Home 9 ビジネスコラム 9 ベトナムの主要医療機器メーカー一覧|市場動向と参入時の注意点とは?
ベトナム 繊維産業

経済成長と高齢化が同時に進むベトナムで、医療機器の需要が伸び続けています。市場規模は2023年末時点で16億7,000万米ドルと推計され、年8%前後のペースで拡大してきました。

一方、供給の約9割は輸入に頼っているのが実情です。国内で生産する企業の顔ぶれも、日系を中心とする外資系と、近年力をつけてきた地場企業で性格が異なります。この記事では、ベトナムの主要な医療機器メーカーを一覧で整理し、市場動向と規制、参入時の注意点を解説します。

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この記事でわかること

  • ベトナム医療機器市場の規模と、輸入に依存する産業構造
  • 売上上位を占める外資系メーカーと、伸びてきた地場メーカーの顔ぶれ
  • A〜Dのクラス分類を軸とした登録制度と現地代理人の要件
  • 参入前に押さえるべき注意点と、市場開拓の具体的な進め方

ベトナム医療機器市場の全体像

まずは、ベトナムの医療機器メーカーが置かれている市場環境を数字で押さえておきましょう。

市場規模は約16.7億ドル、年8%前後で拡大

ベトナムの医療機器市場は2023年末時点で16億7,000万米ドル規模と推計され、アジア太平洋地域で8番目の大きさにあたります。年平均成長率は約8%で推移しており、2026年から2027年末には21億米ドル前後に達するとの予測も示されました。

押し上げているのは高齢化です。65歳以上の人口は2014年の950万人から2024年に1,420万人へ増え、1人当たりの医療支出も2020年の153ドルから2022年に189ドルへ約25%伸びました。

供給の約9割を輸入に依存する構造

市場を語るうえで欠かせないのが、輸入依存の高さです。国内で供給される医療機器のうち国産でまかなえているのは1割程度にとどまり、残りの約9割は輸入品が占めます。

2023年の医療関連製品の輸入総額は64億米ドルで、輸入元は中国が32.1%と最も多く、韓国10.3%、日本7.8%、ドイツ6.5%、米国5.8%と続きます。日本製は中央レベルの公立病院や専門病院で広く使われ、品質面で高い評価を得ています。

項目 数値 時点
市場規模 16億7,000万米ドル 2023年末
将来予測 約21億米ドル 2026〜2027年末
輸入依存度 総供給の約90% 近年
医療関連製品の輸入総額 64億米ドル 2023年

ベトナムの主要医療機器メーカー一覧

ここからは、実際にベトナム国内で生産している主要な医療機器メーカーを見ていきます。

売上上位を占める外資系メーカー

ベトナムの医療機器メーカーを売上規模で並べると、上位はほぼ外資系で占められます。業界データベースの集計(対象588社・2023年)では、外資系だけで13億米ドル以上を計上しました。なかでも日系の存在感は際立ち、上位10社のうち8社を日系が占めています。

企業名 主な製品 主な拠点
Terumo BCT Vietnam/Terumo Vietnam(日本) 血液・細胞治療機器、血管内治療デバイス ドンナイ省、ハノイ市
Hoya Lens Vietnam(日本) 眼鏡レンズ、眼内レンズなど医療光学製品 ビンズオン省
Omron Healthcare Manufacturing(日本) 血圧計、体温計、呼吸療法機器 ビンズオン省
Mani Hanoi/Asahi Intecc Hanoi(日本) 精密外科用刃物、縫合針、血管内治療デバイス タイグエン省、ハノイ市
B.Braun Vietnam(ドイツ系) 輸液製剤、透析液、医療機器、消毒薬 ハノイ市
Perfect Medical Industry Vietnam(台湾) 透析チューブ、輸血セットなど ホーチミン市

存在感を高めるベトナム地場のメーカー

地場のベトナム医療機器メーカーは中小・零細が中心で、対象588社のうち約9割がこの規模です。研究開発の余力が限られ原材料の輸入関税も重いため、価格と技術の両面で外資に対抗するのは容易ではありません。

それでも、特定分野で技術力を確立した企業が現れました。代表格が冠動脈ステントのUSMヘルスケアで、ステント分野ではベトナム唯一の国産メーカーとされています。

企業名 主な製品 拠点
USM Healthcare 冠動脈ステント、バルーンカテーテル ホーチミン市サイゴンハイテクパーク
MEDEP 眼内レンズ、抗菌コーティング外科縫合糸 ホーチミン市サイゴンハイテクパーク
Armephaco 血糖値計、血圧計、診察台、医療用ベッド ハノイ市ロンビエン区
CPT Sutures 外科用縫合糸、外科用針、医療消耗品 ホーチミン市
DANAMECO 医療用消耗品、医療材料 ダナン市

生産拠点はビンズオン省とハノイ周辺に集中

立地にははっきりした偏りがあります。2023年の業界売上はビンズオン省が4億6,600万ドルで31%と首位、ハノイが28%、ドンナイ省が20%と続き、南東部と紅河デルタの2地域だけで業界売上の91%以上が生み出されています。

南部の中心となるビンズオン省はホーチミン市から車で1時間ほどで、日系企業が集まる工業団地が広がります。北部ではハノイ近郊のバクニン省やバクザン省にも製造業の集積が進み、部材調達や外注先を探す際の候補になります。

ベトナム医療機器市場の最新動向

市場の構造が固まりつつあるなかで、2026年に入って注目すべき動きが出てきました。

日系企業による地場メーカーの買収が進む

象徴的なのが、NISSHAによるUSMヘルスケアの買収です。同社は2026年5月20日付で株式取得を完了し、子会社化しました。買収額は50億円超と報じられています(日本経済新聞)。

これによりNISSHAは、東南アジアにおける医療機器の開発製造受託(CDMO)の拠点を確保しました。ゼロから工場を建てるのではなく、承認実績を持つ地場メーカーを取り込む参入手法として参考になります。

調達制度と価格の透明化が進む

制度面も動いています。ホーチミン市は2024年、レミンスアン2工業団地に338ヘクタール規模の医薬品・医療機器の専門産業クラスターを設ける計画を決定しました。2031年の稼働開始が予定されています。

調達のルールも変わりつつあります。保健省は汎用品を国レベルで一括調達する制度を検討中で、2025年の草案では眼内レンズや冠動脈ステントなど20種類が対象に挙げられました。2026年8月には申告価格を上回る価格で販売されている事例の徹底調査を求める通知も出ています。

  • 地場メーカーの買収が、承認済み製品と製造基盤をまとめて獲得する手段になっている
  • 専門産業クラスターの整備により、現地生産の受け皿が広がる見通し
  • 一括調達と価格監督の強化で、公立病院向けの取引ルールが標準化に向かう

ベトナムの医療機器規制と登録制度

ベトナムで医療機器を販売するには、製品ごとの登録が欠かせません。制度の骨格を整理します。

リスクに応じたA〜Dの4クラス分類

ベトナムの医療機器規制は、2022年1月1日に施行された政令98/2021/ND-CPが土台で、政令07/2023/ND-CPと政令04/2025/ND-CPで改正が加えられてきました。製品は人体に与えるリスクの大きさに応じて、クラスA・B・C・Dの4段階に分類されます。

判断基準は通達05/2022/TT-BYTが定める16の分類ルールで、ASEAN医療機器指令(AMDD)に準拠しています。分類は登録側の自己分類方式をとり、結果は保健省のポータルに記録され、通関時に税関が照合します。

クラス別の登録ルートと必要書類

手続きの窓口はクラスによって分かれます。リスクの低いAとBは各省の保健局に適合宣言を提出して流通番号を取得し、CとDは保健省の医療機器局(IMDA)が販売承認証を発給します。クラスCとDは2024年1月から、ASEAN共通申請様式(CSDT)での申請が必須になりました。

共通して求められるのは、製造施設のISO 13485認証と輸出国の自由販売証明書(CFS)です。米国FDAや日本のPMDAなど参照国での承認実績があれば審査が短縮され、取得した流通番号に有効期限はありません。

区分 リスク 申請先 手続き
クラスA 低い 省・市の保健局 適合宣言の提出で流通番号を取得
クラスB 低〜中 省・市の保健局 適合宣言の提出で流通番号を取得
クラスC 中〜高 保健省 医療機器局(IMDA) 販売承認登録、ASEAN共通様式が必須
クラスD 高い 保健省 医療機器局(IMDA) 販売承認登録、ASEAN共通様式が必須

中古医療機器の輸入は認められない

見落とされやすいのが中古品の扱いです。ベトナムでは中古の医療機器に保健省が輸入許可を発給せず、実質的に輸入できません。デモ機や貸出機の持ち込みを計画している場合は、事前に取り扱いを確認しておきましょう。

書類面の実務も変わります。ハーグ・アポスティーユ条約が2026年9月11日にベトナムで発効するため、加盟国発行の証明書は領事認証に代えてアポスティーユを利用できるようになります。

ベトナム医療機器市場への参入時の注意点

最後に、日本企業がベトナムの医療機器市場へ参入する際の実務上の注意点を整理します。

現地の登録保有者を確保することが前提

まず理解しておきたいのが、外国のメーカーは流通番号を自社名義で直接保有できないという原則です。登録保有者になれるのは、機器を所有するベトナム企業、外国の所有者から認可されたベトナム企業、外国商人のベトナム常駐代表事務所のいずれかに限られます。

つまり、現地法人を設けるか代理店を指名するかが最初の分岐点です。代理店に委ねる場合は登録名義が相手側に残るため、契約解消時の販売権の扱いを事前に取り決めておきましょう。

登録と調達のリードタイムを織り込む

時間の見積もりも重要です。製品登録は書類が整うまでに時間を要し、案件によっては有効な承認の取得までに2〜3年かかる場合があると指摘されています。2024年には申請1万1,300件のうち約3,000件が未処理という状況も報告されました。

販売先が公立病院なら入札スケジュールという制約も加わります。登録の完了から入札への参加、初回納入までを一本の線でつないだ計画を立てておきましょう。

展示会でパートナーと需要を見極める

代理店候補の発掘と現地需要の把握を同時に進める手段として有効なのが、展示会の活用です。ホーチミン市の医療・製薬の国際展示会「Vietnam Medi-Pharm Expo」は、2025年に300社・350ブースが出展し、8,500名が来場しました。

来場者の6割が輸入商や卸で、病院・クリニックが12%を占める構成は、代理店探しと臨床ニーズの確認を一度に進められることを意味します。製造委託先や設備を探すなら、専門展を組み合わせるのも有効でしょう。

  • 現地法人を設けるか代理店を登録保有者にするかを、初期段階で決める
  • 登録の完了までに年単位の時間がかかる前提で、事業計画を組み立てる
  • 公立病院向けは入札と価格申告のルールを確認したうえで臨む
  • 中古機器は輸入できないため、デモ機の持ち込み方法を事前に整理する

ベトナムのビジネスには展示会出展が効果的

ベトナムでは、展示会への出展が企業のマーケティング戦略において極めて重要です。現地で開催される展示会は、自社の商品・サービスを認知してもらう最適な機会であり、特にB2B企業にとって欠かせない施策の一つとされています。開催数も年々増加しており、幅広い業種で行われる展示会は、効果的な販促チャネルとして注目されています。

展示会はテストマーケティングの場としても活用でき、現地顧客の反応を直接確かめることができます。さらに、単なる商品PRにとどまらず業界関係者とのネットワークづくりにも活用できるため、新規参入企業が現地での認知度を高め人脈を広げる上でも有効です。

このような対面での商談や交流を通じて有望な新規顧客の獲得やパートナー企業の発掘にもつながるため、展示会出展はベトナムにおけるB2Bビジネスで欠かせない施策となっています。

  • CLEANFACT Vietnam(ハノイ市)クリーンルーム技術や環境設備の専門展
  • VIMF(ハイフォン市・ビンズオン省・バクニン省)工業都市をリレー方式で巡る製造業向けの展示会
  • MTA Vietnam(ホーチミン市)精密加工や生産技術の分野で、部品の外注先探しに向く
  • VILOG(ホーチミン市)物流の専門展で、温度管理や輸送体制の検討に役立つ

よくある質問

Q. ベトナムの医療機器メーカーで規模が大きいのはどこですか?

A. 売上上位は外資系が占めます。2023年の集計では上位10社のうち8社が日系で、テルモ、HOYA、オムロン ヘルスケア、マニ、日機装などが名を連ねます。地場企業では冠動脈ステントのUSMヘルスケアが知られています。

Q. 日本の医療機器をベトナムで販売するには何が必要ですか?

A. 製品ごとにクラス分類を行い、AとBは省の保健局へ適合宣言を提出、CとDは保健省の医療機器局へ販売承認を申請します。ISO 13485認証と自由販売証明書が必要で、流通番号を保有する現地の登録保有者の指名も欠かせません。

Q. ベトナムの医療機器市場に参入するなら、どこから始めるべきですか?

A. 自社製品のクラス分類を確認し、登録に要する期間を見積もることが出発点です。並行して展示会などで代理店候補と接触し、現地の臨床ニーズや競合の価格帯を確かめておくと、参入方式を判断しやすくなります。

まとめ

ベトナムの医療機器市場は、高齢化と医療支出の伸びを追い風に年8%前後のペースで拡大してきました。一方で供給の約9割を輸入に頼る構造は変わらず、国内で生産する医療機器メーカーの上位は外資系、とりわけ日系企業が占めています。

近年はステント分野のUSMヘルスケアのように技術力を備えた地場メーカーが現れ、日系企業による買収も動き始めました。政府が産業クラスターの整備を進める一方、一括調達や価格監督といったルールづくりも進行中です。

参入にあたっては、現地の登録保有者の確保、A〜Dのクラス分類に応じた登録手続き、年単位となりうるリードタイムの3点が判断の軸になります。まずは現地の展示会で代理店候補と需要を確かめるところから、一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

株式会社ビッグビートは、海外展示会出展のサポートをしています。特に、タイやベトナムに現地法人を有しており、出展企画の立案から展示ブースの設営、コンパニオンをはじめとする運営スタッフの手配や管理に至るまで、日本の高い品質基準を維持したまま、現地からの迅速なサポートを提供することが可能です。

この記事のまとめ

  • ✓ベトナムの医療機器市場は約16.7億ドル規模で、供給の約9割を輸入に依存しています
  • ✓生産の上位は日系を中心とする外資系が占め、地場メーカーも特定分野で台頭しています
  • ✓参入には現地の登録保有者の確保と、A〜Dのクラス分類に応じた登録手続きが必要です
  • ✓まずは現地展示会で代理店候補と臨床ニーズを確かめ、参入方式を見極めましょう

著者:ビッグビート ASEAN推進編集部

ベトナム・タイを中心としたASEAN圏に進出、あるいはこれから進出を計画している事業会社に対し、現地でのBtoBマーケティング領域を総合的に支援する広告会社です。ASEAN圏現地での実務経験や企業支援の実績を基に、現地に根差した信頼性の高い情報発信を行っています。