ベトナムの食品市場は、経済成長と中間層の拡大を背景に、量から質、伝統からモダン、オフラインからオンラインへと多面的な変化を続けています。2024年には輸出入額がともに過去最高を更新し、日本からの食品輸出額も862億円まで拡大しました。健康・安全志向の高まりや調理済み食品・即席麺・飲料といった成長分野の広がりは、日本企業にとって大きなビジネス機会となっています。
一方で、食品安全規制やラベル表示、輸入手続きは年々高度化しており、2026年には政令46号の公布と一時停止という大きな動きも見られました。この記事では、ベトナム食品市場の構造と成長分野、日本との貿易関係、輸入規制の枠組み、そして販路拡大やリスク管理のポイントまでを、実務目線で整理してお伝えします。
この記事でわかること
- ベトナム食品市場が成長している背景と注目される品目
- ベトナム向け食品輸出で押さえるべき規制と手続きの流れ
- 現地連携を活かした食品販路拡大の具体策
- 制度変更や模倣品などのリスク管理のポイント
ベトナムの食品市場は成長性が高い
ベトナムの食品市場は、高い経済成長と都市化を背景に拡大を続けています。まずは需要が伸びる理由、流通の特徴、注目品目を整理します。
ベトナムで食品需要が伸びている理由
ベトナムは、ASEANのなかでも高い成長率を維持する新興国です。2024年の実質経済成長率は政府目標(6.0〜6.5%)に沿った堅調な水準で推移しており、安定した経済成長が食品消費の底堅さを支えています。所得の上昇は中間層を拡大させ、食品需要を量的に押し上げるとともに、品質や安全性、利便性を重視する方向へと消費構造を変えています。
2024年にはベトナム全体の輸出入額がいずれも過去最高を更新し、安定した経済成長が食品消費の底堅さを支えています。都市部を中心に外食やデリバリー、EC経由の食品購入も広がっており、こうした動きは日本を含む海外ブランドの参入機会を大きく広げています。
ベトナムの食品流通は都市部と業務用が重要
ベトナムでは長らく個人商店や伝統的な市場が食品購入の中心でしたが、近年はスーパーやコンビニ、ショッピングモールが急増しています。特にコロナ禍を契機に、現代的な小売やECへのシフトが加速しました。2021年のFMCG小売では、伝統市場がマイナス成長だったのに対し、現代的小売はプラスへ転じています。
また、フードサービス市場は2025年に約247.7億ドルと推計され、2030年には約412.2億ドルへ拡大する見通しです。外食・中食といった業務用需要は食品輸入企業にとって重要な販路であり、都市部の消費行動を理解することが成功の鍵となります。
ベトナムの食品市場で注目される品目
カテゴリー別では、調理済み食品、即席麺、飲料の3分野が特に注目されます。以下に成長性の目安を整理しました。
| カテゴリー | 市場の特徴 | 成長の目安 |
|---|---|---|
| 調理済み食品 | 共働き世帯・単身者の増加で拡大 | 年平均11%超の成長見込み |
| 即席麺 | 年間消費80億食超・世界屈指の消費国 | プレミアム化・多様化が進行 |
| 飲料 | 健康志向・機能性飲料へシフト | 回復基調で高付加価値化 |
調理済み食品は2025年の約5.8億ドルから2035年に約16.8億ドルへ拡大する予測が示されています。即席麺市場では日本のエースコックが展開する「Hao Hao」が長年高いシェアを維持しており、日本食品が確固たる存在感を持つ分野となっています。
ベトナム向け食品輸出は規制対応が欠かせない
ベトナムへ食品を輸出するには、食品安全法や関連政令に基づく手続きが必須です。制度は頻繁に更新されるため、事前確認が欠かせません。
ベトナムの食品輸入規制は事前確認が必要
ベトナムで食品の輸入・流通に関わる事業者は、食品安全法(55/2010/QH12)と、その実施を定める政令・通達に従う必要があります。2018年施行の政令15/2018/ND-CPが長く基本枠組みとして機能してきました。
この政令では、多くの一般食品について事業者が商品情報を自己宣言する「製品自己公表」制度が採用されています。ただし、健康食品や36か月未満の乳幼児向け栄養補助食品などリスクの高いカテゴリーは、自己宣言ではなく商品宣言書の登録が必要です。輸入する商品のカテゴリーとリスクに応じて、必要な手続きを見極めることが第一歩となります。
食品安全や表示制度は最新情報の確認が重要
ベトナムの食品安全法制は2020年代半ばにかけて大きな転換点を迎えています。2024年に導入された栄養成分表示のルール(エネルギー、タンパク質、脂質、炭水化物、ナトリウムなどの表示義務)は、2025年末までの全面遵守が求められ、対応していないラベルの製品は輸入が制限される見込みです。
さらに2025年には小口輸入貨物への免税制度が廃止され、ECや国際宅配便を通じた少額貨物にも課税されるようになりました。表示制度や税制は運用の解釈が変わる可能性もあるため、取引を行う時点で、ジェトロや在ベトナム日本大使館などが提供する最新情報を必ず確認することが重要です。
ベトナムで食品通関を進める手続きの流れ
輸入食品の通関は、おおまかに次の流れで進みます。手続きの全体像を把握しておくと、必要書類の準備がスムーズになります。
- 商品カテゴリーとHSコードを確認し、自己公表か登録かを判別する
- 自己宣言書・検査結果・ラベルサンプルなど必要書類を準備する
- 所管の食品安全管理局へ提出し、公表または登録を行う
- 輸入通関時に必要な国家検査を受ける
- ラベル表示を確認のうえ国内流通へ進む
この流れは2024年時点の政令15をベースにしたものです。2026年には新政令46号が公布されるなど制度変更が続いているため、実際の通関では現地パートナーや専門機関と連携し、最新の運用に沿って進めることが大切です。
ベトナムで食品販路を広げるには現地連携が有効
ベトナム市場で食品の販路を広げるには、現地の流通事情を理解し、適切なパートナーと組むことが近道です。チャネルごとの特性を押さえましょう。
ベトナムの食品販売は卸売業者との連携が進めやすい
ベトナムの小売市場は、Saigon Co.opやBach Hoa Xanhといった国内チェーンが大きなシェアを持ち、地域の文化や消費者行動を深く理解している点が強みです。海外企業が自社商品を流通させる際には、こうしたローカルチェーンや卸売業者と連携することで、店頭への展開がスムーズになります。
現地の卸売業者は、流通網や小売との関係、通関実務のノウハウを持っており、参入初期の負担を大きく軽減してくれます。輸入から店頭までの一連の流れを任せられるパートナーを選ぶことが、安定した販売につながります。
外食向けと小売向けで食品の売り方は変わる
販路は大きく外食(業務用)向けと小売向けに分かれ、それぞれ求められる要素が異なります。ターゲットに応じて商品設計や営業手法を変えることが重要です。
| 販路 | 主な顧客 | 重視される点 |
|---|---|---|
| 外食向け | レストラン・ホテル・カフェ | 安定供給・業務用規格・価格 |
| 小売向け | スーパー・コンビニ | パッケージ・ブランド・棚割り |
| EC向け | オンライン消費者 | 訴求力・レビュー・配送対応 |
調味料やだしは日本食レストランを通じて浸透しやすく、菓子や飲料は小売やECでの露出が効果的です。それぞれのチャネル特性に合わせて、商品の見せ方と流通方法を最適化しましょう。
ベトナムの食品ビジネスは商談会や支援機関を活用しやすい
ベトナムでは、展示会や商談会を通じたマーケティングが効果的です。食品や製造、物流分野の展示会は現地バイヤーや業界関係者と直接つながる貴重な機会となります。代表的なものにVIMFやVILOG、MTA Vietnam、CLEANFACTなどがあります。
また、ジェトロなどの公的支援機関は、市場調査レポートや商談会の情報を提供しており、参入初期の情報収集に役立ちます。地域選定の際は、ハノイ近郊のバクザン省やバクニン省、南部のビンズオン省など、地域ごとの特徴を踏まえた検討が有効です。
ベトナムの食品ビジネスはリスク管理が重要
成長市場であるベトナムにも、制度変更や模倣品といったリスクが存在します。事前に把握し、対策を講じることが安定した事業運営につながります。
食品制度の変更はベトナムで混乱を招くことがある
ベトナムでは新制度の公布から運用までの期間が短く、通関現場などで混乱が生じることがあります。例えば、2018年に導入された政令15/2018/ND-CP(製品自己公表制度)の施行時や、近年のパッケージ表示ルールの変更時などにも、実務レベルでの解釈のばらつきが見られました。このように、ベトナムでは運用ルールの急な変更や厳格化が起こり得ます。
模倣品対策はベトナムの食品ブランド保護につながる
日本食品は「健康的」「安全・高品質」というイメージを持たれており、抹茶味の菓子や日本ブランドの調味料などが人気を集めています。こうした人気は、一方で模倣品やなりすまし商品のリスクを高める要因にもなります。
商標登録を現地で早期に行い、パッケージデザインやブランドを法的に保護しておくことが、模倣品対策の基本となります。正規品であることを示すマークや、信頼できる流通経路の確保も有効です。ブランド価値を守ることは、長期的な市場での存在感を維持するうえで欠かせない取り組みです。
ベトナムの食品取引は現地パートナーの見極めが大切
ベトナムの食品市場は、ローカル企業、韓国企業、タイ企業、欧米企業など多様なプレーヤーがひしめく競争環境です。参入の際は、価格競争力の確保、現地の味覚への対応、規制対応の複雑さなど、複数の課題に向き合う必要があります。
これらの課題を乗り越えるには、信頼できる現地パートナーの存在が不可欠です。流通網や規制対応のノウハウを持ち、誠実に取引を続けられる相手かどうかを、実績や取引条件を確認しながら慎重に見極めましょう。契約内容や支払い条件を明確にしておくことも、トラブル回避につながります。
ベトナムのビジネスには展示会出展が効果的
ベトナムでは、展示会への出展が企業のマーケティング戦略において極めて重要です。現地で開催される展示会は、自社の商品・サービスを認知してもらう最適な機会であり、特にB2B企業にとって欠かせない施策の一つとされています。開催数も年々増加しており、幅広い業種で行われる展示会は、効果的な販促チャネルとして注目されています。
展示会はテストマーケティングの場としても活用でき、現地顧客の反応を直接確かめることができます。さらに、単なる商品PRにとどまらず業界関係者とのネットワークづくりにも活用できるため、新規参入企業が現地での認知度を高め人脈を広げる上でも有効です。
このような対面での商談や交流を通じて有望な新規顧客の獲得やパートナー企業の発掘にもつながるため、展示会出展はベトナムにおけるB2Bビジネスで欠かせない施策となっています。
まとめ
ベトナムの食品市場は、経済成長と中間層の拡大を背景に、調理済み食品・即席麺・飲料など複数の分野で成長を続けています。都市部の小売や外食、ECといった多様なチャネルが広がり、日本食品への需要も着実に高まっています。
一方で、食品安全法や表示制度、輸入手続きは頻繁に更新され、2026年には政令46号の一時停止という混乱も生じました。安定した事業運営には、最新情報の確認、現地パートナーとの連携、模倣品対策などのリスク管理が欠かせません。
まずは展示会や支援機関を活用して市場の反応を確かめ、信頼できる現地パートナーと組みながら段階的に販路を広げていくことが、ベトナム市場での成功への近道となります。
この記事のまとめ
- ✓ベトナム食品市場は成長性が高く、調理済み食品や即席麺、飲料が注目分野
- ✓食品輸出には食品安全法や表示制度への対応と最新情報の確認が必須
- ✓卸売業者や支援機関、展示会を活用して現地と連携し販路を広げる
- ✓制度変更・模倣品・パートナー選定などのリスク管理を徹底する
株式会社ビッグビートは、海外展示会出展のサポートをしています。特に、タイやベトナムに現地法人を有しており、出展企画の立案から展示ブースの設営、コンパニオンをはじめとする運営スタッフの手配や管理に至るまで、日本の高い品質基準を維持したまま、現地からの迅速なサポートを提供することが可能です。
よくある質問
Q. ベトナムへ食品を輸出する際、まず何を確認すべきですか?
A. 輸出する商品のカテゴリーとHSコードを確認し、自己公表で足りるか、登録が必要かを判別することが第一歩です。健康食品や乳幼児向け栄養補助食品などリスクの高い品目は登録が必要になります。制度は頻繁に更新されるため、取引時点でジェトロなどの最新情報を必ず確認しましょう。
Q. ベトナムで特に成長している食品分野はどこですか?
A. 調理済み食品、即席麺、飲料の3分野が注目されています。調理済み食品は年平均11%超の成長が見込まれ、即席麺は年間消費80億食超の巨大市場です。飲料も健康志向・機能性へのシフトが進んでおり、日本の商品開発力が活かせる余地があります。
Q. ベトナム市場に参入する際、現地パートナーは必要ですか?
A. 流通網や規制対応、通関実務のノウハウを持つ現地パートナーとの連携は非常に有効です。卸売業者やローカル小売チェーンと組むことで参入初期の負担を軽減できます。実績や取引条件を確認し、信頼できる相手を慎重に見極めることが大切です。
著者:ビッグビート ASEAN推進編集部
ベトナム・タイを中心としたASEAN圏に進出、あるいはこれから進出を計画している事業会社に対し、現地でのBtoBマーケティング領域を総合的に支援する広告会社です。ASEAN圏現地での実務経験や企業支援の実績を基に、現地に根差した信頼性の高い情報発信を行っています。



