Home 9 ブログ 9 ベトナムのFDIの現状とは?最新投資動向と進出時に注意すべきポイント
vietnam FDI
Webinar

ベトナムFDIの全体概要

ベトナムへの外国直接投資は2025年を通じて活発な動きを続けていますが、四半期ごとに異なる特徴を見せています。全体的な投資環境は引き続き堅調ですが、国際経済の不確実性の高まりが投資判断に影響を与えている状況です。

投資額の最新推移

2025年上半期のベトナムへのFDI認可額は182億3,629万ドルに達し、前年同期比35.2%増という高い成長率を記録しました。特に第1四半期は109.8億米ドルと前年同期比34.7%増を記録し、実行済みFDIも49.6億米ドルと過去5年間の第1四半期で最高額となりました

しかし第3四半期には調整局面を迎え、認可額は70.4億ドルと前年同期比26.7%減となっています。これは1〜3月期と4〜6月期の高い伸びからの一時的な反動と考えられています。一方で実行額は70.8億ドルと前年同期比9.0%増を維持しており、基礎的な投資活動の堅調さは継続しています。

認可件数の最新推移

認可件数の推移を見ると、投資プロジェクトの規模や性質の変化が読み取れます。2025年上半期には2,814件の新規・拡張プロジェクトが認可され、前年同期比32.1%の増加となりました。件数の増加率が認可額の増加率とほぼ同等であることから、中型から大型の投資案件が主流となっていることが分かります。

第1四半期単体では850件の新規FDIプロジェクトが認可され、プロジェクト数は11.5%増加した一方で、登録資本金は31.5%減少しました。この傾向は、小規模から中規模の投資案件が増加する一方で、メガプロジェクトの認可が一時的に減少していることを示唆しています

主要投資国別の順位変化

2025年上半期の国・地域別認可額では、投資元の構成に大きな変化が見られます。シンガポールが34億3,133万ドルで首位を維持していますが、前年同期比では34.4%減少しており、シンガポール経由の投資に若干の減速が見られます。

韓国が28億1,334万ドルで2位に登場し、前年同期比2.5倍という急速な成長を遂げています。サムスン電子やLGグループなどの大手エレクトロニクス企業による大規模な追加投資が背景にあります。中国からの投資も24億1,094万ドルと99.2%増となり、件数ベースでは736件と38.1%増を記録しました。日本は認可額で19億958万ドルと4位となり、前年同期比55.9%増の健全な成長を示していますが、中国や韓国に比べて相対的に進出ペースが緩やかとなっています

業種別のシェア変化

業種別の投資状況では、加工製造業が依然として圧倒的な首位となっています。2025年第1四半期の加工製造業への新規登録資本は26.2億米ドルで全体の60.5%を占め、既存プロジェクトの資本調整を含めると63億米ドルとなり、全体の66.5%に達しました。

不動産事業も急速に成長しており、上半期で不動産認可額は48億3,780万ドルと前年同期比143.0%の驚異的な増加を記録しています。再生可能エネルギー分野も注目すべき成長分野となっており、政府の脱炭素政策の推進に伴い、グリーン生産やサステナビリティ関連の投資が増加しています。

ベトナムFDIの投資動向と構造分析

ベトナムへのFDIは、単に金額や件数の推移だけでなく、投資の構成や拡張の動き、産業別の特徴を通じて変化を読み取ることが重要です。2025年は新規プロジェクト、増資、資本調整、そして大型案件の各分野で異なる傾向が見られ、ベトナム経済に対する投資家の姿勢や戦略の変化が明確に表れています。

新規認可プロジェクトの傾向

新規認可プロジェクトは投資家の新たな市場参入意欲を示す重要な指標です。2025年第1四半期には850件の新規FDIプロジェクトが認可され、登録資本金は43.3億米ドルに達しました。これは前年同期と比較してプロジェクト数が11.5%増加した一方で、登録資本金は31.5%減少しており、平均的なプロジェクト規模がやや小型化している傾向が見られます。

新規プロジェクトの業種別内訳を見ると、製造業が最も多く、次いで不動産開発、サービス業が続いています。特に電子機器組立やスマートフォン関連部品製造に関連する新規投資が活発であり、ベトナムがグローバルサプライチェーンにおける重要な製造拠点としての地位を確立していることが確認できます

資本調整の内訳

資本調整プロジェクト、つまり既存プロジェクトの資本金増加は、既存投資家のベトナム経済に対する継続的な信頼感を示しています。第1四半期には前年に認可されたプロジェクトの投資資本調整が401件あり、追加のFDI資本総額は51.6億米ドルに達しました。これは前年同期の実に5倍に増加した数字です。

資本調整が急増している背景には、進出済み企業が事業拡大を積極的に進めている状況があります。特に製造業では既存工場の生産能力拡大や新製品ラインの追加投資が多く、不動産分野では開発エリアの拡張や施設のグレードアップのための追加投資が目立ちます。

増資の内訳

株式取得による増資は、既存企業への出資比率を高める動きを反映しています。上半期全体では株式取得・出資による件数が562件、金額は28億3,323万ドルとなりました。前年同期比では件数が41.2%増、金額が72.4%増と、いずれも大幅な伸びを示しています。

増資の傾向としては、外国企業が有望なベトナム企業の株式を取得してパートナーシップを強化する動きや、既存の合弁企業において外資側の出資比率を引き上げる動きが活発化しています

大型案件の事例分析

2025年上半期における大型投資案件を見ると、投資家の戦略的な優先順位が明確に見えてきます。最大の投資案件は、マレーシアの建設・不動産大手ガムダによる首都ハノイ市イエンソー・パークの都市開発プロジェクトで、約11億2,000万ドルの拡張投資が行われました。

スウェーデン発のリサイクルスタートアップのサイアによる再生ポリエステル工場建設案件は10億ドル規模の新規投資となり、グローバルなサステナビリティ要求への対応を示す典型的事例となりました。日本企業による大型案件としては、イオンモールによる南部カントー市でのショッピングモール開発案件が約2億1,600万ドル、住友商事による中部タインホア省での工業団地開発案件が約1億1,580万ドルとなっています。

ベトナムFDIに関わる制度・環境の最新動向

ベトナムでは、外資規制や税制改正、労働制度、インフラ整備など、FDIの動向に密接に関わる制度改革が進められています。これらの変化は、進出企業の投資判断や事業運営の在り方に影響を及ぼす重要な要素です。

外資規制の最新動向

ベトナムでは特定の業種において外資の出資比率に制限があり、進出方法を決定する際の重要な要素となっています。2025年7月1日から施行された企業法の改正により、受益所有者規制が導入されました。この規制により、ベトナムに設立されたすべての企業は設立時および変更発生時に受益所有者情報を当局へ申告する義務が生じました。

この受益所有者規制の導入は、国際的なマネーロンダリング対策基準への対応であり、企業の所有構造の透明化が求められるようになったことを意味します。進出企業は自社の株主構成や最終的な受益者情報を明確に把握し、適切に申告する体制を整備する必要があります

優遇税制の改定内容

法人税法の改正も進出企業の経営戦略に大きな影響を与えています。グローバル・ミニマム課税制度が2024年から導入された結果、従来享受できた法人税優遇措置の見直しが進んでいます。

一方で、ハイテク産業、研究開発、グリーン生産といった優先分野への投資には継続的な優遇措置が提供されています。2025年の法改正により、工業団地における一般的な優遇措置は廃止されましたが、戦略的インフラ、科学技術、イノベーション、デジタル変革、バイオテクノロジー、新素材、半導体チップ、人工知能などの主要分野への投資には引き続き手厚い優遇が適用されます。

労働市場の規制変化

ベトナムの労働市場は急速に変化しており、人材確保と組織運営に関する規制も更新されています。特に管理者層や専門人材の確保が企業にとって大きな課題となっており、質の高い中間管理職の人材が深刻に不足しています。

政府は職業訓練プログラムの拡充や技術教育機関との産学連携を推進していますが、日本企業の管理手法に精通した人材は依然として極めて希少であり、現地人材の管理者層への登用には体系的な研修プログラムの構築と継続的な人材育成投資が不可欠です。外国人労働者の雇用に関する規制も存在し、労働許可証の取得手続きが厳格化される傾向にあります。

インフラ整備の進展状況

ベトナム政府はインフラ整備を外国投資誘致の重要な柱と位置づけており、交通網、電力供給、工業団地の開発に大規模な投資を行っています。特に北中部地域ではインフラ整備が急速に進展しており、ゲアン省では南東ゲアン経済特区が8万ヘクタール以上に拡大され、そのうち1万5,000ヘクタールのクリーンな土地が産業用に確保されています。

クアロ港やビン国際空港を工業団地に接続する輸送および物流インフラへの同時投資が行われており、企業の物流コスト削減と効率化に貢献しています。電力供給の安定化も重要な課題となっており、再生可能エネルギーの導入拡大とともに、電力インフラの増強が進められています。

ベトナムFDI最新情報の業界別影響

業界ごとに投資動向や進出時の課題は大きく異なります。各業界の特性を理解し、適切な戦略を立案することが成功への鍵となります。

製造業での投資変化

製造業はベトナムのFDIの中核であり、2025年上半期も件数、認可額ともに1位を維持しています。新規・拡張を合わせて1,226件、認可額は105億6,526万ドルとなりました。製造業への投資は電子機器組立、スマートフォン関連部品製造、自動車部品製造などに集中しています。

ベトナムが製造業の中核的な生産拠点としての地位を確立した背景には、低コストの労働力、戦略的な地理的位置、改善されつつあるインフラ、そして政府による外資誘致政策があります。しかし近年は人件費の上昇や労働力確保の困難さが課題となっており、企業は生産性向上と自動化への投資を進めています。

ハイテク分野での投資集中

ハイテク・電子機器産業はベトナムのFDI誘致における最も重要な産業であり、国の輸出額の約30%を占める主要産業となっています。サムスン電子、インテル、LG電子などの大手企業が大規模な生産施設を設立・拡張しており、研究開発機能の誘致にも成功しています。

地場企業のVingroupも電気自動車やスマートフォンを通じてハイテク分野に積極的に参入しています。政府は「ハイテク産業振興法」を改正し、優遇税制や土地使用権などの特典を通じて、さらなる投資を促進しており、特に半導体産業の誘致に力を入れています。

物流セクターの投資動向

製造業の拡大に伴い、物流セクターへの投資も急速に増加しています。ベトナムは地理的にASEAN諸国の中心に位置し、中国や日本へのアクセスも良好であるため、地域物流ハブとしてのポテンシャルを持っています。

港湾施設の拡張、空港の近代化、高速道路網の整備などのインフラ投資が進んでおり、物流効率の向上により製造業の競争力がさらに強化されることが期待されています。国内外の物流企業による倉庫施設や配送センターの建設投資も活発であり、Eコマースの急成長が物流需要をさらに押し上げています。

サービス業の投資受入れ

サービス業への投資も着実に拡大しています。特に小売業、飲食業、教育・医療サービスなどの分野で外資の参入が進んでいます。ベトナムの中間層の拡大と消費市場の成長が、サービス業への投資を後押ししています。

イオンモールによる南部カントー市でのショッピングモール開発案件は約2億1,600万ドル規模となり、小売業への大型投資の代表例です。教育分野では国際学校の設立が相次いでおり、医療分野では外資系の病院やクリニックの開設が増加しています。金融サービスでも外資銀行の進出や現地銀行への出資が拡大しており、ベトナムのサービス経済の発展が加速しています。

ベトナム進出時に注意すべきポイント

ベトナムは投資環境の改善と経済成長により、外国企業にとって魅力的な市場ですが、進出の際にはいくつかの重要な注意点があります。特に法制度、地域選定、人材確保、そして現地ビジネス文化の理解が成功の鍵となります。

法制度と行政手続きの変化

ベトナムでは法改正が頻繁に行われ、行政手続きも省庁や地方当局によって運用が異なる場合があります。そのため、最新の法制度や通知を常に把握し、認可やライセンスの取得スケジュールを十分に確保することが重要です

特に、2024年以降に導入された受益所有者規制やグローバル・ミニマム課税は、企業のコンプライアンス体制に直接影響します。信頼できる現地の法務・会計専門家と連携し、透明性と法令遵守を徹底する体制を整備することが求められます。

地域選定とインフラ環境の差

ベトナムは地域ごとに経済構造やインフラ整備の進度が異なります。北部は製造業や物流、南部は商業・サービス業が中心であり、候補地ごとに産業特性やインフラ状況を比較検討する必要があります。

輸送コストや労働力、電力供給などの要素を総合的に評価し、自社の事業モデルに最適な立地を選定することが重要です。また、工業団地の将来拡張性や現地自治体の支援体制も事前に確認しておくと良いでしょう。

人材確保と育成の課題

ベトナムは若い労働力を有していますが、管理職層や専門人材は依然として不足しています。採用後の教育・研修制度を整え、定着率を高めるための人事戦略を設計することが欠かせません。

日本式のマネジメントや品質管理を理解できる人材は限られているため、現地スタッフの中長期的な育成が重要です。外国人駐在員との協働体制を築き、ローカライゼーションを進めることが成功の鍵となります。

現地パートナー選定とリスク管理

現地企業との合弁や取引を行う際は、相手先の信用力や財務状況を事前に調査することが不可欠です。契約書はベトナム語と英語の両方で作成し、支払条件や納期、品質保証などの条項を明確にする必要があります。

取引開始後も定期的なモニタリングや監査を実施し、リスクを早期に発見・管理する体制を構築しましょう。BCP(事業継続計画)を意識したサプライヤーの多重化も重要な対策となります。

ベトナムのビジネスには展示会出展が効果的

ベトナムでは、展示会への出展が企業のマーケティング戦略において極めて重要です。現地で開催される展示会は、自社の商品・サービスを認知してもらう最適な機会であり、特にB2B企業にとって欠かせない施策の一つとされています。開催数も年々増加しており、幅広い業種で行われる展示会は、効果的な販促チャネルとして注目されています。

展示会はテストマーケティングの場としても活用でき、現地顧客の反応を直接確かめることができます。さらに、単なる商品PRにとどまらず業界関係者とのネットワークづくりにも活用できるため、新規参入企業が現地での認知度を高め人脈を広げる上でも有効です。

このような対面での商談や交流を通じて有望な新規顧客の獲得やパートナー企業の発掘にもつながるため、展示会出展はベトナムにおけるB2Bビジネスで欠かせない施策となっています。

まとめ

ベトナムへの外国直接投資は2025年も活発に推移しており、特に製造業とハイテク産業への投資が中心となっています。投資国では韓国と中国からの投資が急増する一方で、日本企業も着実に進出を拡大しています。

  • 2025年上半期の認可額は182億ドルを超え、前年同期比35.2%増の高い成長を記録
  • 製造業が投資の中核であり、特に電子機器組立とハイテク分野への投資が活発
  • 受益所有者規制やグローバル・ミニマム課税制度など法規制の変化に注意が必要
  • 管理者層の人材不足が深刻であり、現地人材の育成への投資が不可欠
  • 展示会出展はベトナムでのB2Bビジネスにおいて効果的な販促手段

ベトナムへの進出を成功させるためには、徹底した市場調査、信頼できる現地パートナーの確保、継続的な人材育成投資、そして現地文化への深い理解が不可欠です。また、展示会を活用した認知度向上とネットワーク構築も重要な戦略となります。

株式会社ビッグビートは、海外展示会出展のサポートをしています。特に、タイやベトナムに現地法人を有しており、出展企画の立案から展示ブースの設営、コンパニオンをはじめとする運営スタッフの手配や管理に至るまで、日本の高い品質基準を維持したまま、現地からの迅速なサポートを提供することが可能です。

Vietnam WP