「電話で問い合わせしてきてくださる方というのはよっぽど必要に駆られてかけてこられている。電話をかけるまでではない部分の取りこぼしがすごくあるんじゃないかと感じた」と語り、潜在顧客との接点を逃している現状への危機感について述べました。
専門部署がない中で自ら手を挙げた背景と危機感
KSEA社内には現在も含め、広報・マーケティング部門は存在していません。誰かが対応する仕組みがない状況下で、糸数氏は日本でデジタルマーケティングを経験していた自身の経歴を活かす形で、自らWebサイト制作の担当に名乗りを上げました。
「広報・マーケティング部門はKSEAには無いので、自分がやるしかないと思って手を挙げた」という発言には、組織の空白を見過ごさず行動に移した姿勢が表れています。IT担当という本来の役割を越えて、必要性を起点に領域を広げていったプロセスが共有されました。
非日系企業に狙いを定めた3カ国語でのWebサイト構築
Webサイト構築にあたっては、設計思想が明確化されました。狙いはローカル企業やグローバル企業など、これまで接点の薄かった非日系企業との関係構築です。糸数氏は、15年前に初めて訪れたタイは日本人が多い印象だったのに対し、2年前に赴任した際には以前に比べてかなり中国人が増え、また中国メーカーのEVが日常的に走っている光景から中国企業の勢いを実感したと述べています。ウェビナーの中で金子氏が触れたバンコクビジネスニュースが報じた「タイで中国人への労働ビザ発行数が日本人を上回った」というニュースも、市場環境の変化を捉える上で重要な材料となりました。
その意思を反映し、立ち上げたWebサイトには日本語ページを設けず、英語・中国語・タイ語の3カ国語のみで構築するという判断を下しました。糸数氏は「日系以外の取引先様との新たな接点を増やしていきたかったため、 そういった方々に訴求できるようなものにしたいと考えた」と語り、ターゲット設定と施策の一貫性を強調しました。
KOBELCO SOUTH EAST ASIA LTD.公式サイトはこちら
社内提案の背中を押した「中国拠点の成功事例」
Webサイト構築の次なるステップとして展示会出展を社内提案するにあたり、糸数氏が参考にしたのが中国拠点の取り組みでした。
小規模拠点でも実現できた「共同出展」というアプローチ
KOBELCOグループの海外拠点は、規模の大きい拠点でも数百名、多くは数十名規模で、予算や人員リソースが限られています。拠点単独で展示会に出展するハードルは高い状況でしたが、2023年に中国の統括会社が主導した共同出展では、グループ各社が連携し、共同で出展することで総合力をアピールでき、社内の横のつながりも生まれるという期待以上の効果がありました。
新たな顧客接点を求めて「METALEX」への出展を決断
展示会出展の方針が固まる中で、どの展示会を選ぶかという議論が次の論点となりました。糸数氏は複数の候補を視察したうえで、最終的にMETALEXを選定しています。
総合展ではなく、ターゲット層に近い特化型展示会を選んだ理由
当初の候補は、規模が大きい総合展「Manufacturing EXPO」でした。しかし視察後、グループ各社の担当者から「ターゲット層が広すぎて我々が狙う層からずれる」との意見が出され、出展案は白紙に戻されました。
その後、金属加工や加工機械をテーマとする「METALEX」を視察したところ、自社の素材系製品に興味を持つターゲット層に近いと評価され、出展が決定しました。規模の大きさだけでなく、来場者と自社製品の親和性を優先する判断軸が示された場面です。
ゼロからの挑戦を推進するために不可欠な「行動力と熱意」
セッション後半では、これから同じようにゼロからマーケティングを動かそうとする担当者へのアドバイスが語られました。
反対意見を押し切り、周囲を巻き込むためのマインドセット
初めての取り組みには「やっても売上アップには繋がりそうにない。意味があるのか」といった反対意見も出たと言います。糸数氏は「当社に必要な取組みであり、是非自分に進めさせて欲しい」と説得し、最終的には熱意で押し切る形で前進させました。社内で議論を起こし摩擦を恐れずに進めることで、「糸数氏がやりたいと言うなら協力しよう」と言う方も現れ、空気感が変わっていったと振り返ります。
- 粗削りでもやりたいと思ったことはアピールし、止めずに動かし続けることが最も重要である
- やらされ感によるものではない、自発的な熱意を言葉として語れるようにする
- やってみることに意味があると考え、勢いで押し切ることも時には必要である
「粗削りでもいいので、とにかくアピールをして、止めずに動かしていくこと、前に進めていくことが一番大事」という言葉は、完璧を求めて立ち止まるより、走りながら整える姿勢の重要性を示しています。エンディングでは金子氏からマーケティング視点からの問いかけとして「来場者のどんな悩みを解決しようとしているかを、ブースの中で一言で書けるか」「展示会を3日間あるいは4日間のイベントではなく、6ヶ月のプロジェクトとして設計できているか」といった論点も提示され、名刺を受け取った3日後からの動きまで含めた長期設計の必要性が共有されました。
まとめ
本ウェビナーは、専門部署が存在しない海外拠点において、IT担当者がブランド認知の課題と問い合わせ取りこぼしへの危機感から自発的に手を挙げ、Webサイト構築と展示会出展というマーケティング施策を立ち上げた実例を共有するものでした。潜在顧客との接点を逃している現状への危機感から、非日系企業に狙いを定めた3か国語Webサイトを構築するまでの、また中国拠点の共同出展という前例が社内提案を後押しし、ターゲット層との親和性を重視した「METALEX」出展という意思決定につながった経緯が語られました
挑戦を前に進める原動力として強調されたのは、反対意見に立ち止まらず行動し続ける姿勢と、自らの熱意を言語化して周囲を巻き込む力です。さらに、展示会を数日間のイベントではなく長期のマーケティングプロジェクトとして設計する視点が、参加者への問いかけとして提示されました。
この記事のまとめ
- ✓Webサイトや展示会などのマーケティング施策で解消に取り組むべき優先課題である
- ✓共同出展や特化型展示会の活用は、小規模拠点でも実行可能な現実的アプローチである
- ✓自社のターゲット層を明確にし、言語・媒体・出展先の選定に一貫性を持たせる
- ✓反対意見があっても熱意を言葉にし、粗削りでも前進させる行動を起こす
株式会社ビッグビートは、海外展示会出展のサポートをしています。特に、タイ・ベトナムに現地法人を有しており、出展企画の立案から展示ブースの設営、コンパニオンをはじめとする運営スタッフの手配や管理に至るまで、日本の高い品質基準を維持したまま、現地からの迅速なサポートを提供することが可能です。
著者:ビッグビート ASEAN推進編集部
ベトナム・タイを中心としたASEAN圏に進出、あるいはこれから進出を計画している事業会社に対し、現地でのBtoBマーケティング領域を総合的に支援する広告会社です。ASEAN圏現地での実務経験や企業支援の実績を基に、現地に根差した信頼性の高い情報発信を行っています。

