ベトナムへの進出を検討する際、多くの企業が首都ハノイやホーチミンといった大都市を真っ先に思い浮かべるかもしれません。しかし、近年注目されているのは、大都市郊外で急速に経済発展を遂げる新興工業地帯です。
中でも勢いがあるのが、ハノイ近郊の工業都市「バクザン省」。
日本ではまだ知名度が低いものの、2024年上半期には国内で地域経済成長率(GRDP)1位となる14%を記録するなど、驚異的な成長を遂げています。
本記事では、バクザン省の経済発展の背景を解説するとともに、今年初めて現地で実施予定の展示会情報もご紹介します。ベトナムで進出先を検討している方は、ぜひ本記事を通じてバクザン省の魅力を知るきっかけにしてください。
経済成長の背景
早速ですが、バクザン省が経済的に急成長を遂げている理由はどこにあるのでしょうか。
その背景を4つの視点から解説します。
① 地理的優位性と交通インフラの充実
バクザン省は首都ハノイから50キロ、ノイバイ国際空港までは45キロ、主要港湾のハイフォンから110キロ、中国国境から120キロと、国内外の主要地へアクセスしやすい立地にあります。
また、交通インフラの整備も進んでいます。特に道路インフラは進んでおり、ハノイと繋がる南北高速道路*1(東区間/CT.01)や、国道17号線(バクザン省-バクニン省クエボ工業団地*2を繋ぐ)や国道37号(バクザン省からタイグエン省*3を繋ぐ)など周辺の主要都市を結ぶ国道があります。
さらに、輸送手段として河川(カウ川、トゥオン川、ルックナム川)や鉄道(バクザン省にはケップ駅があり、ケップ-ハロン鉄道では有名な観光地ハロン湾や多くの港があるクアンニン省に繋がり、ハノイ-ランソン鉄道はケップ駅を通過してフーギー中国国境ゲートに繋がる)もあることから、人の移動、原材料調達や製品輸送が効率的に行いやすい環境があります。
② 工業団地の戦略的な拡大
こうした地理的優位性を生かし、地方行政が主導となって工業団地を戦略的に拡充しており、既存の事業拡大、新規事業の受け入れを可能とする環境を整えています。
既にバクザン省には9つの工業団地があり、その総面積は2,200ヘクタール以上に及びます。主要な工業団地として、Van Trung工業団地、Quang Chau工業団地、Dinh Tram工業団地が挙げられます。更に、2030年までに工業団地を27に増やし、面積を9,000ヘクタールに拡大する計画が進行中です。
これらの工業団地は、主にViet Yen郡に集中していますが、将来的には、Yen Dung郡、Hiep Hoa郡、Lang Giang郡などの地域に広がる見込みです。特に、ハノイに繋がる国道1A号線沿いに隣接させるように建設していることから、効率的な物流網、サプライチェーンを想定して戦略的に進められていることも伺えます。
工業団地内の電力、水道(廃水処理システム)、通信など、必要なインフラの整備が進んでおり、外資系企業にとって進出先の重要な判断基準を満たす環境が整っています。
③ 行政の積極的な取り組み
バクザン省がいかに国内外の企業にとって投資や進出しやすい環境になりつつあるのか。分かりやすい指標にPCI(Provincial Competitiveness Index/市競争力指数)があります。これは、ベトナム各省・市の経済運営能力やビジネス環境を評価する指標です。*4
2021年では31位だったのが、2022年には2位、2023年のPCIでは4位と近は上位を維持しています。地方行政が積極的にビジネス環境の改善を進めており、例えば2020年には投資家や企業からトラブル等をヒアリングする専用窓口を設けるなど、企業や人々と対話することを重視しているところが特徴的です。
国内外の企業にとって新規事業をスピーディーに始めやすく、安心して継続できる環境があることが、着実に現地の経済成長に繋がっていることが分かります。
④ 豊富な労働力と教育環境
最後に、バクザン省は人口約200万人のうち、生産年齢人口(15歳から64歳)が110万人と若くて豊富な労働力があります。現在、省内では7600社以上の企業が活動し、約30万6000人が雇用されていますが、そのうち地元の労働者が約80%を占めるほど、省内で雇用がしやすい環境にあります。
また、教育についても行政は取り組みを強化しています。同省には現在、大学1校、短大5校、中等学校6校、職業訓練センター25校があり、バクザン省内の労働者の育成を図っています。
外資系企業の進出状況
このように、バクザン省は特に製造業にとって魅力的な環境が整っていることで、急速な経済成長が可能となりました。そして、すでに多くの外資系大手企業が進出していることも、経済成長を後押ししています。
特に象徴的なのが、AppleのサプライヤーであるFoxconnの進出です。Foxconnは2007年にベトナムで事業を開始し、2023年には3億米ドルの追加投資を発表しました。さらに、2024年には年内に2万人以上の雇用を予定しており、地域の経済と雇用に大きな影響を与えています。
日系企業もこの地域でのプレゼンスを強化しています。少なくとも20社が進出しており、主に電子部品、機械部品、ソーラーパネルの分野が製造拠点としています。例えばQuang Chau工業団地には、Nichirinベトナム(自動車・オートバイのパイプ等の生産・組み立て)やホシデンベトナム(電子部品生産)が製造拠点を構えています。
また、2023年にはイオンモールベトナムがバクザン省でのショッピングモール開発計画を発表しました。この件を含め、日系企業による投資プロジェクトは27件展開されており、同省の経済基盤の一翼を担っています。
今後の展望
バクザン省は海外投資家から注目を集め始めており、2024年上半期では外国直接投資(FDI)受け入れ額はベトナム国内で9位にランクインしています。20件以上のFDIプロジェクトが継続的に動いており、急速に開発が進んでいることが分かります。
但し、バクザン省はFDIを経済成長の重要な財源と捉えている一方で、FDIのプロジェクトは加工・組み立て中心で、製造や農業の分野が少ないことを今後の課題だと捉えているようです。特にライチ生産をはじめとした農業が盛んなバクザン省では、FDIによるハイテク技術の受け入れにより現地企業が発展することを目指しています。
今後はベトナムを牽引する成長を図るため、ハイテク産業や半導体、電子部品といった分野への誘致、優遇が積極的に進められる見込みです。
展示会の紹介
上記より、バクザン省には海外企業が進出しやすい環境があり、国内外から投資が集まっていることはご理解いただけたかと思います。
では、この地を進出先候補、サプライヤーを探しの拠点としたいと考えた場合、どのようなアクションを取るべきでしょうか?
その一つの手段として、VIMF(Vietnam Industrial Manufacturing Fair/2025年4月16~18日開催)への参加・出展をご紹介します。この展示会は「工業団地周辺での開催」をコンセプトとした国内最大級の産業展示会であり、これまでに有名工業都市で19回の開催実績があります。
今年度は3拠点での開催が予定されており、その中にバクザン省が新たに選ばれました。
主催者(OMG EVENTS MANAGEMENT COMPANY LIMITED)は、各地域の特性を生かしたビジネスマッチングを目的に開催地を選定しています。その中でも急速に発展し、多くの外資系企業が注目するバクザン省が新たな開催地として選ばれたことは、この地域のポテンシャルを示していると言えるでしょう。
弊社は日系企業向けの展示会出展サポートを専門に行う代理店として、OMGと契約しています。昨年ベトナムに進出して以来、首都ハノイやホーチミンを拠点としながらも、工業団地に足を運び、現地パートナーと直接会うことを重視している企業が多いと実感しました。VIMFに参加すれば、普段アポイントが取りにくいローカル企業や、個別訪問が必要なパートナー候補と一挙に出会い、効率的にビジネスチャンスを広げることができます。
今回の展示会は、最近建設されたばかりの新しいスポーツセンターで開催予定です。工業団地に近い立地で、バクザン省の成長を体感しながら現地企業との新たな接点を得られる機会として、ぜひ参加をご検討ください。弊社では、展示会への出展や参加に関心をお持ちの企業様を全面的にサポートしております。お気軽にお問い合わせください。
展示会の詳細:https://asean.bigbeat.co.jp/blog/asean-exhibition-vimf/
まとめ
首都ハノイ郊外のバクザン省は、まだ知られざる製造拠点として、今後の成長が大いに期待されています。地方政府主導の工業団地開発や、交通インフラ・行政制度の整備により、ビジネス環境は急速に改善中です。すでに多くの外資系企業が進出しているものの、日系企業のプレゼンスはまだ限定的であり、未開拓のポテンシャルが広がっています。展示会や現地視察を通じて、早めの情報収集を進め、この新興エリアの可能性を探ってみてください。
*1 北はランソン省[中国国境]から南はカマウ省まで続く、全長約2,000キロの高速道路建設の国家プロジェクト。国道1A号線と並行して走る。まだ一部建設中だが、ハノイから北へバクザン省、そしてランソン省までは開通済み。
*2 クエボ工業団地:バクザン省に隣接するバクニン省で最大の工業団地。CanonやNippon Steel等日系企業の工場も入っている。
*3 タイグエン省:工業団地が6つあり、大手ではサムスン電子工場も進出している。バクザン省と同様にFDIを誘致し他国から投資を受けている地域。
*4 ベトナムで事業展開している内資企業と外資企業に対するアンケート調査に基づき、参入コスト、土地利用、透明性、非公式手数料、手続きの速さ、政策の公平性、地方政府の積極性、事業支援、人材育成、法整備の10項目について、それぞれ10点満点(計100点満点)で63省・市を評価するもの。ベトナム商工連盟(VCCI)と米国国際開発庁(USAID)がレポートを発行している。調査は、各省・市の投資誘致政策やビジネス環境改善などへの活用を目的に実施される(JETROより)。
2023年では、ベトナム国内の外資系含む企業10,676社への調査を実施。
1位は北部クアンニン省、2位南部ロンアン省、3位北部ハイフォン市。
引用
・導入
・日系企業がビンズン省を選ぶ理由①:1、2、3、4
・日系企業がビンズン省を選ぶ理由②:1
・日系企業がビンズン省を選ぶ理由③:1、2
・日系企業がビンズン省を選ぶ理由④:1、2
・外資系企業の進出状況:1、2、3、4、5、6
・今後の展望:1