Home 9 タイ現地情報 9 タイ製造業の現状と今後の見通し|日系企業が今から備えるべき対策
ベトナム 繊維産業

タイはASEAN最大の自動車生産国「東洋のデトロイト」として知られ、製造業がGDPの約27%を占める東南アジア有数のものづくり大国です。近年はEVシフトや中国メーカーの台頭で生産が落ち込む一方、データセンターなど新たな投資のうねりも生まれました。

日系企業は6,000社以上が進出し、現地経済を支えてきましたが、競争激化や人件費上昇、人手不足といった課題も顕在化しています。本記事ではタイ製造業の現状と見通し、日系企業が備えるべき対策を解説します。

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この記事でわかること

  • タイ製造業の現状と直近の生産・投資データ
  • EVシフトや中国企業の進出、グリーン製造への転換などの がもたらす構造変化
  • 政府の産業政策を踏まえた今後の見通しとリスク
  • 日系企業が今から取り組むべき具体的な対策

タイ製造業の現状

はじめに、タイ製造業の全体像をデータで確認しましょう。

製造業がGDPの約27%を占める「東洋のデトロイト」

タイの製造業はGDPの約27%を占める基幹産業です。自動車産業はASEAN最大の規模を誇り、2013年には年間約245万台を生産しましたが、2024年は約147万台まで減少しました。ただ、2026年上半期の国内販売は前年同期比14.6%増と持ち直し、生産も71万7,212台と下げ止まりました。タイ工業連盟(FTI)は2026年通年の見通しを145万台と発表しました。

  • 実質GDP成長率は2023年2.0%、2024年2.5%
  • 2024年の製造業成長率はマイナス0.5%と2年連続のマイナス
  • 2024年の自動車販売台数は約57.3万台と2009年以来の低水準

6,000社超の日系企業が集積する産業基盤

タイには2025年2月時点で6,083社の日系企業が進出しています。産業は自動車と電機電子を中心に、化学や食品加工、鉄鋼など幅広い分野に広がります。自動車では完成車メーカーの周辺に部品メーカーが集積する産業クラスターが形成され、ハードディスクドライブなど電子部品の生産拠点としても世界有数です。

タイ製造業を取り巻く4 3つの構造変化

タイ製造業の潮目を変えているのは、電動化、人口動態の変化、デジタル投資の拡大、グリーン製造への転換という4つという3つの構造変化です。

EVシフトと中国メーカーの進出

中国のEVメーカーは相次いでタイに生産拠点を設立し、BYDは2024年7月にラヨーン県で年産15万台の工場を稼働させました。これに対し日系各社は生産体制の見直しを迫られ、スズキの四輪生産撤退、スバルの生産終了、ホンダの工場統合、日産の人員削減と再編が続いています。JETROの調査では、製造業の45.1%がタイ国内の中国企業を、47.0%が中国製品の輸入を脅威とみなしました。

競争相手であるだけでなく、サプライヤーとしての存在感も増しています。JETROの2025年度調査では、ASEAN製造業で中国企業を最も競争力のある競合と見る企業の割合がタイでは40.1%と、ASEANの中でも高い水準です。日系企業のネットワークに加えて、中国系を中心とした新しいサプライチェーンが急速に形成されつつあります。

高齢化・人手不足と賃金の上昇

タイは2022年に高齢化社会入りを果たし、2030年代には超高齢社会になると予測されています。人手不足が深刻化するなか、最低賃金も2025年1月から従業員200人以上の事業所を対象に日額400バーツへ引き上げられました。世界銀行は2022年から2030年にかけてタイの潜在成長率が約2.7%へ低下すると試算し、生産性の向上が課題です。

一方で、人手不足は日本のものづくり企業にとって市場機会でもあります。工場の自動化や省人化、製造DXへのニーズが高まっており、FA機器やロボット、生産管理システムを手がける日本企業の技術が生かせる分野です。

データセンターや電子部品など新たな投資のうねり

一方で、新しい投資の流れも生まれています。2024年のSカーブ産業への投資申請額は7,867億バーツと前年比26.0%増加し、デジタル分野は約25.6倍に急拡大しました。GoogleやAWS、Microsoftがデータセンター建設を相次いで発表し、EEC(東部経済回廊)は13,000MW超の電力容量を背景に、東南アジアの統合工業地域ランキングで1位です。

  • EVシフトと中国メーカーの進出による競争環境の激化
  • 高齢化と人手不足に伴う賃金上昇と生産性向上の必要性
  • データセンターやAI関連を軸としたデジタル投資の急拡大

データセンター投資は単独では完結しません。BOIはデータセンターと電子製造関連で669億バーツ規模の投資を承認しており、AIサーバー、PCB(プリント基板)、パワーエレクトロニクス、冷却設備、電気機器、工場の自動化設備まで製造業の連鎖が生まれています。電力設備や電子部品、サーバー関連機器など、周辺のBtoB需要も同時に拡大します。

グリーン製造への転換が進む

4つ目は、グリーン製造への転換です。世界銀行の報告(2026年2月)によると、タイの製造業はGDPの25%、雇用の16%を支え、EV、太陽光発電機器、省エネ冷却機器などのグリーン製品が輸出の約10%を占めるまでに成長しました。「安い労働力を使う生産拠点」から「高付加価値・低炭素型の製造拠点」へと姿を変えつつあり、再生可能エネルギーやエネルギー管理など環境関連分野の裾野も広がっています。

タイ製造業の今後の見通し

政府の産業政策と経済環境の両面から、今後を展望します。

政府が描く次世代産業の成長戦略

タイ政府は「タイランド4.0」を掲げ、次世代自動車やスマートエレクトロニクスなど新Sカーブ産業への投資を促進しています。EV分野では2030年までに国内生産の30%をEVにする目標(30@30政策)を掲げ、補助金や税制優遇で後押ししました。BCG経済モデルのもとでバイオ・循環型・グリーン経済の育成も進み、半導体産業の誘致も重点施策です。

  • 次世代自動車は2030年までに生産の30%をEVへ
  • スマートエレクトロニクスは半導体と電子部品の投資を誘致
  • デジタルはデータセンター投資で東南アジアのハブを目指す

半導体分野では2026年1月、政府が半導体・先端エレクトロニクス戦略の方向性を示し、パワー半導体、センサー、フォトニクス(光技術)、アナログ半導体、ディスクリート半導体の5分野を注力領域に挙げました。これらは自動車、再生可能エネルギー、データセンター、AI、産業オートメーションと直接つながります。日本企業にとっては、半導体、PCB、EMS(電子機器の受託製造)、センサー、電子部品、AI関連機器などのサプライチェーンがタイで形成されつつある点が商機になります。

2026年以降の成長シナリオとリスク要因

足元のタイ経済は、観光の回復や電子部品・機械関連の輸出好調に支えられ、緩やかな回復基調にあります。金融政策も2025年5月までに政策金利を1.75%へ引き下げました。一方で米国との通商協議の行方や世界経済の減速は下振れリスクです。中長期的には次世代自動車と半導体・電子部品という2つの軸で産業が形づくられ、自動車依存からの多角化が成長のカギを握ります。

日系企業が今から備えるべき対策

こうした変化を踏まえ、日系企業が取るべき対策は次の4つです。

既存事業の収益基盤を立て直す

まずは既存事業の収益構造の見直しです。原材料価格や人件費の上昇を価格へ転嫁するとともに、現地調達の拡大や工程の自動化によってコストを削減する必要があります。加えて中国以外の生産拠点を求める動き(チャイナプラスワン)の受け皿の役割を生かすことも有効です。2025年の日本の対タイBOI認可投資額は671.6億バーツと前年を上回りました。

成長領域へ事業ポートフォリオを転換する

次に、EV関連部品や半導体・データセンター関連など成長領域への事業転換です。エンジン部品など従来型部品に依存する企業ほど、モーターやバッテリー関連など電動化対応の開発が急務です。ニデックがAIサーバー用水冷モジュールを月産200台から2,000台へ拡大した事例は、好例といえます。補助金や税制優遇の活用も検討しましょう。

加えて、取引先を既存の日系ネットワークに限定しない視点も重要です。中国系・タイ系・欧米系を含む新しいサプライチェーンにどう入り込むかという発想が、タイで形成されつつあるエレクトロニクスやEVのエコシステム参入の鍵になります。

人材の確保・育成と現地化を進める

人手不足が深刻化するタイでは、人材の確保と育成が事業継続の鍵を握ります。賃金水準の見直しやキャリアパスの提示など働きやすい環境づくりが欠かせません。品質管理のノウハウを現地社員へ移転し、現地人材の登用を進めることも重要です。駐在員に依存しない経営への移行が、人件費上昇への対応と競争力強化を両立させます。

展示会を活用して商機とパートナーを発掘する

変化の速いタイ市場で商機をつかむには、現地の展示会や見本市の活用が効果的です。バンコクではメタレックスやマニュファクチャリングエキスポなど製造業向けの大型展示会が毎年開催されています。出展を通じて新規顧客の開拓やパートナーの発掘ができるほか、競合の動向や市場ニーズも収集できます。対面商談はオンラインでは得にくい現地の反応を確かめる機会です。

  • 対面商談による新規顧客の獲得
  • 代理店や現地パートナー企業の発掘
  • 競合製品や市場トレンドの情報収集

よくある質問

Q. タイの製造業で今後伸びる分野はどこですか?

A. 次世代自動車関連(EV・バッテリー部品)、半導体・電子部品、データセンター関連機器などが有力です。タイ政府もこれらの分野を新Sカーブ産業として投資優遇の対象としています。

Q. 日系企業がタイで直面しやすい課題は何ですか?

A. 競争の激化、原材料価格や人件費の上昇、人手不足などが代表例です。JETROの調査でも、原材料価格の上昇や他社との競争激化が投資上の問題点の上位に挙がっています。価格転嫁や自動化、人材育成を組み合わせることが重要です。

まとめ

タイ製造業は、EVシフトと中国勢の台頭、高齢化と人手不足、デジタル投資の拡大、グリーン製造への転換という構造変化の渦中にあります。自動車の生産と販売は苦境が続く一方、2026年に入り国内販売が持ち直すなど回復の兆しも見え始めました。

日系企業にとっては、収益基盤の見直し、成長領域への転換、人材の確保と育成、展示会を活用した商機の発掘という4つの対策が分かれ目になります。変化を素早く事業に反映できる企業が、次の成長をつかむでしょう。

株式会社ビッグビートは、海外展示会出展のサポートをしています。特に、タイに現地法人を有しており、出展企画の立案から展示ブースの設営、コンパニオンをはじめとする運営スタッフの手配や管理に至るまで、日本の高い品質基準を維持したまま、現地からの迅速なサポートを提供することが可能です。

この記事のまとめ

  • ✓タイ製造業はGDPの約27%を占める基幹産業で、EVシフトやデジタル投資など構造変化の渦中にある
  • ✓日系企業の次の一手は、収益基盤の見直し・成長領域への転換・人材確保・展示会活用の4つ
  • ✓まずは現地の最新動向を把握するため、お問い合わせや資料請求から始めましょう

著者:ビッグビート ASEAN推進編集部

ベトナム・タイを中心としたASEAN圏に進出、あるいはこれから進出を計画している事業会社に対し、現地でのBtoBマーケティング領域を総合的に支援する広告会社です。ASEAN圏現地での実務経験や企業支援の実績を基に、現地に根差した信頼性の高い情報発信を行っています。