Home 9 ブログ 9 ベトナム法人税の仕組みとは?基本税率と優遇措置を徹底解説
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ベトナムへの進出を検討する日系企業にとって、法人税の仕組みは事業計画を立てる上で欠かせない情報です。基本税率は20%とアジア諸国の中でも比較的低い水準ですが、2025年10月から企業規模に応じた新たな税率制度が導入されるなど、税制は大きな転換期を迎えています。本記事では、ベトナム法人税の基本的な仕組みから最新の改正内容、中小企業やスタートアップ向けの優遇措置、実務上の留意点まで、進出企業が知っておくべき情報を解説します。

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ベトナムの法人税の全体像

ベトナムの法人税制度は、事業活動から生じる所得に対して課税する仕組みです。基本税率は20%ですが、2025年10月1日から施行される法人所得税法の改正により、企業規模に応じた段階的な税率制度が新たに導入されます。

法人税の課税対象

ベトナムの法人税は、内国法人と外国法人で課税範囲が大きく異なります。内国法人はベトナム国内で設立された企業を指し、全世界所得に対して課税されます。

一方、外国法人はベトナム国外で設立された企業であり、ベトナム国内に恒久的施設を有する場合のみ、その施設から生じる所得に対して課税される仕組みです。恒久的施設とは、支店や工場などベトナム国内で事業活動を行う拠点を意味します。

駐在員事務所は営業活動を行わない前提であるため、原則として法人税の課税対象とはなりません。ただし、実質的に営業活動を行っている場合は課税対象となる可能性があるため注意が必要です。

課税方式の概要

ベトナムの法人税は申告納税方式を採用しており、納税者自身が税額を計算して申告する必要があります。課税年度は会計年度と一致し、3月・6月・9月・12月のいずれかを決算月として選択できます。申告納税は会計年度終了後3ヶ月以内に行う必要があります。

四半期ごとに予定納税を行い、年度末に確定申告で精算するシステムとなっています。第4四半期の仮納付額が確定申告額の80%未満の場合は延滞税が発生するため、適切な予定納税額の算定が重要です。

法人税率の構成

ベトナムの法人税率は標準税率と優遇税率の二つに大別されます。標準税率は原則として20%ですが、2025年10月1日からは企業規模に応じた新たな税率区分が導入されます。

年間総収入が30億ドン未満の企業には15%、30億ドン以上500億ドン未満の企業には17%の低減税率が適用されます。ただし、親会社を含むグループ全体の売上が500億ドンを超える場合は、子会社であっても標準税率の20%が適用されます。

優遇税率については、経済特区や工業団地への投資、特定の奨励業種での事業展開など、さまざまな条件に応じて10%から17%の範囲で設定されます。これらの優遇措置は期間限定であり、一定の免税期間と減税期間が組み合わされています。

税額計算の基本

法人税額は課税所得に税率を乗じて算出されます。課税所得は、収益と各種所得の合計から損金算入費用、非課税所得、繰越欠損金を差し引いた金額となります。

収益には商品販売やサービス提供による売上、資産売却益、受取利息などが含まれます。損金算入費用は事業活動に直接関連する費用であり、人件費、材料費、減価償却費、支払利息などが該当します。

損金算入が認められるには、VATインボイスや契約書などの適切な証憑書類が必須となります。これらの書類が不備な場合、税務調査で損金算入が否認されるリスクがあります。また、私的費用やゴルフ代などの接待費の一部は損金不算入となる可能性があるため注意が必要です。

ベトナムの法人税の税率

ベトナムの法人税率は、企業規模や業種、投資地域によって異なる税率が適用されます。2025年の改正により、より柔軟で段階的な税率体系へと移行し、中小企業やスタートアップ企業への支援が強化されました。

法人税の標準税率

ベトナム法人税の標準税率は2016年から20%に据え置かれています。この税率は製造業、サービス業、貿易業など、優遇措置の対象とならない一般的な事業活動に対して適用されます。

国際的に比較するとアジア地域では中程度の税率であり、ベトナムへの投資判断において税負担は他国と比べて有利な要素の一つとなっています。2025年10月以降も、年間総収入が500億ドン(約3億円)を超える企業には引き続き20%の標準税率が適用される予定です。多国籍企業や大規模企業の多くはこの標準税率の対象となります。

低減税率の適用要件

2025年の法人所得税法改正により、中小企業向けの低減税率制度が新設されました。年間総収入が30億ドン未満の企業には15%、30億ドン以上500億ドン未満の企業には17%の税率が適用されます。

この低減税率を受けるには、企業が独立した事業体であることが条件となります。親会社を含むグループ全体の年間総収入が500億ドンを超える場合、子会社は低減税率の対象から除外されます。また、金融・銀行業、保険業、証券業、鉱業、宝くじ・カジノ業などの特定の業種については除外規定が設けられています。

税率適用の判定基準

税率の判定の基準となるのは年間総収入です。年間総収入とは、会計年度内における全ての営業収益の合計を指し、売上高や各種サービス収入が含まれます。

税率適用の判定においては、グループ全体での収入規模を考慮する必要があります。例えば、親会社や関連会社を含めた総収入が500億ドンを超える場合、個別の子会社の収入が小さくても標準税率が適用される仕組みです。

判定は各課税年度ごとに行われるため、企業の成長に伴い税率が変更される可能性があります。前年度は低減税率の対象であっても、当年度に収入規模が拡大した場合は標準税率に移行します。逆に収入が減少した場合は低減税率の適用を受けられる場合があります。

ベトナム法人税の優遇制度

ベトナム政府は経済発展と外国投資の誘致を目的として、さまざまな法人税の優遇制度を設けています。地域別、産業別、企業規模別に多様な優遇措置が用意されており、適切に活用することで実効税率を大幅に引き下げることが可能です。

地域別投資優遇の概要

ベトナムでは投資地域に応じた優遇税率制度が設けられています。経済特区への投資は最も優遇度が高く、10%の軽減税率が10年間適用されます。さらに、最初の4年間は法人税が完全免除され、続く9年間は50%の減税措置が受けられます。

工業団地への投資についても従来は優遇措置の対象でしたが、2025年10月以降に認可を受けるプロジェクトは優遇対象から除外される予定です。ただし、それ以前に認可を受けたプロジェクトについては、従来通り2年間の免税と4年間の50%減税が適用されます。

困難な社会経済条件を有する地域への投資も優遇対象となります。これらの地域では17%の軽減税率が適用され、一定期間の免税と減税措置が組み合わされます。地域の発展段階に応じて優遇内容が設定されており、特に困難な地域ほど優遇度が高くなっています。

産業別の優遇措置

2025年の改正により、優遇対象となる業種が大幅に拡大されました。半導体製造、AIデータセンター、ハイテク農業などの戦略的産業が新たに優遇対象に追加されています。

ハイテク企業の認定を受けた場合、10%の軽減税率が15年間適用され、最初の4年間は免税、続く9年間は50%の減税措置が受けられます。ハイテク企業として認定されるには、科学技術省への申請手続きが必要です。

ソフトウェア開発企業やIT関連企業も優遇対象となります。これらの企業は10%の軽減税率の適用に加え、一定期間の免税と減税措置を受けることができます。環境保護関連事業、教育・医療関連事業なども優遇対象に含まれており、社会的に重要な分野への投資が奨励されています。

新設企業向けの免税制度

2025年5月17日以降に新規設立される中小企業には、特別な優遇措置が適用されます。この制度では、新設後3年間は法人税が完全免除されるため、初期投資の回収期間を大幅に短縮できます。

スタートアップ企業にはさらに手厚い優遇措置が用意されています。課税所得が発生してから最初の2年間は法人税が完全免除され、続く4年間は50%の減税措置が受けられます。スタートアップとして認定されるには、科学技術省への申請と審査が必要です。

これらの優遇措置は、減免期間の開始が課税所得発生の初年度からとなる点に注意しましょう。設立後すぐに課税所得が発生しない場合でも、初回の課税所得発生時から免税期間が開始されます。

優遇適用の手続きと要件

法人税の優遇措置を受けるには、納税者自らが優遇条件に該当することを確認し、申告時に適切に申請する必要があります。自動的に優遇が適用されるわけではないため、要件の確認と正確な申告が重要です。

業種別の優遇措置については、所管官庁への申請と認定手続きを要する場合があります。優遇措置の適用を受けるには、投資ライセンスや事業登録証明書などの必要書類の整備が求められます。また、優遇条件を満たし続けていることを証明するため、適切な会計記録と証憑書類の保管が不可欠です。

ベトナム法人税の損金算入および控除の仕組み

法人税額を正確に算定するには、損金算入できる費用の範囲と控除制度を正しく理解する必要があります。適切な会計処理と証憑管理により、税務調査での否認リスクを最小限に抑えられます。

損金に算入できる費用の範囲

損金として算入できる費用は、事業活動に直接関連し、実際に発生した費用に限られます。人件費、材料費、外注費、賃借料、水道光熱費、通信費などの営業費用は損金算入が認められます。

損金算入の要件としては、VATインボイスや契約書などの適切な証憑書類の保管が必須です。証憑書類がない費用は税務調査で損金算入を否認される可能性が高く、追徴課税の対象となります。

一方、私的費用、罰金や延滞金、過大な接待費、ゴルフ代やマッサージ代などの親睦費は損金算入が認められません。親会社への配当金支払いも損金不算入となります。

減価償却のルール

固定資産の減価償却は、ベトナム財務省が定める耐用年数表に基づいて計算します。減価償却方法は定額法が原則ですが、一部の資産については定率法の適用も認められています。

建物の耐用年数は構造により異なり、鉄筋コンクリート造は25年から50年、簡易構造は10年程度とされています。機械設備は種類に応じて5年から15年、車両は6年から10年の耐用年数が一般的です。

減価償却費を損金算入するには、固定資産台帳の適切な管理が必要です。取得価額、取得日、耐用年数、償却方法などを正確に記録し、毎期の減価償却計算を適切に行う必要があります。中古資産を取得した場合は、残存耐用年数に基づいて償却を行います。

移転価格の取扱い

関連会社間の取引については移転価格税制が適用されます。親会社や子会社、関連会社との取引価格が独立企業間価格と乖離している場合、税務当局により価格調整が行われる可能性があります。

移転価格文書の作成と保管が義務付けられており、取引の妥当性を証明する資料の準備が必要です。移転価格調査で否認された場合は、追徴課税に加えて重加算税が課される恐れがあります。

繰越欠損金と税額控除

ベトナムでは、欠損金を翌期以降に繰り越して課税所得から控除することが認められています。繰越期間は最長5年間であり、発生年度の古いものから順に控除されます。

繰越欠損金を適用するには、欠損が発生した年度の確定申告書を適切に提出し、会計帳簿で欠損金額を明確に記録する必要があります。合併や分割により法人格が変更された場合、繰越欠損金の引継ぎについては制限が設けられています。

税額控除制度としては、外国税額控除が認められています。ベトナム企業が海外で得た所得について外国で納税した場合、一定の範囲内でベトナムの法人税額から控除できます。ただし、控除額には上限が設定されており、国外所得に対応する税額を超えて控除することはできません。2025年度からは多国籍企業に対して最低15%の実効税率が適用されます。

ベトナムのビジネスには展示会出展が効果的

ベトナムでは、展示会への出展が企業のマーケティング戦略において極めて重要です。現地で開催される展示会は、自社の商品・サービスを認知してもらう最適な機会であり、特にB2B企業にとって欠かせない施策の一つとされています。開催数も年々増加しており、幅広い業種で行われる展示会は、効果的な販促チャネルとして注目されています。

展示会はテストマーケティングの場としても活用でき、現地顧客の反応を直接確かめることができます。さらに、単なる商品PRにとどまらず業界関係者とのネットワークづくりにも活用できるため、新規参入企業が現地での認知度を高め人脈を広げる上でも有効です。

このような対面での商談や交流を通じて有望な新規顧客の獲得やパートナー企業の発掘にもつながるため、展示会出展はベトナムにおけるB2Bビジネスで欠かせない施策となっています。

まとめ

ベトナムの法人税制度は、基本税率20%を基軸としながら、企業規模や業種、投資地域に応じた多様な優遇措置が設けられています。2025年10月から施行される改正法により、中小企業向けの15%・17%の低減税率が導入され、新設企業やスタートアップへの支援が一層強化されます。

  • 標準税率は20%だが、2025年10月以降は企業規模に応じて15%・17%の低減税率が適用される
  • 経済特区や工業団地への投資、ハイテク産業などには10%の軽減税率と免税・減税措置が組み合わされる
  • 2025年5月17日以降の新設中小企業は3年間法人税免除、スタートアップは2年免除+4年50%減税が適用される
  • 損金算入にはVATインボイスなどの証憑書類が必須であり、適切な会計処理と文書管理が重要である

ベトナムへの進出を検討する企業は、これらの税制情報を正確に把握し、自社の事業規模や業種に応じた最適な進出形態を選択することが重要です。優遇措置を最大限に活用しながら、適切な税務コンプライアンスを維持することで、安定した事業展開が可能となります。

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