ベトナムのEC市場は2018年から2022年にかけて約5倍に成長し、2025年以降も拡大が期待される有望な市場です。しかし、どのプラットフォームを選ぶべきか、現地の法規制や物流にどう対応すればよいのか、多くの日本企業が悩んでいます。本記事では、ベトナムEC市場の最新動向と主要プラットフォームの特徴を比較し、具体的な参入手順から現地運用のポイントまでを解説します。
ベトナムEC市場の全体像
ベトナムのEC市場は急速に拡大しており、日本企業にとって魅力的な進出先となっています。ここでは市場規模や成長率、セグメント別の動向、将来予測について詳しく見ていきます。
市場規模と成長率の推移
ベトナムのEC市場規模は2018年から2022年にかけて約5倍に成長し、2025年には市場規模がさらに拡大すると予測されています。人口約1億人のうち、インターネット普及率は70%を超え、スマートフォン保有率も急速に上昇しています。特に都市部の若年層を中心にオンラインショッピングが日常的な購買手段として定着しており、今後も持続的な成長が見込まれます。
政府もデジタル経済を推進しており、電子商取引に関する法整備やインフラ投資にも積極的です。このような政策支援により、EC事業者にとって事業展開しやすい環境が整いつつあります。
セグメント別の動向
ベトナムEC市場では、ファッション・美容、家電、食品・日用品のカテゴリーが特に人気です。都市部ではハノイやホーチミンを中心に高所得層が増加しており、プレミアム商品への需要も高まっています。一方、地方では低価格帯の商品が依然として主流です。
年齢別では、Z世代と呼ばれる若年層がEC利用の中心を担っています。彼らはSNSを通じた情報収集を好み、インフルエンサーのレビューや動画コンテンツに強く影響を受ける傾向があります。このため、SNS連動型のマーケティング施策が効果的です。
ベトナム市場の将来予測
ベトナムEC市場の成長を支える主な要因は、電子決済の普及とモバイルインターネットの拡大です。2025年にはEC取引の50%が電子決済で行われると予測されており、現金引換から電子ウォレットへの移行が急速に進んでいます。MomoやVNPay、ZaloPayなどの現地決済サービスが広く利用されています。
さらに、物流インフラの改善も市場拡大を後押ししています。主要都市では配送網が整備され、翌日配送や当日配送サービスも登場しています。これにより消費者の利便性が向上し、EC利用がさらに促進されているのです。
主要ECプラットフォームの特徴
ベトナムで事業展開するには、適切なECプラットフォームの選定が重要です。ここでは主要プラットフォームの特徴とメリット・デメリットを比較します。
Shopeeの特徴
Shopeeはベトナム最大手のECプラットフォームで、低価格帯商品の大量販売に強みを持ちます。出店は比較的容易で、初期費用が低く抑えられるため、初めてベトナム市場に参入する企業にも適しています。Shopeeは頻繁にセールイベントを開催し、プラットフォーム側が積極的に集客を行うため、出店者は販売に集中できる環境が整っています。
一方で、競合が多く価格競争が激しいため、利益率を確保するには工夫が必要です。また、プラットフォーム手数料や広告費用も考慮する必要があります。出店にあたっては、現地法人または代理店を通じた申請が推奨されます。
Lazadaの特徴
Lazadaは東南アジア全域で展開する大手ECプラットフォームで、ベトナムでも高いシェアを持ちます。中価格帯から高価格帯の商品に強みがあり、信頼性の高いブランド商品を求める消費者に支持されています。越境ECにも対応しており、日本から直接販売することも可能です。
Lazadaは物流サポートが充実しており、自社倉庫ネットワークを活用したフルフィルメントサービス(商品の保管・梱包・配送などを一括して代行するサービス)を提供しています。これにより在庫管理や配送業務を効率化できます。出店には審査が必要で、一定の品質基準を満たす必要があるため、ブランド価値を重視する企業に適しています。
TikiとTikTok Shopの特徴
Tikiはベトナム国内発の現地密着型ECプラットフォームで、書籍や家電、日用品に強みを持ちます。現地消費者の信頼が厚く、品質重視の顧客層にアプローチできます。自社配送網を持ち、迅速な配送サービスを提供している点が特徴です。
TikTok Shopは、SNS連動型の新しいECプラットフォームとして急成長しています。動画コンテンツを活用した商品訴求が可能で、特に若年層へのリーチに優れています。ライブコマース機能を使えば、リアルタイムで商品を紹介しながら販売できます。インフルエンサーとの連携により、短期間で認知度を高めることが可能です。
ベトナムEC参入の具体的手順
ベトナムEC市場への参入には、適切な手順を踏むことが成功の鍵となります。ここでは市場調査から出店登録、運用設計までの具体的なステップを解説します。
市場調査と競合分析
参入前には、ベトナム市場の需要動向や競合状況を詳細に調査することが欠かせません。自社商品がベトナムの消費者にどのように受け入れられるかを把握するため、類似商品の価格帯や販売方法を確認することが重要です。また、現地の購買行動や文化的背景についても理解を深めておく必要があります。
その他にも主要ECプラットフォームで競合商品の販売状況をチェックし、レビューや評価を分析することで、より具体的な消費者ニーズを把握できます。現地の展示会やオンラインイベントに参加し、直接市場の反応を確かめることも有効です。
出店登録と翻訳対応
プラットフォームへの出店登録では、現地法人の有無や必要書類が異なります。越境ECとして日本から直接販売する場合でも、プラットフォームごとに求められる要件を確認する必要があります。その上で法人登記書類や銀行口座情報、商品画像や説明文など必要な書類や情報を準備します。
商品ページの翻訳は、単なる直訳ではなく現地の商習慣や表現に合わせたローカライズが必要です。ベトナム語は固有の表現が多く、文化的背景を理解したネイティブによる翻訳が推奨されます。商品名や説明文、カスタマーサポート対応もベトナム語で行う必要があります。
運用体制の設計と決済・物流の整備
運用体制では、注文処理、在庫管理、顧客対応の体制を構築します。現地パートナーや代理店を活用することで、言語対応や現地商習慣への理解を補完できるでしょう。また、カスタマーサポートは迅速な対応が求められるため、現地時間に合わせた体制が必要です。
決済方法は、電子ウォレット、銀行振込、現金引換など複数のオプションを用意することで、幅広い顧客層に対応できます。物流面では、信頼できる配送業者との契約や、返品処理のフローを整備しておくことが大切です。特にラストワンマイル配送の品質が顧客満足度に直結するため、配送パートナーの選定は慎重に行うべきです。
現地運用と成長戦略のポイント
ベトナムでのEC運用を成功させるには、現地の商習慣や消費者行動に合わせた施策が不可欠です。ここでは決済、物流、カスタマー対応、プロモーション戦略について解説します。
電子ウォレットを中心とした多様な決済方法の活用
ベトナムでは電子ウォレットの普及が急速に進んでおり、MomoやVNPay、ZaloPayが広く利用されています。これらの決済手段に対応することで、スムーズな購入体験を提供でき、購入途中で離脱するユーザーを減らすことができます。現金引換も依然として人気がありますが、代金回収リスクや手数料を考慮する必要があります。
クレジットカード決済も導入すべきですが、ベトナムではカード保有率がまだ限定的です。複数の決済オプションを用意し、顧客が好みの方法で支払えるようにすることが重要です。決済代行サービスを利用すれば、複数の決済手段を一括管理できます。
物流とフルフィルメント戦略
ベトナムの物流インフラは改善されつつありますが、地方部では配送遅延が発生することもあります。主要都市では翌日配送が可能ですが、遠隔地では数日かかる場合もあるでしょう。そのため、配送業者の選定では、配送エリア、配送スピード、追跡機能、返品対応などを総合的に評価する必要があります。
3PLやフルフィルメントサービスを活用すれば、在庫管理や梱包、配送業務を外部委託でき、運用負担の軽減が可能です。また、返品処理のフローを事前に明確化しておくことで、トラブル時の対応がスムーズになります。
カスタマー対応とアフターサービス
ベトナム消費者は購入前の問い合わせや購入後のサポートを重視します。そのため、チャット機能やSNSメッセージを通じた迅速な対応が求められます。現地時間に合わせたサポート体制を整え、ベトナム語でのコミュニケーションが可能な担当者を配置することが望ましいです。
また、商品レビューへの返信や、顧客からのフィードバックを積極的に活用することで、信頼性を高められるでしょう。顧客満足度を向上させることがリピート購入につながり、長期的な売上拡大に寄与します。
SNSとインフルエンサーを活用したプロモーション
ベトナムではFacebookやInstagram、Zaloなどのソーシャルメディアが広く利用されており、EC事業者にとって重要な集客チャネルです。特にインフルエンサーマーケティングは効果的で、現地の人気KOL(影響力のある発信者)を起用することで短期間で認知度を高めることができます。
ライブコマースも急成長しており、リアルタイムで商品を紹介しながら販売できるため、視聴者の購買意欲を直接刺激できます。プロモーション施策としては、プラットフォーム内のセールイベントへの参加や、クーポン配布、送料無料キャンペーンなどが有効です。
法規制と商習慣への対応
ベトナムでEC事業を展開するには、現地の法規制や商習慣を理解し、適切に対応する必要があります。ここでは法的要件や税務、消費者保護について解説します。
事業形態と法的要件
ベトナムでEC事業を行う場合、現地法人を設立する方法と、越境ECとして日本から直接販売する方法があります。現地法人を設立すれば、現地での信頼性が高まり、各種プラットフォームへの出店も容易です。一方、越境ECは初期投資を抑えられますが、配送コストや関税が発生します。
ベトナム政府はEC事業者に対して、事業登録や税務申告を義務付けています。法人設立や税務手続きには現地の専門家や代理店のサポートを受けることが必要です。また、消費者保護法に基づき、商品情報の正確な表示や返品ポリシーの明示が求められます。
関税と税務の取り扱い
越境ECで商品を輸入する場合、関税や輸入税が課されます。商品カテゴリーによって税率が異なるため、事前に確認が必要です。また、ベトナムではVATが一般的に10%課税されます。税務申告は定期的に行う必要があり、現地の会計事務所と連携することで適切な対応が可能です。
輸入規制や禁止品目も確認しておくべきです。食品や化粧品、医薬品などは特別な許可が必要な場合があります。これらの規制を遵守しないと、通関で問題が発生し、配送遅延や商品没収のリスクがあります。
データ保護とプライバシー規制
ベトナムでは個人情報保護に関する法律が整備されつつあり、顧客データの取り扱いには注意が必要です。顧客の同意なく個人情報を第三者に提供することは禁止されており、データの安全な管理が求められます。プライバシーポリシーを明示し、顧客の信頼を得ることが重要です。
また、サイバーセキュリティ法により、データの保管場所や取り扱い方法に制限が設けられる場合があります。現地の法規制に精通した法律事務所と連携し、コンプライアンスを確保できる体制を構築しましょう。
ベトナムのビジネスには展示会出展が効果的
ベトナムでは、展示会への出展が企業のマーケティング戦略において極めて重要です。現地で開催される展示会は、自社の商品・サービスを認知してもらう最適な機会であり、特にB2B企業にとって欠かせない施策の一つとされています。開催数も年々増加しており、幅広い業種で行われる展示会は、効果的な販促チャネルとして注目されています。
展示会はテストマーケティングの場としても活用でき、現地顧客の反応を直接確かめることができます。さらに、単なる商品PRにとどまらず業界関係者とのネットワークづくりにも活用できるため、新規参入企業が現地での認知度を高め人脈を広げる上でも有効です。
このような対面での商談や交流を通じて有望な新規顧客の獲得やパートナー企業の発掘にもつながるため、展示会出展はベトナムにおけるB2Bビジネスで欠かせない施策となっています。
まとめ
ベトナムのEC市場は急成長を続けており、日本企業にとって大きなビジネスチャンスがあります。本記事では、市場の全体像から主要プラットフォームの比較、具体的な参入手順、現地運用のポイント、法規制への対応まで幅広く解説しました。
- ベトナムEC市場は2018年から2022年で約5倍に成長し、今後も拡大が期待される
- Shopeeは低価格帯・大量販売に強く、TikTok Shopは若年層・動画訴求に優れる
- 参入には市場調査、出店登録、運用体制の構築が必要で、現地言語・文化への対応が不可欠
- 電子決済や物流インフラの整備、カスタマー対応が顧客満足度とリピート購入につながる
- 法規制や税務、データ保護への適切な対応がリスク回避に重要
- 展示会出展は現地認知度向上とネットワーク構築に効果的
ベトナムEC市場への参入を成功させるには、現地の商習慣や消費者行動を理解し、適切なプラットフォームと運用体制を選定することが重要です。まずは自社の商品特性とターゲット層を明確にし、市場調査から始めてみましょう。
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